TOMMO GOKITA

展覧会についてExhibition

いまもっとも注目される画家

イラストレーションから出発した五木田智央は、60〜70年代のアメリカのサブカルチャーやアンダーグラウンドの雑誌や写真にインスピレーションを得た作品を発表してきました。絵画をコラージュ的に構築する自由な発想や方法は、初期のドローイング制作に限らず、今日までの五木田の絵画全般において特筆すべき創作の原点といえるものでしょう。
黒と白のモノクロームを基調とした彼の作品には、計算されたグラデーションや陰影が生み出すクールでファッショナブルな魅力、シンプルな描線とデフォルメされた歪な造形のコントラストが醸し出すユーモアやノスタルジー、具象と抽象の間を自由に行き来するイメージの両義性など、じつに多彩な表現の可能性を発散しています。ときに思わせぶりで、ミステリアスなイメージや状況設定は、こうした視覚言語の豊かな可能性を引き出し、鑑賞者の想像力に強く訴えかけて、独自の絵画世界へと誘います。

  • 《妖怪のような植物》
    アクリルグワッシュ、キャンバス
    2017年
    川崎祐一氏蔵
    © Tomoo Gokita
    courtesy of Taka Ishii Gallery
    photo: Kenji Takahashi
  • 《Holiday Flight》
    アクリルグワッシュ、キャンバス
    2017年
    ジャック・チャン氏(香港)蔵
    © Tomoo Gokita
    courtesy of Taka Ishii Gallery
    photo: Kenji Takahashi

本展のための新作

展覧会のメインヴィジュアルとなる《Come Play with Me》は、本展のために五木田が新たに描き上げた新作です。本展は大規模なインスタレーションを含めた約40点の作品で、五木田智央の魅力を紹介するものですが、そのほぼ半数は新作で、本展で初めて発表されるものです。
また、今年1月に五木田は香港で個展を開催しました。本展では、香港で発表されたばかりの新作のうち、2点が特別に出品されます。
作品の大半は昨年秋から半年足らずの短期間に描かれたもので、五木田の精力的な制作活動をつぶさに伝えるとともに、そこには現在の五木田が追求する絵画のエッセンスが凝縮されています。

  • 《Come Play with Me》
    アクリルグワッシュ、キャンバス
    2018年
    © Tomoo Gokita
    courtesy of Taka Ishii Gallery
    photo: Kenji Takahashi
  • 《記念撮影》
    アクリルグワッシュ、キャンバス
    2017年
    個人蔵
    © Tomoo Gokita
    courtesy of Taka Ishii Gallery
    photo: Kenji Takahashi

《Easy Mambo》
アクリルグワッシュ、墨、紙
2018年
© Tomoo Gokita
courtesy of Taka Ishii Gallery
photo: Kenji Takahashi

プロレスと音楽

五木田が大のプロレスファンであることはよく知られるエピソードです。本展では、五木田がこよなく愛するプロレスラーをレコードジャケットのフォーマットに描いた作品が出品されます。全225点にもなる一連の作品は、2002年から2018年にかけて描かれたもので、プレスラーの名前、その似顔絵、実在する有名な楽曲のタイトルで構成されています。往年のジャズのスタンダードナンバーや、50年以降のアメリカのヒット曲など、幅広い楽曲のタイトルが用いられていますが、レスラーと楽曲との間にはとくに必然性はなく、その無関係な組合せが思わず笑いを誘います。プロレスと音楽に寄せる五木田の個人的な嗜好がそのまま反映されている作品として必見です。

《Gokita Records》
ミクストメディア
2002-18年
© Tomoo Gokita
courtesy of Taka Ishii Gallery
photo: Kenji Takahashi