作曲家・池辺晋一郎 70歳バースデーコンサート

  • ■70歳バースデーコンサートとなりますが、古希という節目になにか特別な思いをお持ちですか。
  • 池辺:最近しきりと思い出す子どものころの思い出があるんです。僕は身体が弱くて、小学校就学も1年遅れたほどだったんですが、入学前、日がな臥せっているときに、往診にきた医者と母親が立ち話をしているのを、たまたま聞いてしまった。医者は、僕が眠っていると思ったんでしょう。「このお子さんは20歳までは無理です」と母に言っていた。それから高校生くらいまで、1日1回は「ああ僕は20歳までは生きられないんだな」と、医者の言葉を思い出していました。幸いその後丈夫になって、いつの間にか20歳を過ぎてしまい、そのことも忘れてしまったんですが、ここ2年くらい、何十年も考えていなかったことを時々思い出すようになりました。やっぱりそういう年齢になったのかなと。「第九」を書いていることも関係しているかもしれませんね。
  • ■9番を過ぎたらどういう景色になるでしょう?
  • 池辺:シンフォニーを9番で打ち止めにするとは、いまはあえて言わないでおきます(笑)。長期プランニングはしていないのですが、シンフォニーも、10曲書いたオペラも、たぶんなお続くでしょうし、書きたいですね。
  • ■9番を、2人の独唱とオーケストラの編成にされた理由はなんですか?
  • 池辺:「第九」を「合唱付き」でやるのは、いくらなんでも不遜ですからね(笑)。ショスタコーヴィチが9番で肩透かしをやったように、なんらかの方法で別口を探すのは当然だと思いますよ。どうしようか思いあぐねているときに、たまたま家で広げた長田弘さんの詩に触発されたのだと思います。聴いていただくとお分かりになると思いますが、これはやはり合唱にする感じの詩ではない。ですから、ベートーヴェンやショスタコーヴィチへの反発というよりも、長田さんの詩が、自然と「独唱を伴うシンフォニー」というかたちを導いてくれたのだと思います。
    いまのところ、三管編成で全9楽章の予定です。楽章によって編成を変えて、たとえばある楽章は弦楽合奏、また別な楽章は管楽器だけとか、すべてフル編成にしないことを考えています。
  • ■プログラム前半は、1998年の《悲しみの森》、96年のチェロ協奏曲《木に同じく》が演奏されます。池辺作品でおなじみの演奏家陣がそろいました。
  • 池辺:今回のプログラムは、3曲とも同じ方向を向いています。《悲しみの森》には破壊されていく自然に対する危惧を、《木に同じく》には阪神淡路大震災やサリン事件への鎮魂の思いがあります。《木に同じく》は向山佳絵子さんを想定して書いた曲で、これまで何度も演奏してもらっています。他の方にも演奏してもらっていますが、今回、初演者である彼女がソリストということは嬉しいですね。「第九」のソロは、拙作オペラ『鹿鳴館』でも重要な役をやっていただき、信頼している幸田浩子さん、宮本益光さん。そしてこれまで何曲も拙作を振って下さっている下野竜也さんは、僕のシンフォニーでは初登場となります。親しいみなさんに演奏していただくことができるのを、とても楽しみにしています。

    東京オペラシティArts友の会会報誌「tree」Vol.98(2013年6月号)より

■公演情報

2013年9月15日[日]15:00
コンサートホール

作曲家・池辺晋一郎
70歳バースデー・コンサート

[出演]

指揮:下野竜也
チェロ:向山佳絵子 *
ソプラノ:幸田浩子 **
バリトン:宮本益光 **
東京交響楽団

[曲目]

池辺晋一郎:
・悲しみの森 ─ オーケストラのために(1998)
・木に同じく ─ チェロ協奏曲(1996)*
・交響曲第9番 ─ ソプラノ、バリトンとオーケストラのために(2013)**
[東京オペラシティ コンサートホール開館15周年記念委嘱作品・世界初演]

[料金](全席指定・税込)

S:¥6,000 A:¥5,000 B:¥4,000
(Arts 友の会特典:10%割引)

[チケットのお申し込み]

東京オペラシティチケットセンター
03-5353-9999(電話 10:00〜18:00/店頭 11:00〜19:00/月曜定休)

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コンサート情報

2013年9月15日[日]15:00
コンサートホール

作曲家・池辺晋一郎
70歳バースデー・コンサート

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池辺晋一郎(作曲家)
Shin-ichiro Ikebe, composer

池辺晋一郎(作曲家)

撮影:武藤章

1943年水戸市生まれ。1967年東京藝術大学卒業。1971年同大学院修了。池内友次郎、矢代秋雄、三善晃、島岡譲の各氏に師事。1966年日本音楽コンクール第1位。同年音楽之友社室内楽曲作曲コンクール第1位。1968年音楽之友社賞。以後ザルツブルクTVオペラ祭優秀賞、イタリア放送協会賞3度、国際エミー賞、芸術祭優秀賞4度、尾高賞2度、毎日映画コンクール音楽賞3度、日本アカデミー賞優秀音楽賞9度(内、3度最優秀賞)などを受賞。1997年NHK交響楽団・有馬賞、2002年放送文化賞、2004年紫綬褒章を受章。現在東京音楽大学教授、東京オペラシティ文化財団ミュージック・ディレクター、石川県立音楽堂・洋楽監督、横浜みなとみらいホール館長、せたがや文化財団音楽事業部音楽監督。ほか多くの文化団体の企画運営委員、顧問、評議員、音楽コンクール選考委員などを務める。作品:交響曲No.1〜8、ピアノ協奏曲No.1〜2、チェロ協奏曲、オペラ『死神』『耳なし芳一』『鹿鳴館』をはじめ管弦楽曲、室内楽曲、合唱曲など多数。附帯音楽:映画『影武者』『楢山節考』『うなぎ』『瀬戸内少年野球団』『スパイ・ゾルゲ』、TV『八代将軍吉宗』『元禄繚乱』など多数の映画・ドラマ音楽の他、演劇音楽450本以上を担当。著書に「音のいい残したもの」「おもしろく学ぶ楽典」「オーケストラの読みかた」「スプラッシュ」「空を見てますか…1〜5」「バッハの音符たち」「モーツァルトの音符たち」「ブラームスの音符たち」「シューベルトの音符たち」「ベートーヴェンの音符たち」「シューマンの音符たち」等がある。96年より13年間、NHKテレビ「N響アワー」の司会を担当し、好評を博した。


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