6+ ANTWERP FASHION アントワープ・ファッション展

[展覧会]BOX型のプラットフォーム上に、世代ごとのデザイナーの作品が並ぶ

BOX1 アントワープ王立美術アカデミー、ファッション学科

ファッション学科には世界各国から50〜60人の学生が入学し、1年次ではスカートとドレスと実験的な服を制作。2年次は歴史衣装1点を選んで、リサーチを重ねてレプリカを制作し、そこから発展させた5点のコレクションを完成させます。3年次は民族衣装1点とそれをベースとする8体のコレクションを、4年次では自由テーマで12体のコレクションを制作します。

現在のアカデミーのカリキュラムは、専門的知識の習得よりも、創造性、オリジナリティー、革新性の展開を目指しています。卒業生たちは、アカデミーの4年間を、自分とは何かを発見することを学ぶトレーニング期間だったと振り返っています。
「アントワープ・シックス(アントワープの6人)」が修了した1981年以来、修了ショーは、ロング・ルームで開催され、学年行事のなかで最も重要なものに位置づけられてきました。たとえば、2006年の修了ショーは3日間にわたって行われ、入場者は6000人以上を数え、このなかには世界中のメディア、バイヤー、製造業者が含まれます。本展では2008年6月のショーで発表された卒業年度の学生およびまだ在学中の学生のコレクションを特別にご紹介します。近い将来、彼らのブランドが日本でも注目されるかも知れません。

1.
アカデミーのロング・ルームでのショー、1980年代(撮影者不詳)

2.
パリでひらかれたアカデミーのショーのポスター、1991年、デザイン:パウル・ブーデンス(撮影:ロナルド・ストープス)

3.
アカデミーのファッション学科3年生、1977年、学生名不明(MoMuアーカイヴより)

BOX2 「アントワープ・シックス(アントワープの6人)」とメゾン・マルタン・マルジェラ

1981年、停滞していたベルギーの繊維産業の活性化を目的として、5か年間計画「テキスタイル・プラン」がスタートし若手デザイナーのためのコンクール「金の糸巻き賞」が創設されます。政府の助成のもとに若手デザイナーに活躍の場を与える機会が設けられ、また、それまで保守的だった製造業者側にも自国のデザイナーに対する信頼が芽生えていきます。

1988年の英国デザイナーショーでの成功によって、「アントワープ・シックス」の名前は、『ELLE』『i-D』などの影響力のあるファッション誌を通じて国際的に知られるようになり、アントワープ・ファッションの一大転換点となりました。一人一人の名前をどう発音してよいかわからないために付けられた「アントワープ・シックス」という名称でしたが、発音の難しさは決して彼らの国際的成功の妨げにはなりませんでした。また、同年、マルタン・マルジェラがパリでデビューします。やがて「アントワープの6人」は、それぞれ個人名によってパリでコレクションを発表し、国際的なメディアの注目を集めていきました。

1.
アン・ドゥムールメースター、1989年(撮影:パトリック・ロベーン)

2.
ドリース・ヴァン・ノーテン
展示風景、フランダース議会、ブリュッセル、2007年(撮影:パット・ヴェルブリュッヘン) *1999年春夏コレクション

3.
ワルター・ヴァン・ベイレンドンク&ディルク・ヴァン・サーヌ
展示風景、フランダース議会、ブリュッセル、2007年(撮影:パット・ヴェルブリュッヘン)
*(左から2点)ベイレンドンク:2000-2001年秋冬コレクション、1997年春夏コレクション
*(右から3点)ヴァン・サーヌ:1991年春夏コレクション、1998年春夏コレクション、2007年春夏コレクション

BOX3 新世代のデザイナーたち

アントワープ・ファッションの第二の波を生んだ仕掛け人は、皮肉なことに、アカデミーで学んだ経験のないラフ・シモンスでした。力のあるコンセプチュアルな第二世代 ─ ユルヒ・ペルソーンス、リーヴ・ヴァン・ホルプ、A.F.ヴァンドヴォルスト、ヴェロニク・ブランキーノ、パトリック・ヴァン・オンメスラーゲ、ブルーノ・ピーテルス、ハイダー・アッカーマン、ベルンハルト・ウィルヘルム、クリス・ヴァン・アッス ─ は、デビューを果たすと直ぐアントワープ・ファッションの前衛的な性格を継承する活躍を見せました。

1980年代末には前衛的と見なされたアントワープのデザイナーたちの服も、今日では一般に受け入れられるようになりました。独自のメゾンで成功を収めているデザイナーもいれば、例えば、「Dior Homme」のクリス・ヴァン・アッスや、「Hugo」のブルーノ・ピーテルスのように、大ブランドで活躍するクリエイティヴ・ディレクターもいます。

他方、アカデミーに学ぶ学生の国籍はますます多種多様となり、2009年には25ヶ国以上の国の学生が学んでいます。国籍こそ違うものの、アカデミーで習得した価値観と仕事の方法によって、彼らは、未来のアントワープ・ファッションを担うデザイナーといえるでしょう。

1.
ヴェロニク・ブランキーノ
展示風景、フランダース議会、ブリュッセル、2007年(撮影:パット・ヴェルブリュッヘン) 2000-2001年秋冬コレクション

2.
A. F. ヴァンドヴォルスト
展示風景、フランダース議会、ブリュッセル、2007年(撮影:パット・ヴェルブリュッヘン) 2001年春夏コレクション

3.
ベルンハルト・ウィルヘルム
展示風景、フランダース議会、ブリュッセル、2007年(撮影:パット・ヴェルブリュッヘン) 2001-2002年秋冬コレクション

4.
ラフ・シモンス
展示風景、フランダース議会、ブリュッセル、2007年(撮影:パット・ヴェルブリュッヘン)
*(左から)1999-2000年秋冬コレクション、2000-2001年秋冬コレクション、1998-1999年秋冬コレクション

5.
リーヴ・ヴァン・ホルプ
展示風景、フランダース議会、ブリュッセル、2007年(撮影:パット・ヴェルブリュッヘン) 2001年春夏コレクション


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東京オペラシティアートギャラリー
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