武満徹作曲賞 審査結果・受賞者の紹介

2011年度

サルヴァトーレ・シャリーノ

【審査員】
サルヴァトーレ・シャリーノ(イタリア)
Salvatore Sciarrino (Italy)

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[本選演奏会]
2012年1月20日[金] 東京オペラシティ コンサートホール
指揮:山田和樹、東京フィルハーモニー交響楽団

【受賞者】

左より、ヒーラ・キム、ベルント・リヒャルト・ドイチュ、サルヴァトーレ・シャリーノ、フローラン・モッチ=エティエンヌ、ヤン・エリク・ミカルセンの各氏 photo © 大窪道治

左より、ヒーラ・キム、ベルント・リヒャルト・ドイチュ、サルヴァトーレ・シャリーノ、
フローラン・モッチ=エティエンヌ、ヤン・エリク・ミカルセンの各氏 photo © 大窪道治

審査員:サルヴァトーレ・シャリーノ 講評

まず、私は今日ここに紙に書いてきたのですけれども、ちょっとここで即興的に思いを伝えられたらと思い、考えてきました。と言いますのも、今回ここで経験したことというのは、私にとって大きな喜びであり、そして皆さんとこうした経験ができることは素晴らしいことだと思います。
今回選ぶにあたりまして、私の作品と似たものはあえて選ぶ事は致しませんでした。そしてまた、近代的な、今風の言葉遣い、あるいは技術、奏法を使っているから、というようなことも選択肢のなかには入れませんでした。本当の意味での創造性というものは、そのアーティストが成し得た、自分が確立したアイデンティティのなかにこそ見出すものであり、そこで用いられた表現法や言語、それに拠るものではないということです。伝統的な手法や術を通しても、新たな視点や観点を浮き彫りにすることは可能であると、私は考えています。ですから、今回の選択も近代的なものであるということではなく、作曲家のアイデンティティが感じられるものに致しました。そして今回、この演奏を直に聴いたあとで、個々のコメントを私は書きました。

■ フローラン・モッチ=エティエンヌさん《Flux et reflux》
オーケストラの使い方にはたいへん卓越したものがあり、そこには音の魔法と変容の喜びを聴くことができました。その一方で形式全般はたいへんに明確で、作曲における内的なプロセスが進化していく様はとても自然な流れとなっていました。

■ ヤン・エリク・ミカルセンさん《Parts Ⅱ》
さまざまな音楽による大きな嵐のような音楽。これらのアーティキュレーションはしばしば濃密で厚みのある音となりました。そして雄弁なジェスチャー、表現と爆発、その二つが非平均律的な次元と、遠くから響いてくる音の次元という、2つの異なる次元を開け放つことで相対していました。

■ ベルント・リヒャルト・ドイチュさん《subliminal》
オーケストラの個々の集合体としての扱い方に非常に熟達したものがありました。私たちが慣れ親しんだアーティキュレーションと、近代的なアーティキュレーションが共存。その書き方はとても効果的に簡略化されていました。マーラーやベルクのような典型的な規範が影のように存在し、ここでもまた、さまざまな音楽の大きな嵐のようなものが感じられました。

■ ヒーラ・キムさん《NAMOK》
非常に簡素化された言語がそこにありました。各セクション間のコントラストがとても強く、そして西洋音楽的な様式、なかでもストラヴィンスキーを思わせるような様式が韓国音楽がもつリズムの伝統のなかに溶け込んでいました。

第1位は、フローラン・モッチ=エティエンヌさん《Flux et reflux》です。そして第2位は、ベルント・リヒャルト・ドイチュさん《subliminal》。第3位は、ヤン・エリク・ミカルセンさん《Parts Ⅱ》です。第4位は、ヒーラ・キムさん《NAMOK》です。

最後に二つ大事なことを言いたいと思います。作曲家の方々にとって一位になることが一番大切な事ではなく、彼らはみな素晴らしい才能をもっています。そして、才能が大きく立派なものであればあるほど、その責任も大きいということ。そして二つ目は、心からの御礼をオーケストラへ。私自身、実はこの東京フィルハーモニー交響楽団の事は前から知っていました。彼らの素晴らしい演奏に御礼を申し上げるとともに、それを実現させてくれたマエストロ山田さんにも御礼を申し上げたく思います。本当にありがとうございました。

受賞者のプロフィール

第1位
フローラン・モッチ=エティエンヌ(フランス) Florent Motsch-Etienne
Flux et reflux

1980年8月1日、パリ生まれ。パリ国立高等音楽院にて学び、修士課程においてフレデリック・デュリユー氏に師事。現在、パリ市立7区音楽院教授。フランス芸術アカデミー(2007年)による受賞の他、ユネスコ国際作曲家会議(IRC)最優秀作品、タクトゥス作曲賞第1位(2008年/ベルギー)を受賞。作品はルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、リール国立管弦楽団、カーン管弦楽団等で演奏されている。現在、カサ・デ・ヴェラスケス(マドリード)の芸術部門メンバー。
http://www.florentmotsch.com/

【受賞の言葉】
皆様、このたびは武満徹作曲賞の栄誉をあずかる事ができ、本当に心から御礼を申し上げたく思います。そして田口弥理事長をはじめとする、東京オペラシティ文化財団の皆様のコンクールを支える素晴らしいご尽力に、心から感謝申し上げたいと思います。若い作曲家として、この非常に難しい時代にありながら、こういったものに参加できる事は大変大きな喜びです。そしてサルヴァトーレ・シャリーノ氏の素晴らしい審査のもとに、今回私どもはここに立つことができました。現代のなかでクリエイティヴな活動を続けていく上で、この場というのは本当に貴重な場です。そして私の作品を実際に演奏して下さった、演奏にあたって指揮をして下さった山田和樹さんに心から御礼申し上げたいと思います。その演奏は大変素晴らしいもので、私自身、大変満足を致しております。さらにはその後ろでマネージメント等をしてくださった瀬川さん、天野さん、国塩さん、澤橋さんをはじめとする多くの方々に心から御礼を申し上げるとともに、この日本で本当に忘れ得ぬ経験をさせて頂きました。最後に荒井英治さんを始めとする東京フィルの皆様、本当に素晴らしい演奏をありがとうございました。皆様の音楽に対する深い関わり方、そしてそのご尽力のおかげで私は今ここに立つことができたと思っております。そして改めて東京オペラシティ文化財団の皆様に心から御礼を申し上げるとともに、「(日本語とフランス語で)どうもありがとう 武満徹作曲賞が末永く続きますように」。

第2位
ベルント・リヒャルト・ドイチュ(オーストリア) Bernd Richard Deutsch
subliminal

1977年5月15日、メートリンク生まれ、ウィーン在住。1995年〜2003年、ウィーン国立音楽大学で作曲をエーリヒ・ウルバナー、ディーター・カウフマン、修士課程でマヌエル・ヒダルゴ、ボグスワフ・シェッフェルの各氏に師事。ハノーファー現代音楽ビエンナーレ作曲コンクール第2位(1997)をはじめ、エルンスト・クルシェネク賞(2002)などを受賞。作品はシュトゥットガルト・エクラ音楽祭、ヘーアゲンゲ・フェスティバル(ウィーン)、クラングシュプーレン(シュヴァッツ)、ウィーン・モデルンで演奏されている。オーストリア放送協会、シュトゥットガルト放送交響楽団、シュトゥットガルト州立歌劇場から委嘱を受けている。また、アルディッティ弦楽四重奏団、マリノ・フォルメンティ、ルーペルト・フーバー、ヨハネス・カリツケ、オットー・カッツァマイアー、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団、シュトゥットガルト放送交響楽団などによって演奏されている。
http://www.berndrdeutsch.com/

【受賞の言葉】
東京オペラシティ文化財団、そして理事長、皆様、本当にありがとうございました。そして審査員のシャリーノさん、本当にありがとうございました。皆様の前で私の音楽を演奏して頂けたこと、そしてこの素晴らしいホールに立つことができたことを本当に光栄な事と思っています。私が日本に来たのは今回が初めてでした。日曜日に到着して以来、本当に素晴らしい経験の数々をさせていただきました。そしてここで、世界中の若き作曲家たちが臨む、この場に立つことができた事を私は大変光栄に思うと同時に、シャリーノ氏に選んで頂けた事に心から感謝致します。東京オペラシティ文化財団の皆さんが現代音楽を支えて下さるその姿勢に改めて感謝を申し上げるとともに、私どもに大きな励ましと勇気を与えてくださった事に御礼を申し上げたく思います。さらに今回のコンクールでは、実際に生演奏をして頂けるということ、東京フィルハーモニー交響楽団の皆様の素晴らしい演奏と、指揮者の山田さんの素晴らしい指揮、それらにも改めて御礼申し上げたいと思います。またゆっくりと改めて、ぜひこの素晴らしい国に来たいと思っております。今日は本当にありがとうございました。

第3位
ヤン・エリク・ミカルセン(ノルウェー) Jan Erik Mikalsen
Parts Ⅱ

1979年5月6日、クリスティアンスン生まれ。ベルゲンのグリーグアカデミー、コペンハーゲンのデンマーク王立アカデミーで学んだ。ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団をはじめ、数々のオーケストラやアンサンブルに委嘱されている。2006年、《グールとムーン》を含む現代ノルウェー管弦楽作品集CD(ノルウェー放送管弦楽団)がリリースされる。また、プレザンス音楽祭(パリ)、ウルティマ現代音楽祭(オスロ)、パブロ・カザルス・フェスティバル(プラド)、カサ・ダ・ムジカ(ポルト)、ニューメキシコ大学、ノルディック・ミュージック・デイズ、モメントゥム・ノルディック・フェスティバル(ノルウェー・モス)で演奏されている。2010年、オスロ歌劇場においてビョーン・ニューマンとノルウェー放送管弦楽団によりクラリネット協奏曲が世界初演され、2012年にはボードー・シンフォニエッタ(ノルウェー)委嘱作品が世界初演予定。
http://www.janerikmikalsen.no/

【受賞の言葉】
僕も言いたいことはほとんど同じなのですが、小さい子供の時から、東京、日本には来たくて仕方がなく思っていました。それをこの機会に、そしてシャリーノ氏を前に自分の作品を聴いて頂くという素晴らしい機会で訪れることができたことをうれしく思います。そして心からオーケストラの皆様、指揮者の山田さんに御礼を申し上げたいと思います。残念なことは、明日にはもう退屈なノルウェーにもう帰らなくてはなりません。ずっと先ではなく、極力早い時期にまたぜひ日本に来たいと思っております。東京オペラシティ文化財団および理事長、皆様、本当にありがとうございました。指揮者の山田さん、シャリーノ氏、皆様本当にありがとう。そしてこの作曲家の仲間たちと出会えたこと、これからもつき合っていけたらうれしいと思っています。そして聴衆の皆様、最後まで本当にありがとうございました。

第4位
ヒーラ・キム(韓国) Heera Kim
NAMOK

1976年3月15日、ソウル生まれ。キョンヒ大学で作曲と理論を学び、その後、ケルン音楽大学で作曲をヨーク・ヘラー、電子音楽をハンス・ウルリヒ・フンペルト、カールスルーエ音楽大学で作曲をヴォルフガング・リームの各氏に師事。東西フォーラム賞(2001年/ドイツ)、チューリヒ現代音楽アンサンブル作曲コンクール(2007年/スイス)、BMWムジカ・ヴィヴァ作曲賞(2007年/ドイツ)、ギュンター・ビアラス作曲コンクール(2008年/ドイツ)、ベルリン・オペラ賞(2010年/ドイツ)など国際コンクールにおいて賞を受けた。最近では室内オペラ《Der Unfall》がベルリン・ノイケルナー・オーパーで初演、2010年には新しい室内楽作品がパスカル・ロフェ指揮ソウル・フィルによって初演された。

【受賞の言葉】
東京オペラシティ文化財団をはじめ、理事長、まず心から御礼申し上げたいと思います。そしてこの場に立たせて頂けたことを心から光栄に思うと共に、感謝を申し上げたいと思います。本当に居心地の良い日々を過ごさせていただきました。そしてなんといっても審査員であるシャリーノ氏には、私の音楽を聴いて下さり、そしてそれに対する評を頂き、私にとってそれは心の底から本当に光栄なことであると同時に、感謝の念に絶えません。さらにはオーケストラ、そして指揮者の山田さん、皆さんの素晴らしい演奏に心からの感謝を述べるとともに、ここに全部挙げ切れない多くの友人たち、私を支えてくれた人たちに心から御礼を申し上げたいと思います。そして最後に、なんといっても私の音楽を聴いて下さった聴衆の皆様に、心から感謝の気持ちを述べたいと思います。作曲家というのは、それを聴いてくれる聴衆あってのものです。皆様、本当にありがとうございました。



ニュース&トピックス「2011年度 ファイナリスト決定」(2010.12.08)
(譜面審査時のシャリーノのコメントなど)

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お問い合わせ:東京オペラシティ文化財団 Tel.03-5353-0770

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