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2019年度 武満徹作曲賞 ファイナリスト決定(審査員:フィリップ・マヌリ)

Update:2018.12.06

1997年に始まったオーケストラ作品の作曲コンクール「武満徹作曲賞」は、毎年ただ1人の作曲家が審査にあたります。
21回目(2005年と2006年は休止)となる2019年度(2018年9月28日受付締切)は、90の応募作品から、規定に合致した、31ヶ国83作品が正式に受理されました。そして2018年10月中旬〜11月下旬にかけて2019年度審査員のフィリップ・マヌリによる譜面審査の結果、下記4名がファイナリストに選ばれました。

国籍別応募状況(PDF/136KB)

フィリップ・マヌリ

撮影:ヒダキトモコ

2019年度審査員

フィリップ・マヌリ(フランス)
Philippe Manoury (France)


この4名の作品は2019年6月9日[日]の本選演奏会にて演奏され、受賞作が決定されます。
なお、譜面審査に際しては、作曲者名等の情報は伏せ、作品タイトルのみ記載されたスコアを使用しました。

ファイナリスト(エントリー順)

ツォーシェン・ジン

© Alexander Blank

ツォーシェン・ジン(中国) Zhuosheng Jin

[作品名]
雪路の果てに
At The End Of Snow Line  For full orchestra

1991年、浙江省寧波市生まれ。近年はカナダのモントリオールを拠点に、作曲家、ピアニスト、詩人として活躍。音楽的ジェスチャーと音の関連性に興味を持っている。作品はクラングフォーラム・ウィーン、メイタ・アンサンブル、カルテット・ベーラ、Mdiアンサンブル、ジャック・カルテット、ミヴォス・カルテットなどにより演奏されている。また、アーチペル音楽祭(スイス)、June in Buffalo New Music Festival(アメリカ)、OutHear New Music Week(ギリシャ)、Composit New Music Festival(イタリア)、北京現代音楽祭など、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカでも取り上げられている。中央音楽学院付属学校(北京)を経て、2015年オーバリン音楽院(アメリカ)で学士号、2017年ボストン大学で修士号を取得。現在、マギル大学(カナダ)にてフィリップ・ルルーの元で学んでいる。これまで、ジョシュ・レヴァイン、アレックス・ミンチェック、ジョシュア・ファインバーグ、シャオガン・イェに師事。

https://www.zhuoshengjin.com

シキ・ゲン

© Fotostudio Meister, Graz

シキ・ゲン(中国) Shiqi Geng

[作品名]
地平線からのレゾナンス
Resonanz vom Horizont  For Orchestra

1995年、河北省保定市生まれ。8歳の頃からピアノ、11歳から音楽理論や和声学を、12歳から独学で作曲を始める。2010年中央音楽学院付属学校(北京)に入学。2014年オーストリアのグラーツ音楽大学作曲部門に入学した。2018年最優秀の成績で学士号を取得、現在は同大学院修士課程に在籍し、ゲルト・キュール、ベアート・フラーの各氏に師事。世界中で多くの作曲賞を受賞しており、作品は、Lange Nacht der Bühne in Linz、ヨーロピアン・フォーラム・アルプバッハ(チロル)を含む、オーストリア、イタリア、フランス、中国、タイで、Ensemble offspring (オーストラリア)、リンツ・ブルックナー管弦楽団、Schallfeld Ensemble(オーストリア)等の演奏団体によって演奏された。2017年グラーツ楽友協会主催「人権のためのコンサート」から作曲の委嘱を受けた。2018年グラーツ市の特別奨学金を得る。

https://shiqigeng.wordpress.com

パブロ・ルビーノ・リンドナー

© Tatiana Pasten

パブロ・ルビーノ・リンドナー(アルゼンチン) Pablo Rubino Lindner

[作品名]
ENTELEQUIAS
ENTELEQUIAS  for orchestra

1986年、ブエノスアイレス州キルメス生まれ。現在、ラ・プラタにあるアルゼンチン劇場オーケストラ第2ヴァイオリン首席奏者。国立ラプラタ大学で作曲を学び、近年は国際的な作曲家としても活動している。2015〜17年までデンマークのオーフスで開催されたノルディック・サクソフォン・フェスティバルに招待された。他にも、モーリス・ラヴェル・コンクール(イタリア)、アルヴァレス室内オーケストラによるMusique sans frontiers作曲賞(イギリス)、Premio Juan Carlos Paz(アルゼンチン)、マデルナ作曲コンクール(ウクライナ)、highSCORE Festival(イタリア)、TACEC Generation Festival(アルゼンチン)等に参加し、多くの賞を受けている。

スチ・リュウ

スチ・リュウ(中国) Siqi Liu

[作品名]
三日三晩、魚の腹の中に
Im Bauch des Fisches drei Tage und drei Nächte  für Orchester

1991年、湖南省冷水江市生まれ。2010〜18年に中央音楽学院(北京)でウェンチャン・チンのもとで作曲を学び、学士号と修士号を取得。2017年、交換留学生としてハンブルク音楽演劇大学でエルマー・ランプソンに師事した。作品はキリスト教の信仰と精神的な美の追求を反映している。

「2019年度武満徹作曲賞 譜面審査を終えて」  審査員:フィリップ・マヌリのコメント

[総評]

今回、83作の譜面を受け取りましたが、審査を2つの段階に分けることにしました。第1の段階では即時に興味を惹かれたものと、直接関心のないものに分けました。もちろん、その中間には、たしかな資質はあるけれどより詳しく調べる必要がある作品もありました。したがって、皮肉ではありますが、A:天国、B:煉獄、C:地獄の3つのカテゴリーに分けることにしました。その結果、Aに6作品、Bに18作品、そしてCに59作品となりました。第2の段階では、明らかに資質のある24作品の中から4つの作品を選ばなければならないため、より困難な作業となりました。そのため下記のように、いくつかの厳正な基準を設定することにしました。

  • まず各譜面のそれぞれの声部を注意深く見て、すべての声部が完全に作曲されているかどうか、他の声部から移調したものではないかを確認しました。コンピュータを使えば移調することは簡単な作業ですが、注意しないと結果的に記譜の不統一や理論的な間違いが生じます。その結果、いくつかの作品を選んでいくつかを却下しました。
  • 第二の基準は、シェーンベルクが生徒に対して語った「写譜家が書けるようなことを作曲しないように」という有名な言葉を思い出しつつ、私が「カット&ペースト作品」と呼ぶものです。今日、スコアを作成するときにいくつかの小節をセレクトしてクリックし、他の箇所にコピーするのはよく見られることです。私にとってこれは作曲とは言えません。
  • 第三の基準は、いくつかの有名な作風に倣った作品を検知することでした。たとえばピッチ(音高)のないただうるさい音楽、過剰に複雑な書法など。また多くの微分音程や特殊奏法を使った作品も、室内楽なら効果的でも、オーケストラでは楽器群の中のチューニングの違いによってうまくいきません。

この第2段階の審査を終え、もともと煉獄のカテゴリーにあった2作品が天国のカテゴリーに移行したことに気づきました(そしてその逆の作品も…)!
最後に、なるべく違った音楽スタイルの作品を選ぶようにしました。実験的な作品も、伝統的な作品も入れ、今日の音楽の多様性を示したつもりです。以下が私の選んだ4つの作品です。順番は、純粋に番号順であり、評価の順ではありません。

 

[本選演奏会選出作品について](エントリー順)

■ 雪路の果てに
作品の詩的な雰囲気およびオーケストラの響きの色彩のため。この作曲家は音楽のアイディアを時間の経過とともに追求し、音楽の構造の展開においてある種の流動性を創り上げるすべを心得ている。この曲は、私が選んだ4作品の中でもっとも伝統的なものかもしれないが、けっしてアカデミズムにも新調性派の様式にも陥ることはない。音楽は終盤の劇的なクライマックスに向けてゆっくり展開し、最後に冒頭の素材を振り返る。

■ 地平線からのレゾナンス
オーケストラ書法のポリフォニックな構想および形式上の独創性、音楽的論考の流動性のため。この曲はかなり詳細に書かれており、とりわけ弦楽器の書法は、しばしば複数のポリフォニックな構造に分割されている。その重ね合わされている構造の多様性にとても興味を持った。それはきわめて独創的で、けっしてシステマティックではない。この作曲家はとても耳が良いと思う。形式的にはつねに発展し続けているようで、ある種の音楽の有機性 ─ 私自身とても気にかけていることだが ─ を創っている。

■ ENTELEQUIAS
オーケストレーションの細部(フレーズ、強弱、表現性)に対する細やかな配慮および音色のテクスチュアの質のため。なお、この譜面は印刷およびレイアウトの完成度の点で、今まで見た中でもっとも見事なものの一つである。各声部の細部まできわめて緻密に書かれており、これは作曲者が自分の書いている音をきちんと聴いているということの証である。リゲティの初期作品の影響が見られるが、そうした織り合わされたテクスチュアを独創的に発展させたものといえる。

■ 三日三晩、魚の腹の中に
ドラマティックな音楽の構造、そして響きに対するイマジネーションのため。この作曲家は、きわめて論理的な音楽の素材をきわめて表情豊かな音型で用いており、力強いオーケストラの響きを創り上げるだろう。とりわけ弦楽器の書法はとても綿密に練られていて、声部を細かく分割しており、複雑なテクスチュアが生み出される。


2018年11月20日 ストラスブールにて
フィリップ・マヌリ
(訳:後藤菜穂子)

◎本選演奏会情報

2019年6月9日[日]15:00 東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル
コンポージアム2019
「2019年度武満徹作曲賞本選演奏会」

審査員:フィリップ・マヌリ
指揮:阿部加奈子
東京フィルハーモニー交響楽団




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東京オペラシティ コンサートホール/リサイタルホール


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