Interview:B→C 景山梨乃(ハープ)

現在、東京交響楽団首席ハープ奏者として活躍する景山梨乃。ハープを始めたきっかけや留学時代のこと、物語・文学・詩を背景に持つさまざまな作品を並べた今回のプログラムについてなど、メールインタビューで伺いました。

景山さんがハープを始めたのはいつ頃ですか?

小学校3年のときです。それ以前に習っていたピアノと比べるとハープは人口も少ないし「これならマイペースに続けられそうだ」と。
今振り返ると、両親がプロの演奏家だったこともあり、10代の頃は当たり前のようにコンクールに出場し、音高・音大を目指していたなあと思います。中学生以降は感銘を受けていたイザベル・ペラン先生のレッスンを受け続けていました。ペラン先生は非常に論理的で、どんな疑問にも言葉や演奏で答えてくださり、とくに基礎的なことや身体の使い方を徹底的に教えていただきました。先生はパリのエコール・ノルマル音楽院で教えていらっしゃったので、東京藝大2年の夏にパリへ留学することにしたのです。

エコール・ノルマル音楽院では2011年に最高ディプロムを審査員満場一致と特別評価を受けられ、その後ベルリンで研鑽を積まれました。

パリ留学2年目のとき、ベルリン・フィルのソロハープ奏者マリー=ピエール・ラングラメ先生のレッスンを受ける機会がありました。それはハープへの向き合い方や考え方など、今までの概念が全て取り払われるような経験で、この人のもとで勉強したいと強く感じました。ラングラメ先生に教えて頂くにはベルリン芸大か、ベルリン・フィルのカラヤンアカデミーに入るかの二択があり、私は運良く両方の場で師事できることになり、ベルリンへ移りました。

そして2014年、東京交響楽団への入団を機に帰国され、2016年からは首席奏者を務めていらっしゃいます。

初めてのプロオーケストラ演奏経験がカラヤン・アカデミー生として参加したベルリン・フィルだった私にとって、国内オーケストラとの演奏経験も当然無く、それはそれは不安いっぱいに始まった東響生活でしたが、温かく迎えてもらいました。東響の出す音色も自分の理想とするものと近いため、その部分のストレスが無いのは大きいと感じています。

それでは今回のリサイタルについて。物語・文学・詩を背景に持つさまざまな作品が登場しますが、その中の一つ、カプレ作品は東響の仲間達との共演です。

ハープという楽器にとって、バッハからコンテンポラリーへと時を紐解く中で重要な曲の一つがカプレの《幻想的な物語》です。エドガー・アラン・ポーの『赤死病の仮面』という物語を基にしていますが、それまでには無かったハープの表現方法、それも何か物を使ったりするわけではなく、(一箇所、手で響板を叩くところはありますが)単純に指で弾くということだけで可能性を広げたのは、カプレの大きな功績だと思います。弦楽四重奏を伴うことでより一層、物語のおどろおどろしさや戦慄の表現が深まっています。
この曲を選曲するにあたり、まず頭に浮かんだのが東響コンサートマスターの水谷晃さんでした。圧倒的な音楽性と少年のような好奇心を持ち、尚且つ強力なリーダーシップがある水谷さんにぜひこの曲を一緒に演奏していただきたいと、出演をお願いしました。水谷さんをはじめとする東響の心強いメンバーとの共演により、この曲に取り組むことへの意欲が一層高まっています。

バッハの《シェメッリ歌曲集》とブリテン作品は、テノールとハープの共演です。

歌とハープの相性は良く、この組み合わせは、オペラのアリアも含めれば多くの曲を見つけることができます。しかしバッハの歌曲となると、ハープで演奏をするという発想は今まではありませんでした。2015年に東響でストコフスキー編の《来たれ、甘き死よ》を演奏し、その美しさがずっと心に残っていましたが、B→Cへの出演にあたりバッハの曲を模索していた時にふと思い出し、「これは歌+ハープでも良いのでは?」と挑戦することにしました。
さらに歌とハープの相性の良さを引き出しているのがブリテンです。声という最もシンプルな楽器から生まれる歌、そしてハープも指で弦を弾き音を出すというシンプルな構造、この組み合わせでしかできない幅広い表現を存分に活かしています。《聖ナーシサスの死》はテノールとハープによる珍しいオリジナル曲。共演者の鈴木准さんはブリテンのスペシャリストでもあるので、お力を借りて作品の世界を突き詰めていく過程も非常に楽しみです。

今回、新作以外で初めて演奏される曲は?

上述のバッハ《シェメッリ歌曲集》、ブリテン、そしてギリシャ神話を題材にしたマリー・シェーファーの《アリアドネの冠》も初挑戦です。
《アリアドネの冠》を聴衆として耳に(というよりも、目に)した際のワクワク感は、実際に楽譜を見た時、一層高まりました。そう、この曲はハープ奏者が足に鈴をつけ、打楽器も演奏するのです。無数の打楽器にハープが囲まれているステージを想像するだけでワクワクしてきます。

新作を委嘱した坂東祐大さんは高校時代からの知り合いだそうですね。

今や若手作曲家のスターである坂東さんですが、私にとっては藝大附属高時代の後輩でありお喋り友達。「現代音楽を聴くのは難しいという人がいる」という話をしていた際、彼が「例えばオーケストラの中から聴いたことのない音が聴こえてきて、それがどのように奏でられているか? そこで興味を持つだけでも現代音楽の楽しみ方なんだ」と語っていたことは、当時高校生の自分の心に妙にスッと入り、今でもたまに思い出す言葉です。
今回の新作に向けた楽器を交えての打ち合わせでは、まさに「どうやってこの音が出ているの?」を探求する機会にもなり、お客さまにそれを体験していただくことが、楽しみで仕方ありません。

最後に、お客様へメッセージをお願いします。

私自身、一聴衆として何度も足を運んでいますが、数あるリサイタルの中でも「人」というものの魅力に触れられるのがB→Cの特徴だと考えています。演奏者自身の思いが詰まったプログラム、バッハからコンテンポラリーまでの作曲家、人から人への時代の流れ、そしてそれを今を生きる演奏家が体現する、聴衆が体験する。リサイタルシリーズでありながらそれぞれが唯一無二のコンサートとなります。 ぜひ会場でその時間を一緒に過ごせたら嬉しく思います。

■公演情報

リサイタルシリーズ
B→C バッハからコンテンポラリーへ

223 景山梨乃(ハープ)

2020年11月10日[火]19:00
リサイタルホール

[共演]

  • 鈴木 准(テノール)*
  • 東京交響楽団弦楽四重奏 **

[曲目]

  • ・フォーレ:塔の中の王妃 op.110
  • ・J.S.バッハ:組曲 変ホ短調 BWV996(原曲:リュートのための組曲 ホ短調)
  • ・シェーファー:アリアドネの冠(1979)
  • ・坂東祐大:3秒(2020、景山梨乃委嘱作品、世界初演)
  • ・J.S.バッハ:《シェメッリ歌曲集》から
    「エホヴァよ、汝に我は歌わん」BWV452 *
    「来たれ、甘き死よ」BWV478 *
  • ・ブリテン:カンティクル第5番《聖ナーシサスの死》op.89(1974)*
  • ・カプレ:エドガー・アラン・ポーの『赤死病の仮面』による《幻想的な物語》**

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[料金](税込)

全席自由:¥3,000

[チケット情報]

東京オペラシティチケットセンター
03-5353-9999(電話 10:00~18:00/店頭 11:00~19:00/月曜定休)

インターネット予約

コンサート情報

リサイタルシリーズ
B→C バッハからコンテンポラリーへ

223 景山梨乃(ハープ)


2020年11月10日[火]19:00
リサイタルホール

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