武満徹作曲賞

審査結果・受賞者の紹介

2017年度

審査員

© Priska Ketterer
ハインツ・ホリガー(スイス) Heinz Holliger (Switzerland)

本選演奏会

2017年5月28日[日] 東京オペラシティ コンサートホール
指揮:カチュン・ウォン、東京フィルハーモニー交響楽団

受賞者

第1位

坂田直樹(日本)
組み合わされた風景
(賞金90万円)

第2位

ジフア・タン(マレーシア)
at the still point
(賞金70万円)

アンナキアーラ・ゲッダ(イタリア)
NOWHERE
(賞金70万円)

シュテファン・バイヤー(ドイツ)
私はかつて人肉を口にしたことはない
(賞金70万円)

左より、シュテファン・バイヤー、坂田直樹、ハインツ・ホリガー、
アンナキアーラ・ゲッダ、ジフア・タンの各氏
photo © 大窪道治

審査員:ハインツ・ホリガー 講評

みなさん、こんばんは。私のコメントはすでに当日プログラムのなかに書いてあるものをお読みになっていることと思います。しかし、その中にも書いたとおり、たった一人の作曲家として115作品全部を見て、そしていずれの作品に対しても公平かつシビアな審査をするということは、とても難しく大変なことでした。特に自分自身の音楽と違うような作風や個性といったものに対しても許容をしなくてはいけない。武満徹さんの考えで、審査員を一人だけにするというこの作曲賞というのは非常にユニークなものですが、今回バルコニーの中央のところに座ってこのジャッジをするということは、まるでローマ皇帝の「これ却下、これ合格」みたいな、指を上げたり下げたりして審査するような、そんな感じの気持ちを味わいました。

今回のプログラムにこれもちょっと書いたのですけれども、115ものスコアの全てを見たときに非常にいろいろな豊かなリズムというものを、つまり体のなかの心臓の鼓動とか、みなさんが実際に息づくような呼吸、そういったものがすこし少なくて、時間のように、時計のように拍を刻んでいくようなそういったようなものが多く見られていました。私自身はバルトークの弟子が先生だったわけですけれど、つまりバルトークは私にとって祖父にあたるようなそういう先生になるわけですけれども、その人間にとってリズムというものはフィジカルなもの、肉体的なものなんですね。音楽もまたフィジカルなものであると私は思っております。さらに言語というものは、これは言葉が終わったところから音楽が始まるという言葉があるように、みなさんお分かりになると思いますが、そういった意味での音言語というものが私にとっては大切です。

現代の作曲におきましては、コンピュータという存在があります。しかし昔の作曲家は心に響いた音楽を腕を通し、さらに指にいって、その指先のペンを通して音符を書き記していきました。テンポもまたしかりです。そういった形で実際的に肉体の行動、動きというものがあって曲が生まれていきました。それに対して現代におきましては、キーボードを触って押すという形で、繰り返しのパターンにしても、リピートと入れればそれが繰り返しのように表示されるような、だからキーボードでこう打ってという、さっき言ったような順番の行動ではなく音楽が作られることによって音楽のキャラクター、性格そのものも変わってきてしまった。人がこのように話をするとき、その抑揚はさまざまであり、音の高さや低さ、リズム、それは本当に人によってさまざまです。ヤナーチェクやバルトークが民族音楽を描いた様子というのは、その非常に複雑なリズムや構成といったものを見事に音楽に置き換えました。ですから現代のみなさんが、現代の機器、つまり現代のメディアですね、機械等を使うという罠に陥ってしまわないでほしいと思わずにはいられません。音楽とはその言葉を越えた言語なのです。たとえばオルフェウスの物語をみなさんご存知だと思います。彼は生の世界から死の世界、そのひとつの境、リミットを越えて死の世界に入っていきます。振り返るという誘惑を断ち切れずに、つい振り返ってしまったためにすべてを彼は失ってしまいますけれども、このように音楽というのは生や死やそういったすべてを越える、超越する、越えた存在になりうるものだと思います。どんな言葉をも越えて、すべての言葉が消えて沈黙となった、その次の瞬間に始まるのが音楽なのです。みなさんが生を受けて最初に聴くのは母親の声ではないでしょうか。そしてその前にお母さんのお腹のなかで聴くリズムは、母親の心臓の鼓動だと思います。その響きは独特の音響のなかにあり、そしてそれは無意識の潜在意識のなかに必ず残っているものなのです。そういった音は絶対、潜在的に意識に残っているものですから、決して失わないでほしいと私は思っています。

まず4つの作品を選んだわけですけれども、それぞれに言えることは、みな一様ではないのですが何かしらの形でミステリー、そういったものを私に与えてくれました。その神秘的な部分に私は惹かれたのです。

そして個々の講評になります。

■ジフア・タン(マレーシア):at the still point
これはT.S.エリオットの詩から誘発されて作られた作品ということですが、本当に夢のような風景が繰り広げられ、そこにはまるで植物も音も何もかもなくなってしまったような砂漠があり、それでいながら何層にもなるミステリアスな音がオーケストラから生み出されています。ときには単一の音だったり、そしてそのようなミステリアスな世界に聴衆をも誘ってくれるような、そんなところが魅力的でした。

■アンナキアーラ・ゲッダ(イタリア):NOWHERE
こちらはある意味では私の感じる音楽に近いものがありました。非常に柔軟性のあるテンポ、リズムがそこに繰り広げられ、和声言語、あるいは和声の構造的にも非常にクリアなものを感じることができました。ここにある意味クラングレーデ(Klangrede/音の言語)、これはアーノンクールが使った言葉ですね、これはC.P.Eバッハの時代の疾風怒濤にも通じるような、あらゆる情熱、身体や魂、そういったところから湧き出るような情熱というものが、あたかも音楽が自ら話をし出すかのような、そんな言語、神秘的な言語が繰り広げられるような、そんな音楽でした。

■坂田直樹(日本):組み合わされた風景
こちらの作品は本当に作曲的な技術、卓越した作曲に対する理解というものを感じました。プログラムにも書きましたが、メチエということ、彼は本当にその域にきちんと達している、非常に高い技のレヴェルに達しているということです。音、ノイズが息をするその瞬間から自由にどこかに、どこかからやってきてどこかに行く、それが物質的にこの地点からこうこうこう辿ってここに行くというようなかたちではなく、本当に自然にどこからか来てどこかへ行くような、そんな音を作り出した。そしてあらゆる要素がふっと違うところにシフトしてしまうような、そんな形で音の始まりの息から振動に代わり、そして死に消えていくような、そんな流れを見事に作っていました。何よりも彼が素晴らしいと思ったのはその音響的な部分でのコントロール、音響すべてを完全なコントロール下に置いていたということ、そしてそのオーケストレーションもたいへん見事で、欠点を探すのが非常に難しいと私が思ったほどです。最初は作曲家の名前は判らなかったので、フランス人の作曲家だと思っていた位で、のちに彼がパリで勉強しているということを聞き、フランス文化からの影響も受けていらっしゃるのかなと思いました。

■シュテファン・バイヤー(ドイツ):私はかつて人肉を口にしたことはない
こちらを選んだのは、この作品だけは他の114の作品とは対極に位置する作品だったからです。音楽的な語りかけてくるもの、彼はすべての装飾的なもの、あるいは音楽づくりにおける自由闊達な動きというものをすべて否定した上で、非常にシニスター(不吉)な、非常に暗い、そういった作品を書いています。聴いている者も、私は真ん中で聴いていたわけですけれども、不思議ないろいろな魅力的なものが混ざってくるような、そしてそれが必ずしもネガティブな、マイナスだけの否定の音楽だけではないということなのです。非常に人間的な要素、そしてたとえば神が存在しなかったら神を否定することもできない、そういった論理に基づくような、“存在しなければ否定もできない”という、つまり今回の音のイベント、そこにおけるレゾナンスをはじめとしたベル、鐘の音、また非常に低音域の楽器の使い方、これは非常に魅力的でしたし、それからオーケストラの弦は本当に琴のような、あたかも打楽器的な奏法を思わせるような使い方をしていた。そしてそれは一つ一つの音符があたかも生まれることを拒否されるような、ぐっと首を絞められてそこの先進めなくなるような印象さえも与えました。そして嫌が応もなく時というものがどんどん、どんどん過ぎて行ってしまって、それを取り返すことができない、無情に過ぎていく時というものも、そこに感じることができました。そのとき私はふとエドガー・アラン・ポーの作品を思い浮かべました。ポーの作品のなかで、横たわっている人の上を斧がだんだん降りてくるんですね、その身体に向かって。そのような迫ってくるような形とか、カフカの作品で、本当にあたかも迷宮、ラビリンスに迷い込んでしまって、その自分のいるところを見失ってしまうような、そんな感覚もありました。彼はただ、今まで私が慣れ親しんできたような、あるいはみなさんが慣れ親しんできたような既成の手法だけにもし留まっていたならば、そういったことをしていたら、こういったことはできなかったと思います。そういった既成の手法に陥ることなく、そういった既成を越えた手法を使うことによってあたかもお葬式とかセレモニー、あるいはリストの《悲しみのゴンドラ》、ヴェニスでゴンドラが流れていく、本当に悲しみに満ちた非常に暗い作品、しかし彼は音楽がもつ明るいブリリアントな、あるいは晴れやかな部分を全部否定しながらも、悲しみを描きながら、全部何もかも否定するのとはまたちょっと違う作品を彼は作り出していました。

そして今回の参加者すべてに言えることですが、みなさん非常に大編成のオーケストラ作品を作曲されたということです。今回思ったのは、次のときにはもうちょっと小さいサイズの作品、ですからそういう意味では、(楽器編成の)最低の数を16から18、そして上は最高はいくつまでという、最低の線でも示してみたほうが、作曲家というのは非常にいろんなアイデアを持っているものだと思うのです。そして皆が思いつかないような、ちょっと違うものを生み出すのが作曲家だと思います。音楽における、音楽づくりにおける柔軟性というものを、皆が皆、長音、あるいはたくさんの音を重ねるような、あるいは和声がぶつかるというような、そういった画一的にならないようにやはりいろいろな形、いろいろな要素が織り込まれるような、楽器の数がもうすこし少ないような編成の曲もあったらいいなと、これはあくまで私の提案としてお聞きいただければと思います。

そして今の若い作曲家の方々には、本当に現代的なテクニック、あるいは変わった楽器、いろいろな知識が溢れるほど本を読めば、あるいはいろいろなところに目を向ければ溢れるほどまわりにあります。そういったものを次々と使って、強弱にしても、ハープの高音がオーケストラのなかで一体どこまで響くのか、タムタムの特殊奏法の効果がどんなものなのか、木管の重音奏法や弦楽器のあらゆる奏法にしても、本当にそれが自分のものとして身についていないのに使ってしまう傾向を感じました。たとえばですね、お料理の本のレシピを見て、ここの作り方の部分とこっちの作り方とちょっと良さそうな手法を全部取り入れて、これで最高のお料理ができると勘違いしているような、そんなことを感じてしまうところがあります。もう少し厳選してエコな手法を使い、そして山とある素材をかき集めたような作品にするのではなく、本当に一音一音たりとも欠くことのできない、一音たりともミスってはいけないような、一音がとても大事な存在であるような作品を作っていただきたいと思います。モーツァルトの音符のひとつたりと変えることもできなければ、バッハの音楽の音をひとつたりと取ることはできない。現代音楽におきましても、ウェーベルンのスコアを見たとき、クリスタルのような、お花のような、まさに自然界のような完璧な様相を呈したもの、そういったものを音楽で作っていただきたいと思います。

そしてみなさん、順位を聞きたくてうずうずしていると思いますが、もう少しお聞きください。私はここで改めて東京フィルハーモニー交響楽団にお礼を申し上げたく思います。彼らは素晴らしい仕事をしてくださったと思います。今まで見たことのなかった初めてのスコアを手にし、それらを本当に献身的かつ情熱的に、そしてとてもプロとしての姿勢をもって演奏してくださった。本当に感謝したいと思います。そして指揮者のカチュン・ウォンさん、彼は非常に短い時間ながらも、見事にオーケストラを導き、この複雑なラビリンスのなかに入り込んでしまうような作品の数々を見事に、オーケストラとは非常に良い雰囲気を保ちながら、実は指揮者にとってオーケストラと良い関係を保って音楽を作ることはとても大事なことなのですが、それをしてくれました。その両者に感謝を申し上げます。

このようなコンクールと申しましても、参加すること、そしてここに来て多くを学び、いろいろな人たちと交わりながら体験を交わす、オーケストラの音楽家たちとの交流、実際の自分の作品の音を聴く、そういったものが、そしてまた一緒に参加したファイナリストたちとの交流、こういったことがとても大事だと思います。今回賞を出すにあたって審査員が何人かいれば違った内容になったかもしれませんが、私一人で今回考えさせていただいた順位を発表させていただきますと、2位が3名、ジフア・タンさん、アンナキアーラ・ゲッダさん、シュテファン・バイヤーさん。この2位のなかには順位はございません、全員同等の2位です。そして1位は坂田直樹さんと決めさせていただきました。この4人はとても競争相手という感じではなく、小さな家族であるような、そんな雰囲気をいつも持っておりました。私自身、スポーツで順位を決めるようなそんな雰囲気ではない彼らの関係をとても好ましく思うと共に、彼らが豊かな荷物をかかえて帰り、より多くのインスピレーションと今回の体験に基づいて、次の素晴らしい作品を生み出してくれることを心より願っております。ありがとうございました。

通訳:久野理恵子/文責:東京オペラシティ文化財団

受賞者のプロフィール

第1位
坂田直樹(日本) Naoki Sakata
組み合わされた風景

1981年8月6日、京都市生まれ。2007年愛知県立芸術大学、2008年パリ・エコール・ノルマル音楽院をそれぞれ首席で卒業。2013年パリ国立高等音楽院にてステファノ・ジェルヴァゾーニのクラスを修了。2014年IRCAMにて研修を受ける。作品は武生国際音楽祭、Festival Musica、ロワイヨモン作曲講習会“Voix nouvelles”など、多数の音楽祭や企画で取り上げられている。桑原賞、SACEM賞、第36回入野賞受賞。2011年、武生作曲賞、日本音楽コンクール作曲部門入選。2010~2011年、ローム ミュージック ファンデーション奨学生。現在、パリ在住。
https://naokisakata.net/

受賞者の言葉
今回の武満徹作曲賞に応募を考えた理由は、オーケストラの初演の機会を持ちたいということだったんですが、それだけではなく、もちろんですが、ハインツ・ホリガーさんの音楽性に深く感銘を受けていたので応募したいと考えました。まず、音の、音楽の可能性を求め続けるホリガーさんに自分の音楽がどのように聞こえるのか、また自分自身が、自分の音楽とちゃんと向き合えているかどうか、それがどのように聞こえているのか、そういうことを伺ってみたく、武満徹作曲賞に応募しました。フランスのコンセルヴァトワールにいる時に、ホリガーさんが何回かセミナーで来られていたんですけれど、直接お話しをする機会はありませんでした。しかし、今回の作品の作曲中に、常にホリガーさんの声、もちろん僕の中での想像上の声なんですが、彼の声が常に聞こえていました。「このパートはこれでいいのか?」「もっと良いアイデアはないのか?」というように問いかけるような声なんですけれども、これはもちろん全くもって自分の中で作りあげた彼の声なのですが、彼が審査員をするということが私の音楽をより高いところへ引き上げ、より挑戦的なものにしたことは事実です。この数日間ですが、彼に直接お会いして、アドヴァイス、意見をもらい、また曲を聞いていただけたことをとても嬉しく思います。また同時に、他の3人のファイナリストとの出会いも幸福なことでした。ジフア、アンナキアーラ、ステファン、彼らと過ごせたこの数日間はとてもとても楽しかったです。彼らの作品はそれぞれ、僕からしたらかなりオリジン、エステティック(美学)が違うものだと思うんですけれども、彼らのリハーサルに立ち会うことで、オーケストラに対する様々なノウハウや技術を学びました。またそれだけではなく、この場を通じて私たち同世代の作曲家の考えに触れられたことがとてもエキサイティングでした。作曲しているときは自分と向き合う、とても孤独な作業を今回は数ヶ月にわたって行ったのですが、尊敬に値する彼らと友達になることができ、色々な話をし、居酒屋で飲み、ラーメンを啜った、そういう時間を今後忘れないと思います。
最後に、今回の武満徹作曲賞に関わって下さった全ての皆様にお礼を申し上げたいと思います。審査員のハインツ・ホリガーさん。それから素晴らしい指揮をして下さったカチュン・ウォンさん。東京フィルハーモニー交響楽団の皆様。それから東京オペラシティ文化財団の方々。そして本当に複雑な楽譜をパート譜にして下さったハッスル・コピーさんに、まずはお礼を申し上げたいと思います。次に、この曲を完成させるにあたって、アドヴァイスやサポートをして下さった友人、恩師の皆様に感謝を述べたいと思います。最後に、曲を聞いて下さった聴衆の皆様、ありがとうございました。
第2位
ジフア・タン(マレーシア) Zihua Tan
at the still point

1983年9月25日、コタバル生まれ。カナダに拠点を置き、作品はダルムシュタット夏期現代音楽講習会、ヴィッテン室内現代音楽祭、ロワイヨモン作曲講習会 “Voix nouvelles”、トンヨン市国際音楽祭(韓国)、アカデミー・シュロス・ソリテュード(ドイツ)など、アジア、ヨーロッパ、北米で取り上げられている。また、アンサンブル・モザイク、アンサンブル・ルシェルシュ、アンサンブルSurPlusによって演奏された。トンヨン市国際音楽祭においてゲーテ賞を受賞するなど、複数受賞している。現在はマギル大学のシューリック音楽学校で講師を務めながら博士課程で学んでいる。
https://www.zihuatan.com/

受賞者の言葉
みなさま、そして武田理事長をはじめ、東京オペラシティ文化財団の皆様、このような素晴らしい機会にご招待いただきまして本当にありがとうございました。今回この武満徹作曲賞のみならず、この作曲賞の前にございましたコンサートを含め、私どもをお招きいただき、若い作曲家の身といたしましては、このような機会をいただけましたこと、そしてこちらの国にお伺いする機会を得ましたことに心より感謝申し上げます。そしてなんと言っても、ハインツ・ホリガー先生にその素晴らしいお考えを聞かせて頂いただけでなく、共にいろいろな楽想的なことを分かち合う機会をいただけたことに感謝申し上げます。そして東京フィルハーモニー交響楽団、指揮者のカチュン・ウォンさん、私の音楽作品を実際に聴ける形で実現してくださったこと、その卓越した音楽家としての手腕にも心より感謝を申し上げます。そして改めてここで一緒になった仲間である、他の作曲家たちにもお礼を申し上げたく思います。その友情、さらに私が今後作曲をしていく上でいろいろな考えをもたらしてくれた彼らの作品にも感謝申し上げます。そして今日お越しいただいたみなさま、私の家族、そしてこちらでいろいろと支えてくださってきた方々にお礼を申し上げます。
通訳:久野理恵子
第2位
アンナキアーラ・ゲッダ(イタリア) Annachiara Gedda
NOWHERE

1986年6月20日、トリノ生まれ。トリノ音楽院で作曲をジョルジオ・コロンボ・タッカーニに師事し、2015年修士課程を優秀な成績で修了。また、ルイス・バカロフ、アツィオ・コルギ、パオラ・リヴォルシ、トリスタン・ミュライユのマスタークラスを受講した。国内外の国際コンクールで入賞し、アンサンブル10/10(ロイヤル・リヴァプール・フィルのメンバー)、ディヴェルティメント・アンサンブル、アンサンブルTélémaque、アンサンブルTaG、小里明子、ヴァレンティーノ・コルヴィーノなどによって、ハダースフィールド現代音楽祭(イギリス)、ヴェネチア・ビエンナーレ、Gmen音楽祭(フランス)、エキスポ・ミラノ2015のような様々な音楽祭で演奏されている。作品はSconfinarte、Bèrben、Zeddeの各社から出版。
http://annachiaragedda.com/

受賞者の言葉
本当に私はとても幸せな気持ちでここに立っています。作曲家として歩む若手の者としまして、大きなキャリアを積むにはいくつかありますが、その一つがこの武満徹作曲賞であり、この作曲賞に参加し、ここに伺う機会を与えてくださったみなさまに感謝します。プロデューサーの澤橋さんが六ヶ月前私に電話をかけてくださった時のことを今でもはっきりと覚えています。番号通知のところに見も知らぬ変わった番号が表示されたのを見て、何か押し売りか変な電話かしらと思って取るのを躊躇したのですが、結局その電話を取って、私の長年の夢と思っていたことが叶ったのです。本当に賞に入るとは思っていなかったのです。その知らせだったわけです。そしてこの賞にかかわる皆さんにお礼を申し上げるとともに、特に東京フィルハーモニー交響楽団のみなさん、指揮者のカチュン・ウォンさん、私の音楽をほんとうに素晴らしい卓越した手腕で実現してくださったことにお礼を申し上げます。そして東京オペラシティ文化財団の皆様に、本当に優しくいろいろなお心遣いをいただきました。そして何と言っても、ハインツ・ホリガー氏にいただきましたアドバイスに心よりお礼を申し上げます。作曲家として歩みたいと考えている私たちの世代にとって、武満徹さんは特別な存在で、私は実は半年ほど、武満さんの作品《海へ》を演奏するプロジェクトに参加させていただくことができました。そしてその矢先に武満徹作曲賞をいただくことができまして、この瞬間、この日を私は一生忘れないと思います。ありがとうございました。
通訳:久野理恵子
第2位
シュテファン・バイヤー(ドイツ) Stefan Beyer
私はかつて人肉を口にしたことはない

1981年11月6日、ブラウンシュヴァイク生まれ。ライプツィヒ大学にて歴史学を、ライプツィヒ音楽大学とイェーテボリ音楽大学にて音楽、作曲を学んだ。2011年、ライプツィヒ音楽大学においてクラウス・シュテファン・マーンコプフのもとでドイツ国家演奏家資格を取得。2011~2013年、同大学で管弦楽法の客員教授を務める。アーティスト・イン・レジデンスとして、2015~2016年にパリ国際芸術都市に、2016年にヴィーパースドルフ城(ドイツ)に滞在。奨学金や作曲賞も複数受けている。作品はアンサンブル・モデルン、ルクセンブルク・シンフォニエッタ、パブロ・ルス・ブルセタ、ヨハネス・カリツケなどの著名な演奏団体や指揮者によって演奏されている。現在、ベルリン在住。
http://stefanbeyer.com/

受賞者の言葉
みなさま、こんばんは。この数日間東京で過ごさせて頂いた時間は本当に特別なもので、私自身日本に来たのは今回が初めてで、こうした場に招待していただけたことに心より感謝申し上げます。そしてオーケストラの素晴らしい音色、個々のオーケストラの人々の動きを見ながらオーケストラとお仕事をさせていただいたこと、若手の作曲家にとりましてはオーケストラと仕事をする機会はなかなかございません。特に今回のこの武満徹作曲賞のおかげで、リハーサルからいろいろな観察をし、新たなことに気づき、とても豊かな経験をさせていただきました。そして東京オペラシティ文化財団の皆様に、本当にこのような素晴らしい作曲賞を毎年実現させる寛容さと情熱に改めて感謝するとともに、この賞が音楽にのみならず若手作曲家たちにとってどれだけ大きな貢献を果たしているかということに改めて言及したいと思います。そして指揮者のカチュン・ウォンさんに改めて感謝申し上げたいと思います。と申しますのは、彼は素晴らしい演奏を指揮してくださっただけでなく、私どもと実際に活発なコミュニケーションを交わし、リハーサルをすぐそばで参加させてくださって、多くのことを学ばせていただきました。さらに東京フィルハーモニー交響楽団の素晴らしい、忍耐強い演奏にも感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
通訳:久野理恵子
ON AIR

本選演奏会の模様はNHK-FMで放送される予定です。

番組名:NHK-FM「現代の音楽」
放送日未定(決まり次第ホームページでお知らせいたします。)
NHKラジオ https://www.nhk.or.jp/radio/
番組ホームページ https://www4.nhk.or.jp/P446/

お問い合わせ

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