インタビュー オッコ・カム シベリウス交響曲サイクルを語る「ラハティ響はシベリウス演奏に必要なすべてを身につけています」

2013年6月29日「ブエノスアイレスのマリア」公演のカーテンコール
(左から、黒田亜樹、1人おいて、アメリータ・バルタール、小松亮太、レオナルド・グラナドス、鬼怒無月)

熱狂的なスタンディング・オベーションを呼び起こした「ブエノスアイレスのマリア」(2013年6月29日・東京オペラシティ コンサートホール)。この公演の立役者たち、アメリータ・バルタールとレオナルド・グラナドスがふたたび東京オペラシティに集結します。
小松亮太(バンドネオン)と、前回の公演に続き今回もアンサンブルのメンバーとして参加する黒田亜樹(ピアノ)、鬼怒無月(ギター)の三氏に、「マリア」公演の思い出、今回の公演の聴きどころ等について答えていただきました。

2015年12月 メールインタビューにて

  • 「ブエノスアイレスのマリア」の思い出

  • ■2011年に一度公演中止になり、2013年に満を持して開催した「ブエノスアイレスのマリア」公演の思い出についてお話しください。
  • 小松:何と言っても東日本大震災後の特別な感慨がありました。当初の公演予定(2011年3月)から2年間ずっと「ブエノスアイレスのマリア」が頭の片隅にあって……本番は中止になったにも関わらず余震に耐えながらリハーサルだけをやったことや、何のために音楽をやっているのかを自分自身に問い直した日々が思い出されて、2013年の仕切り直し公演が終わった瞬間は普通の感激とは違いました。当初出演予定だったベースの松永孝義さんが2012年に亡くなったことにも改めて感じ入りましたし。
  • 黒田:私は震災翌日に緊張状態でイタリアから帰国し、ニュースにおどろいて被災した知人へ連絡をとりながら、リハーサルに行きました。小松亮太さんは20年近く前からの仲間ですが、空港から直行で東京オペラシティのリハーサルルームに入ると、「亜樹さん、帰国お疲れ様です」といわれてすぐリハーサルが始まったのをおぼえています。厳しい目でした。今音楽などやっていていいのか、この状況で音楽に何の力があるのか、と自分に問いかけながらのリハ―サルでした。メンバー皆そういう気持ちがあったのではないかと思いますが、敢えてなにも語りあえない緊張感がありました。リハーサル二日目にやはり震災の影響で公演中止が決まり、いつかまた必ず、と約束して解散しました。アルゼンチンの移民たちの望郷や悲哀、タンゴへの愛と革命をブエノスアイレスという街に照らして表現した作品と、新宿という街が私の中で重なって、重く静かに響き続けていました。その二年後、今度はマリア初演者であるアメリータ・バルタールさんの来日が決まりました。私自身はタンゴにピアソラに魅了されてからの20数年間、何度となくピアソラと彼女の初演時のLPやCDを聴いてきたので、今度は自分が一緒に音を出せるのだと思うと鳥肌が立ちました。二年前から種火となって燃えていたものが、アメリータさんの人生そのもののような声によって、呼び起されました。小松亮太さんがはっきりした解釈と強い意志でバンドの音をまとめて、この時のソリスト、アメリータ、レオナルド、ギジェルモの3人がそこにすっと乗って、リハーサルは私たちも彼らもお互いが驚くほどスムーズに進みました。そういう流れになるだけの特別なエネルギーが全員にあったのだと思います。
  • 鬼怒:あれは僕の音楽人生の中でも最もドラマチックな経験の一つです。
    震災の影響で中止となったコンサートの中では僕の知る限り中止の決定が相当遅かったものだと思います。
    多くの音楽家が自分の仕事であり、また精神の拠り所である音楽を演奏する機会をいきなり失って茫然自失していたあの時に、結局あの時点では中止となったとは言え、メンバーが集まって《ブエノスアイレスのマリア》のリハーサルが出来たと言う事、あれは自分にとって、そしておそらくバンドのメンバー全員にとっても救いだったと思います。
    あのスタンディング・オベーションはもちろん僕達の演奏に対するものでもあったかもしれないですが、お客様も含めたマリア公演に関わった人全てにとって、震災からのひとつの復興を実感するものだったと思っています。
  • ジャンルを超えたポピュラリティと圧倒的なオーラを持つバルタール、
    《エル・タンゴ》の世界を描き出す最高の役者でもあるグラナドスとの再共演

  • ■再共演するアメリータ・バルタールさんとレオナルド・グラナドスさんの魅力について教えてください。
  • 小松:《エル・タンゴ》はグラナドス以上の役者ぶりで歌い、演じられる人はいないでしょう。アメリータさんは……あんな声の人は世界のどこにもいない(笑)。ピアソラが惚れた女なんだから。
  • 黒田:アメリータさんはとてもチャーミングな方で、私がイタリア語で話しかけるとピアソラとイタリアに住んでいた時の思い出をいろいろ話してくれました。タンゴ、ロック、ポップスとあらゆるジャンルを歌ってきた方で、すべてのジャンルを超えたポピュラリティと、パーソナリティそのものの魅力が溢れる、素晴らしいアーティストです。ベネズエラ出身のレオナルドさんは本当に温かいお人柄で、歌声にその温かさ深さがにじみ出ていると思います。レオナルドさんとは今回演奏する《エル・タンゴ》を2012年に共演しましたが、絶妙な緊張感と圧倒的な存在感でボルヘスの怪しい世界を表現しました。また彼の声を感じながら演奏できるのは楽しみでなりません。
  • 鬼怒:アメリータさんはとにかく圧倒的な存在感!!アンコールで《受胎告知のミロンガ》をステージ中央で歌ったときの格好良さと来たら、最高のロックシンガーのバックをつとめている気分でしたね。またあの人のオーラを感じられると思うと、本当にわくわくします!
    レオナルドさんは中止になった公演の時もいらっしゃって、あらゆる意味で僕ら日本人チームをサポートしてくださいました。その実直な飾らない人柄そのままに本当にピュアな歌を歌う人です。
    レオナルドさんと僕のギターのデュオで始まる《カリエーゴのミロンガ》はマリアの中でも最も印象に残った時間の一つなので、また共演できる事を心から嬉しく思います。
  • 2013年6月29日「ブエノスアイレスのマリア」公演より
    © 大窪道治

  • 古典タンゴを知り尽くした小松亮太と最強のメンバーによる「タンゴの歌」

  • ■タンゴ・オルケスタ・エスペシアルはどのようなメンバーが集まっているのですか?
  • 小松:タンゴをやるからにはタンゴの素養をしっかりマスターした人でなければ困る。でもピアソラの大曲をやるならクラシックやジャズやポップスの素養も兼ね備えているメンバーじゃなきゃいけない。そこのところに間違いのないミュージシャンたちで構成しました。「古典タンゴなんか知らずともピアソラはできる」なんていうのは迷信ですから(笑)。
  • ■お二人から見て小松亮太さんはどんな方でしょう?
  • 黒田:自分にも共演者にも、すべてに本当に厳しい人です。世界のタンゴの歴史まで背負って生きている。タンゴが過去の音楽にならないように、過去の素晴らしい演奏家や作品をリスペクトしながら、自ら新しい作品を作ってさらには若い世代の共演者まで育て、みんなを引っ張ってくれます。自らに厳しい生き方に時々友人としては心配になりますが、家庭的なところや気のおけない冗談を連発するような、チャーミングさも兼ね備えているので、きっと彼自身うまくバランスをとっているのでしょう。
  • 鬼怒:僕がいつも小松さんに感動させられるのは、彼の自分の理想を実現化させる凄まじい執念ですね。本当にあの無茶とも言える行動力を僕は尊敬します。何を置いても「俺も一緒に行くぜ!!」と言う気持ちにさせられます。
  • ■東京オペラシティでは、小松亮太さんとこれまで「若き民衆」「ブエノスアイレスのマリア」そして今回を含め、歌ものを中心にお届けしてきました。タンゴにおける「歌」について自由に話していただけますか?
  • 小松:楽器弾きとしてはちょっと悔しいですけど、どんなジャンルでも、その音楽の原点は歌と踊りですよね。東京オペラシティでやらせていただくときに格別に幸せなのは、ステージに字幕が出ることですね。外国語の歌をライブで体感しながら母国語で理解することもできるなんて、最高の贅沢だと思います。
  • ■今回の公演の魅力、聴きどころなど、お客様にお伝えしたいことは?
  • 小松:他ジャンルの人々が「クロスオーバーとして弾くタンゴ」ではない、あるいは「本業のついでに弾くピアソラ」でもない、という部分だと思います。当然のことなんですけれどね。餅は餅屋という部分ですよね。
  • 黒田:ピアソラ亡き後、RYOTA KOMATSUこそがタンゴとそれを囲む音楽をさらに動かしていると思います。ピアソラの傑作と、アメリータ、レオナルドという二人の名手の声とともに、東京でまだまだ展開しつづけるタンゴを肌で感じていただきたいです。
  • 鬼怒:前回の共演から2年が経ち僕自身もう少しタンゴに近づけている気がするので、皆さんと音楽的により深いコミュニケーションがとれるのではと思っています。前回の「マリア」公演を見ていない方にはレオナルドさんの気高い歌を聞いて、アメリータさんの存在感に圧倒されて、小松さんの八方破れのパワーを目撃し、日本人バンドの圧倒的なアンサンブルを体験してほしいです!!!

■公演情報

小松亮太 タンゴの歌
featuring バルタール & グラナドス

会場:コンサートホール

[出演]

歌:アメリータ・バルタール *
語り/歌:レオナルド・グラナドス **
バンドネオン:小松亮太
タンゴ・オルケスタ・エスペシアル

第1部:エル・タンゴ **
第2部:バルタール、ピアソラを歌う *

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[料金](全席指定・税込)

S:¥6,000 A:¥4,000
(Arts 友の会特典:10%割引)

[チケットのお申し込み]

東京オペラシティチケットセンター
03-5353-9999(電話 10:00~18:00/店頭 11:00~19:00/月曜定休/2月14日は全館休館のため休業)

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コンサート情報

小松亮太 タンゴの歌
featuring バルタール & グラナドス


2016年
3月12日[土]15:00
コンサートホール

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東京オペラシティ コンサートホール/リサイタルホール


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