◎収蔵品展012
Nambata Blue
難波田龍起の青 ─ 寺田コレクションより

2002.8.31[土]― 11.17[日]




青い海や空が限りなく遥かな、手の届かない空間であるように、「青」は物体の色というよりも、感覚的、抽象的で漠然とした色彩です。
難波田は、1950年代前半の作品では、風景を想わせる緑色を基調に幾何学的な形態と明瞭な黒い線による構成が中心でしたが、1950年代後半の主に灰色を基調にした画面では、下方から上方へ湧き上がるような黒い線の運動と、線に囲まれた空間の赤、青、黄が使われるようになります。さらに1960年代には、エナメルを使ったドリッピング(垂らし)の技法が試され、その後、線描は次第に地色に溶け込み、青、しかも原色ではなく、心象風景、内的情景を描いた多層的で複雑な青の空間が描かれるようになっていきます。
無窮 A
《無窮 A》
油彩、キャンバス/181.8×227.3 cm
1990
無窮 B
《無窮 B》
油彩、キャンバス/181.8×227.3 cm
1990
難波田龍起の「青」を決定的にしたのは、1974年と翌年、相次いで起こった息子の死でしょう。
「依然として青色が私のタブロオに欠かせない色である/だからコバルトとウルトラマリンの消費量が多い/海に消えた彼も青は好きで/夢みた海の祭りは華麗であった」(「描けなくなるまで描こう」より)
ウルトラマリン(瑠璃色)は、鉱石ラピスから生まれた青、ラピスラズリの色名で、洋の東西を問わず至上の色として尊重されてきました。コバルト(淡い群青)とともに難波田が多用したウルトラマリンは、次男史男が姿を消した海のように、神聖で奥深い色であり、眼に見える現実世界を凌駕するような勢いで画家の心象を具現化するに相応しい色だったのかもしれません。
史男の死に際して描かれた《西方》、《西方浄土2》(未出品)については、「青い風景のなかに/いくつかの顔があらわれる/西方の人々である/消そうとしても消えはしない/存在することを主張しているのだ」(「描けなくなるまで描こう」より)
という詩の一節があります。
青い夜
《青い夜》
油彩、エナメル、キャンバス/73.0×90.5cm
1966
息子を亡くした後も、天空を想いながら20年以上筆を持ち続けた難波田は、1994年の個展(世田谷美術館)で、晩年の代表作《生の記録》のシリーズ3点を出品します。そのうち唯一青が基調の《生の記録3》について、同展図録には「『青に決着をつけなくちゃと思って…』と画家は語った」とあります。群像らしき人影も見えず、砂丘のうねりにも似た青い空間の抑揚だけの構成。「決着をつける」という言葉に相応しい画家の入魂の大作です。
生の記録 3(左) 生の記録 3(中) 生の記録 3(右)
《生の記録 3》
油彩、キャンバス/162.1×390.9 cm
1994
難波田龍起の遺品であるパレットには、黄土色の絵の具が残されていました。天空と地上、現実と空想の両世界を包括したような難波田にとって、天空や西方はもはや遥か遠い世界ではなくなったのか。黄泉の国を近くに見ていたのか。1997年、難波田は永年想い描き続けた「青」の世界へ旅立ちました。そして私たちは、難波田の「青」を自身の心象風景に投影することで、画家の内面と交信し、「青」の世界へ想いを馳せるのです。
展示風景(ギャラリー3)
展示風景(ギャラリー4)



インフォメーション
場所:東京オペラシティ アートギャラリー 4F
期間:2002.8.31[土]─ 11.17[日]
開館時間:12:00 ─ 20:00(金・土は21:00まで、最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日=9/17、9/24、10/15、11/5)

入場料:一般\300(\200)、大学・高校生 \200(\150)、中学・小学生 \100(\50)
※8月31日[土]─9月8日[日]は開館3周年記念として入場料が半額になります。
「ダムタイプ:ヴォヤージュ」のチケット半券の提示で団体割引の料金で本展にご入場いただけます。
※ ( )内は15名以上の団体料金、その他割引制度あり
※企画展「ダグ・エイケン|ニュー・オーシャン」展のチケットでもご覧いただけます。

主催:(財)東京オペラシティ文化財団
協賛:日本生命/ NTT都市開発/小田急電鉄

お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756