エッセイ:ダニエル・ハーディング指揮 マーラー・チェンバー・オーケストラ 滑舌良くシャキッと決まる音楽創り ─ ダニエルさんとの再会を心待ちに

マーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)が、終身桂冠指揮者ハーディングの指揮で、東京オペラシティに久々に登場します。MCOメンバーとしてハーディングとも共演を重ね、今回のツアーにも参加するオーボエ奏者、吉井瑞穂さんにエッセイをお書きいただきました。

1999年の夏、フランス、エクサンプロヴァンス音楽祭の『ドン・ジョヴァンニ』で初めてダニエル・ハーディングさんの指揮で演奏して以来、コンサートやオペラで数えきれないほどご一緒してきました。余りにも多くの楽しい思い出やエピソードがありすぎて、どこから始めてよいものか…すごく贅沢な迷いですが、まずは出会いのエピソードから書き綴ってみることにします。

最初のリハーサルのことは、今でも鮮明に記憶に残っています。序曲のテンポが自分の知っているそれの少なくとも2倍以上だったのです ──「何これ?アンダンテって、こんなにスッキリと速いものなの?!」「アラ・ブレーヴェだから1小節を2つに振っているけれど、まさかこれは倍の4つ振りなのだろうか?!」
(少し説明を加えますと)以前は、『ドン・ジョヴァンニ』のようなトラディショナル系のレパートリーにおいて、いわゆる“暗黙の了解”的なテンポが存在していました。しかしながら、少しずつピリオド奏法を現代楽器での演奏でも取り入れることが日常的になってきていた当時、「新しいテンポのアイデア」がどのシーンでも飛び交うようになっていたのです。
今あらためてこのオペラの序曲のスコアを見て思うのは、我々がダニエルさんと演奏した時のテンポは、まったくもって「自然なテンポの選択」だった、ということです。
当時、ダニエルさんは何をもってこのテンポ設定にしたのだろうか…と、今もふと考えます。他のレパートリーのテンポ設定も、当時は「若いからテンポが速めなのね」と言われがちでしたが、今思うと「若かったから」だけでないような気がするのです。お手本とする指揮者や演奏などもあったとは思うのですが、最終的には彼の天性の「直感」が決めたのだと、私は確信しています。

© Julian Hargreaves

当時からも言われていますが、彼はやはり「天才」なんですね。天才少年も今年43歳。しかしながら彼の「天才性」はやはり稀に見るものです。
神様はすべての人に様々な才能を与えてくださっていますが、ダニエルさんには指揮の才能を、他の人より多めにお与えになったのでしょう。一方で、その才能が時には重荷になったり、出来すぎてしまうがための葛藤みたいなものもあるのではないかな……と見受けられる時期もありました。才能というのは天からの「贈り物」であると同時に、人生の「課題」でもあり得ます。

才能を料理の食材に例えてみると、美味しい食材が揃っている環境で、それをどう調理し、どのようなボリュームに調節して、お皿にどのようにディスプレイするか、が料理の仕上がりに影響するものですよね。ご一緒するたび、ダニエルさんの指揮の滑舌の良さに魅せられ、シャキッと決まる音楽創りは、超美味な創作料理を頂いているような気持ちになります。
今回のMCOツアーでダニエルさんと演奏するのは、2年以上ぶり! 毎月のようにご一緒した時期もあったので、本当に懐かしいです。彼の指揮の大ファンでもある私は、このモーツァルトの最後の3つの交響曲を彼がどのように調理なさるのか楽しみでなりません。2019年3月14日、東京オペラシティでどんなマジカルな瞬間が生まれるのでしょうか。
「“いま”のダニエル・ハーディングにしか振れないモーツァルト」を、皆様と共有させていただくことを心から楽しみにしております。

吉井瑞穂(オーボエ奏者)

©Satoko Imazu

甘い音色と豊かな音楽性で世界の聴衆を魅了する国際派オーボエ奏者。
2000年からマーラー・チェンバー・オーケストラの首席オーボエ奏者として、欧州を拠点に活動している。アバドをはじめ、ブーレーズ、ハーディングら世界的巨匠の指揮で演奏を重ねており、欧州主要音楽祭に出演。ルツェルン祝祭管弦楽団メンバー及び欧州の主要オーケストラで客演首席奏者を務める。室内楽共演者にテツラフ弦楽四重奏団、レイフ・オヴェ・アンスネス、マーティン・フロストなど。ニューヨークのマンハッタン音楽院、欧州を中心にマスタークラス教授として招かれ、後進の指導にあたっている。
東京藝術大学非常勤講師。

東京オペラシティArts友の会会報誌「tree」Vol.130(2018年10月号)より

■公演情報

ダニエル・ハーディング指揮
マーラー・チェンバー・オーケストラ”

2019年3月14日[木]19:00
会場:コンサートホール

[出演]

ダニエル・ハーディング(指揮)
マーラー・チェンバー・オーケストラ

[曲目]

モーツァルト:
・交響曲第39番 変ホ長調 K543
・交響曲第40番 ト短調 K550
・交響曲第41番 ハ長調 K551《ジュピター》

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[料金](全席指定・税込) 残席僅少

S:¥15,000 A:¥12,000 B:¥9,000 C:¥7,000 D:¥5,000(B〜D席は予定枚数終了)

[チケット情報]

東京オペラシティチケットセンター
03-5353-9999(電話 10:00〜18:00/店頭 11:00〜19:00/月曜定休)

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コンサート情報

ダニエル・ハーディング指揮
マーラー・チェンバー・オーケストラ


2019年3月14日[木]19:00
会場:コンサートホール

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