展覧会について
Introduction

白髪一雄は、戦後日本の前衛芸術を牽引した具体美術協会の中心メンバーとして知られ、近年改めて国際的に熱い注目を集めています。兵庫県尼崎市に生まれた白髪は、具体美術協会に参加する前年の1954年より、床に広げた支持体に足で直接描く「フット・ペインティング」の制作を始め、その実践と探求により、未知の領域を切り拓いてゆきます。
従来は制作の手段にすぎなかった身体運動(アクション/パフォーマンス)をまさに画面の主役に据えるそのラディカルな方法は、既存の芸術的、社会的な常識を一気に飛び越え、人間がものを作る行為の原初にたち返る画期的なアイデアでした。
具体美術協会解散後も先鋭な制作原理を貫いた白髪の作品は、空間や時間、物質や運動のなかで人間存在のすべてを燃焼させる圧倒的な力をはらんでおり、同時に、絵具の滴り、滲み、粘性や流動性、堅牢さ、といった油彩画ならではの魅力を豊かに備えています。
白髪の探求は、人間の資質と感覚をいかに高めるかという問題や、宗教的な精神性の問題など、独自の人間学的アプローチを含んでおり、様々な視点からの検証を待っています。
白髪の没後10年以上を経て開催する本展は、東京で初の本格的な個展として、初期から晩年までの絵画約90点をはじめ、実験的な立体作品や伝説的パフォーマンスの映像、ドローイングや資料も加え、総数約130点で作家の活動の全容に迫ります。

《地暴星喪門神》
1961
兵庫県立美術館蔵(山村コレクション)
油彩、キャンバス

[見どころ]

  1. 白髪一雄の全貌に迫る、都内の美術館で初の大規模展覧会。
  2. 1950-60年代、「具体美術協会」全盛期の傑作・代表作30点を展示。
  3. これまで観る機会が少なかった70年代の密教に影響を受けた作品群も積極的に紹介。
  4. 世界に先駆けて行った「具体」時代初期の伝説的なパフォーマンスや制作過程など、貴重な記録映像を公開。
  5. 多数のドローイング、写真、スクラップブック、原稿など、制作の推移の検証につながる資料を展示。