◎収蔵品展016
建築の見える風景

2003.11.1[土]― 2004.1.25[日]




建築を描いた絵は古くから存在したが、西洋においてそれが建築画というひとつの絵画ジャンルとして成立したのは、ルネサンス期における透視図法の発見が大きな契機だったといわれる。今日では建築画というジャンルが顧みられることはまずないが、それでも、風景画や人物画の一部に建物を描いた作品は少なくない。また、同じく建築物を描き込んでいても、その様相は多種多様である。非現実的な架空の建築を描くものもあれば、実在する建築を描くものもある。また、建築を主体に描くものもあれば、背景の一部として描き添えただけのもの、あるいは、室内の情景を描いたものもある。
暁
小杉小二郎 KOSUGI Kojiro
《六区のメトロ駅》
油彩、キャンバス
90.9 × 116.7 cm
1986
野又穫(1955年生まれ)の作品に描かれた建造物は、一種の心象風景のようであり、見るものの視線を捉えて放さない不思議なインパクトをもっている。その非現実的な建築は、人々をそこに招き入れるかわりに、悠久の時空に孤高の存在として佇立している。小杉小二郎の作品は、パリやその近郊の実際の風景に取材しているのだが、現実の風景をたんに切り取ったものではなく、いずれも彼独特の情感と幻想が入り混じった小宇宙をつくり上げている。
暁
相笠昌義 AIGASA Masayoshi
《バルセロナの小学校》
油彩、キャンバス
84.5 × 110.5 cm
1984
相笠昌義は、都市における人間疎外の状況をシニカルに描く特異な画風で知られるが、≪東京駅≫(1992年)、≪エンパイア・ステートビル≫(1993年)、≪水天宮≫(1996年)など、実在する建築が描かれている。もっとも、建物はすぐにそれとわかるものであっても、そこに居合わせた通行人などと同様に、妙に蒼白で、いささかの活気も感じられない。都市もそこに生活する人々も同じようにどこか病んで、いかにも不健康にみえる。都市の病理が人々に感染したのだろうか。それとも、人々の病理が都市にもその影を色濃く映しているのだろうか。いずれにせよ、建物も人々も互いの鏡像のように同様の表情をみせている。
暁
難波田史男 NAMBATA Fumio
《ニコライ堂》
油彩、段ボール
45.0 × 69.5 cm
1960
1975年以来パリに在住して作家活動をつづける筧本生の作品では、しばしば窓外に見える重厚な西洋建築が、画面に鈍重な雰囲気をもたらしている。その三頭身、四頭身のグロテスクな画中人物たちは、カフェのギャルソンにしろ、店先の女にしろ、いずれも孤独な倦怠感を色濃く漂わせる。主人公があくまで不恰好にデフォルメされた人物であることは明らかだ。背景の建物の壁や家並みは人物同様に量感たっぷりに描かれ、書割りのようなそのなかに閉じ込められた画中人物たちは、思い思いに悲喜こもごもの表情をみせる。室内はそのまま人間喜劇の舞台となっている。
暁
難波田龍起 NAMBATA Tatsuoki
《冬のまち》
油彩、キャンバス
53.0 × 72.7 cm
1953
初期には具象絵画を描いていた難波田龍起は、第二次大戦後、一転して抽象絵画の制作に専念し、こくのある色彩と、奥行きと広がりを感じさせる空間構成を特徴とする、高い精神性を内に宿した独自の画風を確立した。1950年代前半に描かれた作品群は具象から抽象への移行期のもので、ビルや工場などの建物が抽象的な色面に解体していく過程を示している。70年代、80年代の作品には明確な建物のイメージこそ認めがたいが、≪聖堂≫(1978年)、≪黄色い家≫(1987年)など建物を連想させる題名もみられ、群像、石とともに建築的な要素がその画面構築の背後に隠されていることを窺わせる。


インフォメーション
場所:ギャラリー3&4(東京オペラシティ アートギャラリー 4F)
期間:2003.11.1[土]─ 2004.1.25[日]
開館時間:12:00 ─ 20:00(金・土は12:00 ─ 21:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日=11/4、11/25、1/13)、年末年始(12/29─1/5)

入場料:一般\300(\200)、大学・高校生 \200(\150)、中学・小学生 \100(\50)
project N 15「牧谷光恵」もご覧いただけます。
※( )内は15名以上の団体料金、夜間割引=閉館1時間前以降の入場は半額/その他割引制度あり。
※割引の併用はできません。

※企画展:ジャン・ヌーベル展のチケットでもご覧いただけます。

主催:(財)東京オペラシティ文化財団

お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756