
スカンディナヴィア半島に並ぶスウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ヨーロッパへの玄関デンマーク ─ 「北欧」と総称されるこれら地域の国々は、異なる風土と文化をもっていますが、デザインに対するアプローチでは共通認識で結ばれ、北欧独自の優れた造形を築きながら豊かなライフ・スタイルを育んできました。
地理的にもヨーロッパ経済の中心からも離れている北欧諸国は、産業革命の到来、工業の発展、都市化、モダニズムの洗礼が決して早くありませんでした。これに厳しい気候、広大な自然、人口密度の低さがあいまって、人々は家に集い、自然に「居心地のよいインテリアに囲まれた生活」を志向するようになりました。北欧の近代建築・工芸は、機能性を重視した自然素材によるものが主流ですが、長い冬を明るく過ごすためにあたたかみのある「色」と「光」で彩られるという特質も見逃せません。
1940年代後半から60年代には産業振興が推進され、質の高い北欧の家具や家庭用品が世界的に広まります。デンマークのハンス・J.ウェグナー、フィン・ユール、アルネ・ヤコブセン、スウェーデンのステイ・リンドベリ、フィンランドのタピオ・ウィルッカラ、アルヴァ・アアルト、カイ・フランクなどの個性的なデザイナーの活躍と独自にグッド・デザインを拓いた企業によって、この時代に「北欧モダン」と呼ばれるスタイルが形成されました。1960年代の後半には、ナチュラルな素材、簡素なフォルム、あたたかみのあるテイストが若者文化と共鳴し、ヴェルナー・パントンやエーロ・アアルニオの未来主義的なプラスティック家具、マリメッコのテキスタイル、現代工芸、新しい感覚のハンディクラフトが一世を風靡します。これらがアメリカやイギリスから世界へ広がり、日本においても高度成長の基盤として、北欧を手本にグッド・デザインの開発生産・輸出振興が模索されました。
伝統、機能、表現 ─ 三つの視点から黄金期の「北欧モダン」を回顧する本展では、普遍的でやさしいデザイン、おだやかで心地よいライフ・スタイルのルーツと展開を多角的にご紹介します。
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タピオ・ウィルッカラ ボトル(シリーズ)No,502《ボッラ》 ©Rauno Träskelin/Design Museum, Helsinki |
ルーベン・ラウジング 《テトラ・クラシック》 ©Shunji Tanaka, Seki Photos |
ポール・ヘニングセン ペンダント・ランプ 《PHアーティチョーク》 ©Louis Poulsen Ligeting A/S |
ヴェルナー・パントン 椅子《パントン・チェア》 ©Masataka Nakano |