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2012年度 武満徹作曲賞 ファイナリスト決定(審査員:細川俊夫)

Update:2011.12.08

1997年に始まったオーケストラ作品の作曲コンクール「武満徹作曲賞」は、毎年ただ1人の作曲家が審査にあたります。 14回目(2005年と2006年は休止)となる2012年度(2011年9月30日受付締切)は、95曲の応募作から、規定に合致した、31ヶ国90作品が正式受理されました。そして、2011年10月中旬から11月下旬にかけて、審査員 細川俊夫による譜面審査の結果、下記4名がファイナリストに選ばれました。

国籍別応募状況(PDF/123KB)

細川俊夫

© Kaz Ishikawa

2012年度審査員

細川俊夫(日本)
Toshio Hosokawa (Japan)


この4名の作品は2012年5月27日[日]の本選演奏会にて上演され、受賞作が決定されます。なお、譜面審査に際しては、作曲者名等の情報は伏せ、作品タイトルのみ記載されたスコアを使用しました。

ファイナリスト(エントリー順)

フェデリコ・ガルデッラ

フェデリコ・ガルデッラ(イタリア) Federico Gardella
Mano d'erba

1979年2月4日、イタリアのミラノ生まれ。ミラノ音楽院でアレッサンドロ・ソルビアティに作曲を学び、その後、ローマのサンタ・チェチーリア国立音楽アカデミーにてアツィオ・コルギに師事。これまでにディヴェルティメント・アンサンブル、トスカーナ管弦楽団、イ・ポメリッジ・ムジカーリ管弦楽団、レゾナンス・コンタンポレーヌ、トリエステ・プリマから委嘱されている。また、アカデミア・フィラルモニカ(ボローニャ)、ハーバード大学(ボストン)、マッジョ・フィオレンティーノ音楽祭(フィレンツェ)、ウッチ・フィルハーモニーホール(ポーランド/ウッチ)、ミラノ音楽祭、コロンビア大学(ニューヨーク)、トライエットーリエ[カーサ・デラ・ムジカ](パルマ)、フェスティバル・アレーナ[グレート・ギルド・コンサートホール](ラトヴィア/リガ)、パルコ・デラ・ムジカ音楽堂(ローマ)、ヴォワ・ヌーヴェル(フランス/ロワイヨモン)、MITO9月音楽祭(トリノ)、ウニオーネ・ムジカーレ(トリノ)など多くの音楽祭等で演奏されている。

http://www.federicogardella.it/

イオアニス・アンゲラキス

イオアニス・アンゲラキス(ギリシャ) Ioannis Angelakis
une œuvre pour l'écho des rêves (II)

1988年7月21日、ギリシャのテッサロニキ生まれ。テッサロニキ・アリストテレス大学の音楽学部で作曲をクリストス・サマラスに師事。さらに、アテネのモスカート市立音楽院にて和声を学び、同校でギターをN.ハジエレフテリウに師事しディプロマを取得。他に対位法、分析、フーガ、管弦楽法も学んだ。2011年秋よりボストン在住、ボストン大学の修士課程で作曲を学んでいる。

http://www.reverbnation.com/ioannisangelakis

木村真人

木村真人(日本) Masato Kimura
私はただ、寂黙なる宇宙に眠りたい

1981年12月1日、東京都大田区生まれ。音楽とは無縁の環境に育つが、坂本龍一の音楽の和声感と電子音の色彩に影響を受け、独学にてピアノを学び始めたことが、作曲を志す契機となった。西洋古典音楽を学ぶ一方、主に邦人作曲家の作品から作曲技法を研究し、日本音楽コンクール作曲部門、2009年度武満徹作曲賞第3位(審査員:ヘルムート・ラッヘンマン)、武生作曲賞の入選、受賞歴がある。現在、電子音響音楽の制作を独学。反復運動を作曲の基幹とし、そこに自然現象におけるカオス事象を投影させながらも、知的構造物としての音楽ではなく、夢幻的霊性を時空間に現出させることに関心がある。

薄井史織

© Tobias Feltus

薄井史織(日本) Shiori Usui
笑い

1981年10月21日、埼玉県さいたま市生まれ。17歳の時に、イギリス、スコットランドへ移る。作曲をエディンバラ大学でナイジェル・オズボーン、ピーター・ネルソン、マリナ・アダミアに師事した。これまでに、日本、ヨーロッパ、アメリカなどで作品が演奏され、2010年10月から2011年2月までは、BBCスコティッシュ交響楽団でレジデント・コンポーザーを務めた。器楽作品からモーションキャプチャーを利用したものまで幅広く作曲し、ここ数年は、主に「楽器としての身体」をテーマにした作品を生み出している。即興演奏にも興味があり、ノイズヴォーカリスト、そしてピアニストとして、イギリスのエディンバラとポルトガルのリスボンで頻繁に活動を行っている。

「2012年度武満徹作曲賞 譜面審査を終えて」 審査員:細川俊夫 総評

私はこれまで、一年のうちに一度か二度は国際作曲コンクールの審査に招かれ、それを引き受けてきました。なぜそういう審査に関わるかといいますと、そこでは同僚の作曲家がどのようにスコアを読み、解釈し、批評するかを目前に見ることができるからです。そして同僚の作曲家たちが、スコアを読んで何を考え、また彼が「音楽に何を求めているか」が、よくわかります。作曲は孤独な作業です。作曲家同士が、お互いの音楽観をさらけ出す機会は、非常に稀です。その審査の過程を通して、その作曲家をより深く知ることができ、そして過程で他の作曲家たちから学ぶことも多いのです。
とりわけ私のように東洋人であり、西洋音楽の長い伝統とは、離れた位置に立って創作活動をしているものにとりまして、同僚のヨーロッパの作曲家たちが何を考え、何を求めているかを知ることは、たいへん刺激になり、勉強になるのです。
しかし今回の審査は、作曲することよりもさらに孤独な一人だけの作業を進めねばなりませんでした。今回見ました90曲のスコアは、全体に数曲の例外を除いて、どれも高水準であり、真摯に音楽に向かう姿勢が読み取れるものでした。その中からわずか4曲を選ぶのは、本当に至難なことです。
それで私は、最終的に自分の音楽観に沿って、自分が聴いてみたい作品を選ぶことにしました。現代の音楽には、作曲家の非常にしっかりしたアイディア、思想、コンセプトが必要であると私は思います。またそれと同時に、単に頭だけで考えたアイディアだけではなく、作曲家の内側からの声を聴いていく態度も、必要でしょう。テーマがオーケストラのための音楽ということであり、私はこの西洋で成熟した編成を「いかに独自な観点から見直し、自分の楽器として創り変えているか」という批評軸を持って選んでいきました。

[本選演奏会選出作品について]

■ Mano d'erba
きわめて繊細な音楽的なセンスにあふれた作品。一つの音から始まりそれが広がりを持つ音域へ拡大し、再び収束していく。まるで自然界の風の流れのように、生まれては消えていく音たちの表情を、作曲家がよく音を聴きながら作曲している。オーケストラの音響は、あたかも自然界の静かな風や波のような運動を持たせている。ゆっくりした展開で迎えるクライマックスの後、バスフルート独奏と高音の弦の響き、そして風音で浄化された世界が表現されている。

■ une œuvre pour l'écho des rêves (II)
綿密に書かれたスコアは、どの音も作曲家が自分の心の声をよく聴き、考え作曲されている。洗練されたオーケストレーション。ハープ、ピアノ、チェレスタ、ヴィブラフォンが天上的な色彩を与えている。中間部にトゥッティによる何度かの唐突な強打音。それは悪夢の記憶なのか。スコアを見れば、穏当な作品に見えるのだが、どこか不思議な世界をこの作曲家は持っているように思われる。

■ 私はただ、寂黙なる宇宙に眠りたい
音響の作り方が、独自で繊細。物語的な静かな絵巻物のような作品。ピアニッシモを主体にした音作り。聴こえるものと聴こえないものとの中間地帯の響き。東洋的なスピリチュアルな世界への傾倒。記譜法や、特殊奏法には、いくつかの問題が見られ、演奏にはかなり問題が生じるだろう。それで最後まで選曲を躊躇したが、この作曲家の持っている独自な世界を聴いてみたい気持ちが、この曲を選んだ。

■ 笑い
オーストリアの18世紀に生きた異端の彫刻家、Franz Xaver Messerschmidtの「笑う」彫刻をテーマにした作品。「笑う」という行為を音楽的に、実現しようとする冒険的な作品。演奏家は、様々な特殊奏法とともに声を発して、オーケストラ自身が、人間の身体の笑いを発する器官(organ)、装置となるように仕掛けられてある。オーケストラという媒体から、「笑う」という人間の根源的な行為の不思議さ、面白さ、深さが生まれてくるのだろうか?

最終的に私が聴きたかった作品は、11曲あり、その中からさらに4曲を決定するのに、様々なためらいや戸惑いがありました。選曲されなかった作品にも、優れた作品がいくつもあったことを書き添えておきます。

◎本選演奏会情報

2012年5月27日[日]15:00 コンサートホール
コンポージアム2012
「2012年度武満徹作曲賞本選演奏会」

審査員:細川俊夫
指揮:十束尚宏
東京フィルハーモニー交響楽団


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