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2015.09.25

音楽ジャーナリスト後藤菜穂子が訪ねる
ラハティ・シベリウス音楽祭2015
(パート1)

2ヶ月後に迫った、オッコ・カム指揮 フィンランド・ラハティ交響楽団による「シベリウス交響曲サイクル」
9月上旬、ラハティ響の本拠地であるシベリウス・ホールにて行われた「シベリウス音楽祭」の模様を、音楽ジャーナリスト 後藤菜穂子さんにレポートいただきました。

シベリウス好きにとっては、ラハティ交響楽団といえば数々のシベリウス作品のレコーディングでおなじみのオーケストラであり、「シベリウス・オケ」のイメージもあるぐらいだ。さらに、ラハティ響は毎年初秋にこの大作曲家の音楽に特化した「シベリウス音楽祭」を開催しており、今年が第16回になるという。

作曲家生誕150年記念の今年こそ、ぜひともこの音楽祭でラハティ響のシベリウスを聴こう、と決意したのはよいものの、ラハティって一体フィンランドのどこにあるの?どうやっていくの?シベリウスと縁のある土地なのだろうか?そもそもラハティ響がなぜシベリウス・オケとして知られるようになったのだろう?そんな疑問をお持ちの方はきっと私だけではないと思うので、そうした点にもお答えしながら、今回のラハティ訪問についてご紹介しよう。

ラハティ市はヘルシンキの北東約100km、ヴェシヤルヴィ湖のほとりに位置する中規模都市(人口約10万人)。首都ヘルシンキからは電車で約1時間、または高速バスもあり、音楽祭期間中はヘルシンキから音楽祭専用のシャトルバスも出ている。一般的にはノルディック・スキーの国際大会が開かれる地として有名で、次は2017年に開かれるという。
「ラハティ」という言葉はフィンランド語で湾、入江という意味で、ヴェシヤルヴィ湖の入江に位置するから、という単純なネーミングだそうだ。生前のシベリウスとは直接のつながりはないが、唯一の縁といえるのは、作曲家が若い頃(1895、96年)にヴェシヤルヴィ湖に面した近くのホローラの町で家族と夏休みを過ごし、その際に鉄道でラハティまで来たことだという。

そうしたラハティのオーケストラがどうしてシベリウス・オケとして知られるようになったのか?その立役者は、ラハティ響の首席指揮者を長らく務めたオスモ・ヴァンスカであった。ラハティ響は1910年設立で、地方オーケストラとして地道に活動していたが、ヴァンスカ時代(1988〜2008年)に急速に実力を伸ばし、BISとのレコーディングを通して国際的に注目される楽団に成長したのであった。その結果、それまで本拠地としていた旧コンサート・ホール(600席)が手狭になり、新しいホールを建てるべきだとヴァンスカが提案、それを市が街おこしのチャンスと捉えて全面的に協力したのである。そして、市の中心部からは少し離れているが、湖のほとりの廃工場を活用して、そこにコンサートホールと会議場を兼ねた建物を建設することになった。
ホールを設計する際には、とにかく音響を最優先し、しかもフィンランドの木工業界の協力を得て、ホールになるべく未加工の木材を使うデザインにしたという。ホール内にはもちろん、ホワイエにも木の柱や天井の木組みなど木材がふんだんに使われていて、ぬくもりのある建物となっている。ホワイエはガラス張りで、湖を見渡せる。

 
シベリウス・ホール外観:既存の建物を活用し、ホール部分を新設 休憩時に湖の眺めを楽しむ人々

新ホール(1229席)は2000年に開館し、作曲家の家族の許可を得て「シベリウス・ホール」と命名された。ラハティ響のそれまでのシベリウスの音楽に対する貢献が認められた結果だという。また同時に、この年からシベリウス音楽祭が始まった(ラハティ響の主催で、首席指揮者が芸術監督を務める)。したがってどちらも今年15周年である。
今回、ホールの案内をしてくれたオーケストラの事務局長のテーム・キルヨネン氏は、「シベリウスの名にふさわしいすばらしい音響のホールであることを何よりも誇りに思っています」と強調する。さらに彼が教えてくれたのは、ホワイエの天井に埋め込まれたライトがシベリウスの生まれた日(1865年12月8日)の星座の位置を再現しているということ。なんとロマンのあるデザインだろう!

 
シベリウス・ホール内部:木の柱が特徴的なホワイエ 音楽祭の垂れ幕のかかったホール

© Juha Tanhua/写真提供:フィンランド・ラハティ交響楽団

このように最高の本拠地ホールを得たラハティ響だが、ヴァンスカが2008年に退任してからは、ユッカ=ペッカ・サラステが3年間芸術アドバイザーを務め、そして2011年秋よりフィンランド指揮界の重鎮であり、シベリウスをはじめ北欧のレパートリーに定評のあるオッコ・カムを首席指揮者に迎えた。カムが就任した2011年の秋の音楽祭ではさっそく3日間でシベリウスの交響曲サイクルを取り上げ、ヴァンスカのドラマティックなスタイルとは異なる、より厳かで思慮深く、ゆったりと暖かみがあり、音の広がりを重視したアプローチをシベリウス・ファンに強く印象付けた。今回の音楽祭で出会った、毎年聴きに来ているという英国人のファンは、この年のカムのサイクルは近年の音楽祭の中でも出色の名演だったと語ってくれた。また、この時の演奏を聴いたBISレコードのフォン・バール社長がその場で、カムとラハティ響のコンビの全集も出すことを即決し、3年かけて同ホールで収録、この秋リリースされた。
それ以後の音楽祭では、2012年は「愛国主義者と神秘主義者としてのシベリウス」というテーマ、2013年はシベリウスの舞台音楽を取り上げ、そして昨年は「オリジナル稿」に焦点を当て、交響曲第5番やヴァイオリン協奏曲などの初稿が演奏された。

ラハティのシベリウス音楽祭の最大の特徴は、シベリウスの音楽しか演奏しないこと。その点では、バイロイト音楽祭がモデルなのだとキルヨネン氏は話す。実際、バイロイト同様、海外からのファンが多く、シベリウス音楽祭のチケットの売上げのなんと40パーセントが海外からなのだそうだ。このようにたった15年のうちに、世界中のシベリウス・ファンの聖地となったのが、ラハティのシベリウス音楽祭なのである。

(パート2に続く)



[関連情報]



BISレーベルによるプロモーション動画(オッコ・カムのインタビューや録音風系など)



公演情報

2015年11月26日[木]19:00 コンサートホール
2015年11月27日[金]19:00 コンサートホール
2015年11月29日[日]15:00 コンサートホール

オッコ・カム指揮 フィンランド・ラハティ交響楽団
生誕150年記念 シベリウス交響曲サイクル


公演詳細情報へ

[出演]

指揮:オッコ・カム
ヴァイオリン:ペッテリ・イーヴォネン
フィンランド・ラハティ交響楽団

[曲目]

11/26[木]
  • シベリウス:交響曲第1番 ホ短調 op.39
  • シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 op.43

11/27[金]
  • シベリウス:交響曲第3番 ハ長調 op.52
  • シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
  • シベリウス:交響曲第4番 イ短調 op.63

11/29[日]
  • シベリウス:交響曲第5番 変ホ長調 op.82
  • シベリウス:交響曲第6番 ニ短調 op.104
  • シベリウス:交響曲第7番 ハ長調 op.105


[料金](全席指定・税込)

【3公演セット券】S:¥18,000(残席僅少) 【1回券】各日 S:¥8,000 A:¥6,000 B:¥4,000


■チケットのお申し込み
東京オペラシティチケットセンター 03-5353-9999

電話 10:00〜18:00/店頭 11:00〜19:00/月曜定休



他、プレイガイド

*セット券は、東京オペラシティチケットセンター(電話 03-5353-9999・店頭)のみの取り扱い。(「インターネット予約」での取り扱いはございません。)
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*曲目、出演者等は、変更になる場合がございますのでご了承ください。
*就学前のお子様の同伴・入場はご遠慮ください。
*ネットオークション等での営利目的の転売はお断りします。

公演に関するお問い合わせ:東京オペラシティ文化財団 03-5353-0770

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