東京オペラシティの同時代音楽企画 コンポージアム2013「ハリソン・バートウィスルを迎えて」

2013年度 武満徹作曲賞本選演奏会

受賞者決定 13/5/26

On Air情報 13/5/26

2013年5月26日[日]15:00 コンサートホール

審査員:ハリソン・バートウィスル
指揮:工藤俊幸
東京フィルハーモニー交響楽団

[ファイナリスト](演奏順)
小林純生(日本):The Lark in Snow
神山奈々(日本):“CLOSE” to you to “OPEN”
ホワン・リュウ(中国):Zwei Landschaftsbilder
マルチン・スタンチク(ポーランド):SIGHS ─ hommage à Fryderyk Chopin

全席自由:¥1,000(税込)

*曲目、出演者等は、変更になる場合がございますのでご了承ください。
*就学前のお子様の同伴・入場はご遠慮ください。
*ネットオークション等での営利目的の転売はお断りします。

ハリソン・バートウィスル
© Hanya Chlala/ Arena PAL

工藤俊幸

たった1人の審査員によるオーケストラ曲の作曲コンクール
世界28カ国から集まった97作品の中から、バートウィスルがいかなる才能を発掘するか、注目!

世界中の若い世代の作曲家たちを対象としたオーケストラ曲の作曲コンクールが「武満徹作曲賞」です。毎回たった一人の作曲家が審査にあたることや、受賞者たちのその後の活躍により世界的に知られています。15回目となる今回は、28カ国97作品を受け付けました。審査員バートウィスルの譜面審査の結果選ばれた上記作品がこの本選演奏会で演奏され、受賞作が決定されます。なお、譜面審査に際しては、作曲者名等の情報は伏せ、作品タイトルのみ記載されたスコアを使用しました。

ファイナリストのプロフィール

(エントリー順)

ホワン・リュウ(中国) Huan Liu[China]

[作品名]Zwei Landschaftsbilder

1983年3月11日、中国の唐山市生まれ。1999年より作曲専攻で天津音楽院の付属学校に入学。2002年〜2007年、北京の中央音楽学院(学士課程)でウェンチェン・チンに師事。 2008年にベルリン芸術大学(ディプロマ課程/修士課程)に入学しヴァルター・ツィンマーマンに師事、2010年から現在は、マイスターシューラーの学位を得て、ツィンマーマンに師事し続けている。作品は、室内楽、オーケストラ作品、映画音楽、子どものための音楽と多岐にわたり、それらは中国、オランダ、ドイツ、エジプトで演奏され、受賞もしている。

小林純生(日本) Sumio Kobayashi [Japan]

[作品名]The Lark in Snow

1982年12月29日、三重県生まれ。1985年から音楽教育、特にピアノと作曲を中心としたレッスンを受ける。作曲を湯浅譲二と伊藤弘之に師事。日本音楽コンクール、ICOMS国際作曲コンクール、国際尹伊桑作曲賞、国際作曲コンクールSYNTHERMIAなどのコンクールで入賞、入選。武生国際音楽祭をはじめとする国際音楽祭にも招待されている。作品はピアノソロから大編成のオーケストラなど多岐にわたる。

神山奈々(日本) Nana Kamiyama [Japan]

[作品名]“CLOSE” to you to “OPEN”

1986年1月16日、群馬県前橋市生まれ。東京音楽大学付属高等学校を経て、同大学作曲指揮専攻(作曲 芸術音楽コース)を卒業。2010年、同大学大学院修士課程を修了。第79回日本音楽コンクール作曲部門第3位(2010)。近年は、音楽における認知心理学について興味を持ち、作品の中で実践することを試みている。また、邦楽器のための作品にも積極的に取り組み、自身も鶴田流薩摩琵琶、長唄三味線の演奏、語りを学んでいる。近年の作品には《6つのヴィオラのためのAtrE》(2008)、《“tOkyO” in the bOx》(2010)などがある。これまでに作曲を有馬礼子、西村朗、細川俊夫の各氏に師事。

マルチン・スタンチク(ポーランド) Marcin Stańczyk [Poland]

[作品名]SIGHS ─ hommage à Fryderyk Chopin

photo: Aleksandra Chciuk

1977年11月16日、ポーランドのウェンチツァ生まれ。ウッチ大学法学部を卒業後、ウッチ音楽院でジークムント・クラウゼに、聖チェチーリア音楽院でイヴァン・フェデーレに師事。その後、IRCAMのCURSUS1で更に学んだ。また、ダルムシュタット国際音楽研究所、リーディング・パネル・IRCAM、ロワイヨモン財団、ジャーウッド財団、ラウレンスカントリイ財団、ヴィトルト・ルトスワフスキ財団などの様々な団体から、賞や奨学金を受けた。現在、ポーランド政府、シンフォニア・ヴァルソヴィア、ワルシャワ国立歌劇場から2013/2014シーズンの作品を委嘱されている。

http://marcinstanczyk.com/

「2013年度武満徹作曲賞 譜面審査を終えて」
審査員:ハリソン・バートウィスル

[総評]

© Hanya Chlala/Arena PAL

武満徹作曲賞の選考の任に就かせていただき、経験したことの無い難しさに直面することになりました。私はもはや50年以上も音楽を書き続け、120曲以上を作品として上梓してきました。そして作曲をすればするほど、音楽全般への私自身の反応のしかたは、ますます主観的になってゆきます。実のところ、ひとつの音楽作品に対して私が下す評価とは、私自身もその曲を書きたかったな、と思うかどうか、ということになるわけです。97にも上るオーケストラの総譜で膨れあがった段ボール箱2つが手元に届いたとき、それらを開けたとたんに、私はパニックに襲われてしまいました。いまや主観性に囚われきっている私が、どうやったらこの選考という任務を遂行しうるのか、と戸惑い、途方に暮れてしまったのです。そうして私は、以下の方法を自らに課すことにしました。

  1. 全ての応募作品について、一作品につき、少なくとも15分間は集中して読む。
  2. 明らかに他作品の水準に達していないと思われるものを除外させていただく。
  3. 他の諸作品については、さらに精査を重ね、曲の内容をよく消化する。
  4. 一週間ほど時間をとってから、最終選考に残る可能性のあるスコアを選び出す。
以上の結果として、27作品が残りました。そして、ここからが最も難しい仕事となったのです。27作のうち、18作品は同じような傾向を示しているように思われました。すなわち、音の密集した、かつ全体として静態的なテクスチュアを持ち、テンポは遅く、弱音で、複数の音を重ね合わせて同じリズムで動かし、それを美しいオーケストレーションで表現していることが多い ─ そういった作品群です。私はそれらを“Rothko Pile(ロスコ・パイル)”と呼びました(訳注:画家マーク・ロスコの作品を集めた場「ロスコ・チャペル」、さらにモートン・フェルドマンによる同名の音楽作品との、やや意味深い言葉遊びになっている)。それら以外の9作品はより個人的な様式で書かれ、なにかのグループにまとめられるものではありませんでした。ロスコ的な作品群については、それらがお互いに類似している分だけ、そこからの更なる選考が難しかったと言えます。まず、私はそれらを2つのファイルに分けました。6作品と12作品に。しかし、決定はとても難しく、おおいに悩みました。毎日2作品ずつ、後者のファイルから前者へと動かす、といったことを繰り返して、ようやく3つの作品を残しました。もう一方の、より個性的な9作品から選ぶことは、それに比べれば容易で、5作品を残しました。これで8作品が残り、そこから最後に4作品を選ばせていただきました。
全作業を終えてみて、リズムの持つ力動性やメロディーを生みだす発想をもとにして、表現に到っている作品は無かったように思いますが、全体に高い創造性が示されていましたから、真正の音楽の未来について、私は希望を抱いています。



[本選演奏会選出作品について](エントリー順)

■ Zwei Landschaftsbilder
まず、この複雑な譜面はコンピューターに打ち込み直して、判読しやすいパート譜を作成するべきであろう。100作品近くあった応募譜面のうち、唯一この作品のみが、20世紀ヨーロッパのモダニズム ─ シェーンベルク、ウェーベルン、ブーレーズ、リーム等 ─ に直接結びつくものとして目を引いた。ただし同時に、本作は独自の声を持っていて、他の応募作品のいずれにも無い、音楽構造と管弦楽法の捉え方をしている。私が最も関心を抱く点は、この音楽の語り口、ストーリー展開である。部分部分の論理の積み重ねからは必ずしも予期できない方向へと、常に流れてゆき、オーケストラを独創的に用いて、常に自らを定義し直してゆくのである。

■ The Lark in the Snow
限定された素材を静謐なジェスチュアで表して、結果として豊かなタペストリーのような曲を紡ぎ出した。音量を抑え、音域を高く、テンポは遅めに、そして弦楽器群とフルート1本という小さなパレットを用いて、その律動に精彩を生んでいる。私はぜひこの勇敢な作品を聴いてみたいと思うし、もしもこのタイトルにあるヒバリが雪中に隠れているのなら、それが2013年、日本の春に、自由の空へと羽ばたくことを望むものである。

■ "CLOSE" to you to "OPEN"
繊細さと明晰さを併せ持つ作品で、ピアノとソロ・ヴァイオリンの引き受ける役割(ロールプレイ)に、そしてオーケストラがこの素材を引き取り、これに注釈を加えるとともに背景を成す、その全体の作りにも、発想の妙がある。テンポ記号に留意せずにこの音楽に耳を傾けて、あとで記号を確認したとき、指定されたテンポは多分に遅すぎるのではなかろうか、と思案した。

■ SIGHS ─ hommage à Fryderyk Chopin
きわめて野心的な作品である。このような作品についての話さえ聞いたことはない。私も書いてみたかったような作品で、当然ながら聴きたいと思う。私が惹きつけられるのは、発想の方向性と音楽上の創意が、瞬間ごとにぴたりと寄り添って推移してゆく様子、しかもそれが、自由でありながら精確な記譜法で表現されていることだ。音の層の拡がりをいかにコントロールするか、これが、この作品に潜む可能性を演奏によって表出させる際の問題であり、また挑戦であるだろう。

2012年11月30日
ハリソン・バートウィスル
(訳:後藤國彦)

*原文(英語)はこちらをご覧ください。
http://www.operacity.jp/en/concert/award/news/121207.php


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