家の外の都市の中の家

イントロダクション

密集した家々の間に建つ建築家夫婦の住居兼オフィス。敷地に積み木を点在させたかのような集合住宅。隣人の気配をかすかに感じる開放的な住宅ユニットの連なり。
世界的に活躍する日本の建築家3組[アトリエ・ワン、西沢立衛、北山恒]が考えた「家」は、いずれも東京という都市の中に計画され、敷地と周辺の条件をふまえて、まわりと関係をつくろうとする建築です。ひとたびドアを閉めると孤立しがちな大都市の中で、個を保ちながらも都市とつながりを持つことは可能なのでしょうか。

東京という都市は、ヨーロッパの街並みに見られるような連続する建物でつくられた都市ではなく、ひとつひとつ独立した建物の集合体として構成されています。都市の小さなパーツともいえる建物が、それぞれに建て替えをくり返して変化する都市の体系は、1960年に発信された日本発の建築理念・メタボリズムが提唱した「新陳代謝しながら変化し成長する建築/都市」を体現しているともいえるでしょう。

このような都市・東京では、資本権力のアイコンとしての建築が主役の一方でありながら、「住宅」という生活を主体とした静かな要素の集まりが壮大な都市の変化を生み出しています。第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館で行われた「Tokyo Metabolizing」の帰国展となる本展では、アトリエ・ワンの〈ハウス&アトリエ・ワン〉、西沢立衛の〈森山邸〉を実物の約1/2サイズという身体的なスケールで制作するとともに、東京展独自の企画としてコミッショナー・北山恒の〈祐天寺の連結住棟〉が加わり、つながりを誘う新しい建築を紹介します。また、変化を続ける東京という都市の行方を指し示す〈あたらしい都市のインデックス〉の展示も加わります。本展は、私たちの生活するこの東京の中で、ともに生きるための「家」のかたちを考える機会となることでしょう。

〈第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館 展示風景〉 2010
写真提供:国際交流基金
photo: Andrea Sarti/CAST1466

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東京オペラシティアートギャラリー アーツシャワー2011