展覧会の見どころ
Highlights

1. ガラス作家、山野アンダーソン陽子

ガラスに惹かれ、なかでもガラス食器という量産されたクラフトに関心を抱き、北欧最古のガラス工場であるコースタ内の学校で吹きガラスの手法を学びました。ガラス産業が栄えたスウェーデンにおいて、17世紀より用いられてきた工場制手工業の手間ひまかかる技術にこだわり、制作を続けています。同じものをつくっても手作業ゆえに一つひとつが微妙に異なり、それはちょうど私たちみんながそれぞれに違うことと似ていると、山野は考えます。かたちのわずかな歪みや使い心地の微妙な違いなどのささやかな個性は、使い手との間にじわじわと生まれる「食器との関係性」を考えるきっかけになったといいます。

山野アンダーソン陽子 Stem Set For Niklas Holmgren 2020
撮影:髙橋健治

2. ガラス、写真、絵画の「関係性」を思う

会場に並ぶのは日々の暮らしでも使いやすそうなクリアーガラスの食器と、それらが多種多様な表現で描かれた絵画、画家のアトリエで撮影されたガラスの写真。それぞれを作品として鑑賞しながら、生活の道具としての使い心地を想像し、美術館で鑑賞することと自宅で道具として使うこと(を想像すること)のあいだを行ったり来たりすることで、作品と道具、鑑賞することと使用すること、美術館と自宅、フィクションとリアルなどが混ざりあい、その境界が曖昧になっていくことでしょう。それらが作品ジャンルを飛び越えて関係しあい、さらに見る人が関係することで新たな関係性が紡がれることを期待します。

3. 会場ごとに異なる展示構成と空間演出

この展覧会は、会場ごとに展示構成が変わります。各キュレーターがGlass Tableware in Still Lifeプロジェクトを解釈し、会場にふさわしいコンセプトの元、作品を選び、配置します。例えば第一会場の広島では、ガラス、絵画、写真をそれぞれ作品ジャンル毎に展示し、作品と作品、作家と作家、ジャンルとジャンルのあいだの関係性を想像してもらうような会場構成になっています。第二会場の東京では、個性豊かな18人の画家たちと山野の対話に光をあて、そこで交わされたやり取りやストーリーとともに、ガラス食器について思考します。

展示構成協力:伊藤暁(伊藤暁建築設計事務所)

広島現代美術館での展示風景
撮影:三部正博