東京オペラシティの同時代音楽企画 コンポジーアム2010 トリスタン・ミュライユを迎えて

トリスタン・ミュライユの音楽

2010年5月27日[木]19:00 コンサートホール

2010.2.27 出演者

  • 野平一郎(指揮)
  • 原田 節(オンド・マルトノ)*
  • トリスタン・ミュライユ(オンド・マルトノ)**
  • 新日本フィルハーモニー交響楽団
  • ミュライユ:2台のオンド・マルトノのための《マッハ2,5》(1971)*/**
  • ミュライユ:オンド・マルトノと小オーケストラのための《空間の流れ》(1979)*[日本初演]
  • ミュライユ:オーケストラのための《ゴンドワナ》(1980)[日本初演]
  • ミュライユ:大オーケストラとエレクトロニクスのための《影の大地》(2003-2004)[日本初演]
*曲目、出演者等は、変更になる場合がございますのでご了承ください。

全席指定:一般 ¥3,000 学生 ¥1,000(税込)

[公演について]

野平、原田、ミュライユ共演!
オンド・マルトノ・デュオから大オーケストラまで、ミュライユの緻密かつダイナミックな音響空間をライヴで体験できるチャンス。

日本を代表する作曲家/ピアニストの一人で、今や指揮者としても活躍する野平一郎は、東京藝術大学大学院を経て、パリ国立高等音楽院に学びました。そのパリ時代、1982年から1990年まで、かつてミュライユらが創設したアンサンブル「イティネレール」のピアニストをつとめていたこともあり、ミュライユとの親交は深く、互いに作曲家として尊敬しあう仲間です。

そして日本を代表するオンド・マルトノ奏者、原田節は、ジャンヌ・ロリオ(作曲家オリヴィエ・メシアン夫人イヴォンヌ・ロリオの妹)に師事しました。そのおかげで、ロリオが初演を手がけた《空間の流れ》などのミュライユ作品を間近に体験し、早くから自らのレパートリーに加えていきました。もちろん、自身オンディストでもあるミュライユとも交流があります。

ミュライユは、旧友である野平と原田が手がける今回の作品展をとても楽しみにしています。気心も知れ信頼しあう音楽家たちの共同作業によって、代表作《ゴンドワナ》をはじめ、これまで日本では演奏機会のなかった作品群が上演されるこの演奏会は、ミュライユ自身のオンド・マルトノ演奏も含め、“スペクトル音楽”と呼ばれる流れを生み出した一人であるミュライユの多彩な音のタペストリーをライヴで体験する貴重な機会となることでしょう。

[演奏曲目について]

◎《マッハ2,5》(1971)
Mach 2,5 pour deux ondes Martenot

世界初演:1972年2月2日 パリ トリスタン・ミュライユ(オンド・マルトノ)、フランソワーズ・ペリエ(オンド・マルトノ)

2台のオンド・マルトノのために書かれた貴重な曲で、当時まだ“映画音楽の効果音”扱いされていたオンド・マルトノの持つ電子音響の可能性を追求し、楽器としての真価を再認識させた名作。独特の音色と表現力、広範なダイナミックレンジのもたらす豊饒なサウンドは驚異的で、コンサート会場は不思議な音響に満たされた異空間と化すはず。オンド・マルトノ6台版(1975)もある。

◎《空間の流れ》(1979)[日本初演]
Les Courants de l'espace pour ondes Martenot et petit orchestre

世界初演:1980年12月20日 ラジオ・フランス「20世紀の展望」 イヴ・プラン(指揮)、ジャンヌ・ロリオ(オンド・マルトノ)、フランス国立管弦楽団

オンド・マルトノとオーケストラのための優れた“協奏曲”として知られる。ここではオンド・マルトノはシンセサイザーに接続され、単体では持ち得ない音色や和音の演奏が可能となっており、合成された倍音は神秘的な力を感じさせる。まさにスペクトル音楽の面目躍如たる意欲作である。

◎《ゴンドワナ》(1980)[日本初演]
Gondwana pour orchestre

世界初演:1980年7月21日 ダルムシュタット アントニ・ヴィット(指揮)、クラク フ放送交響楽団

エレクトロニクスを用いないオーケストラのための作品で、ミュライユの名声を国際的に高めた傑作。開始部でオーケストラ全体によって何度も鳴らされる重層的でメタリックな鐘の響きはきわめて印象的である。曲名は、太古の地球上に存在したとされている巨大大陸からとられている。ミュライユの曲は描写音楽や標題音楽ではないが、他の超大陸と衝突、分裂したというゴンドワナ大陸の地殻変動は、作品の音響イメージと重なると言えるかもしれない。

◎《影の大地》(2003-2004)[日本初演]
Terre d’ombre pour grand orchestre et sons électroniques

ベルリン・メルツムジーク音楽祭委嘱作品/世界初演:2004年3月20日 ベルリン・フィルハーモニー シルヴァン・カンブルラン(指揮)、南西ドイツ放送交響楽団

音楽的なモデルをスクリャービンの《プロメテウスの詩》(交響曲第5番)に求めたという力作。大オーケストラとエレクトロニクス(シンセサイザー)が渾然一体となり、驚くほど多彩な音響があふれる。特に終盤に現れる巨大な音塊の波は聴く者を圧倒する。


★Tristan Murail オフィシャルサイトの「Discography」ページでは、今回の演奏曲を含む代表作の試聴ができます。
http://www.tristanmurail.com/fr/discographie.html

スペクトル音楽とは?

ごく簡単にいえば、ある音あるいは音響を構成する倍音(いわば音の成分)をスペクトル解析し、音色の組織化を図り、さらに一定の理論のもとにそれらを合成するなどの方法により音楽作品を創作する作曲技法を指し、その開拓者はフランスのジェラール・グリゼー Gérard Grisey(1946-1998)とトリスタン・ミュライユとされる。彼らがこの手法を思い至ったのは、イタリアの作曲家ジャチント・シェルシ Giacinto Scelsi(1905-1988)の、一つの音を構成する倍音に耳をこらす創作法に影響を受けたためと言われる。

典型的な例の一つは、鐘の音の倍音解析・再合成で、ミュライユの代表作《ゴンドワナ》の冒頭では、オーケストラによりそれらの合成音が鳴り響く。あるいは基になる一つの音に倍音が加えられていくという手法も代表的で、グリゼーの《音響空間》などはその傑作として知られている。これらの作品の最大の特徴は、精妙な音響の推移にあると言え、“トータル・セリエリズム”などそれまでの現代作曲法に理論的技術的限界を感じていた若い世代の作曲家の中には、グリゼーやミュライユらの音楽に音響面における新しい可能性を見出した者も多く、1970年代後半以降の現代作曲界に“スペクトル楽派”と呼ばれる大きな潮流を作り出していった。言うまでもなく、ここには音響学や音響心理学、そして何よりもコンピュータをはじめとするテクノロジーの発達が大きく寄与している。

なお、“スペクトル音楽(楽派)”という言葉は、グリゼーやミュライユの同僚でもある作曲家ユーグ・デュフール Hugues Dufourt (1943-)が1979年に発表した、イティネレールの作曲家たちの美学と意図に関する論文『スペクトル音楽 Musique spectrale』に由来する。もっとも、グリゼーもミュライユもこの呼び名を好んではいなかったそうである。

オンド・マルトノとは?

1928年に、フランス人電気技師モーリス・マルトノが発明した電気楽器。オンド(ondes)とはフランス語で電波の意味。2つの周波数の差を利用して音を出す原理はテルミンなどと同じで、発するのは単音のみだが、右手で鍵盤のほかに本体前面に張られた糸(リボン)を操作して音程を操作し、左手でトゥッシェと呼ばれる音色や強弱を選択するスイッチを操作して演奏することで運動性や機能性、完成度を高め、さらに特殊なスピーカーなどを組み合わせ、きわめて魅力的な音響効果を発揮する独奏楽器に仕立てたのは、チェリストでもあったマルトノならではの工夫と言えるだろう。

最も有名なメシアンの《トゥーランガリラ交響曲》(1946-48)をはじめとするクラシックや現代音楽のみならず、イギリスのロックグループ「レディオヘッド Radiohead」が多用していることなどでも知られ、さらにNHK特集『未来への遺産』テーマ音楽(武満徹 作曲)、NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』テーマ音楽(池辺晋一郎 作曲/原田節 演奏)、あるいはアニメ映画『ケロロ軍曹2』挿入歌「メールのうた」(鈴木さえ子 ほか作曲/原田節 演奏)など、私たちの身近でもそのサウンドはしばしば聞こえてくる。

[チケット情報]

全席指定:一般 ¥3,000 学生 ¥1,000(税込)

東京オペラシティArts友の会優先発売日:2010年2月19日[金]
一般発売日:2010年2月26日[金]

東京オペラシティチケットセンター

[電話]03-5353-9999(10:00〜18:00/月曜定休)

チケットぴあ 0570-02-9999 http://t.pia.jp/
(Pコード:346-727)

e+ http://eplus.jp/

  • *東京オペラシティArts友の会会員特典:チケット料金10%割引
  • *就学前のお子様の同伴・入場はご遠慮ください。
  • *ネットオークション等での営利目的の転売はお断りします。