◎収蔵品展011
Japanese paintings from the Terada Collection
彼方へ ─ 寺田コレクションより

2002.5.25[土]― 8.15[木]




私たちは社会生活の節目や転機の際に、人生を海原に例えて「船出」、「橋渡し」という表現をしたり、もしくは舞台に見立てて「幕(扉)を開ける」や「新しいステップ(階段)」と言ったりします。作品に見られる海や船、階段、塔、橋、幕、扉などのモチーフについても、作家の、そして鑑賞者の意識下で多分に人生に置き換えられていることでしょう。
今回の収蔵品展011では、本展のタイトル「彼方へ」が表すように、寺田コレクションに収集されている、特に具体的な方向を指し示さないまま、抽象的にどこか彼方を想起させる作品をご紹介しています。
Work
ギャラリー3の展示では、難波田龍起の晩年の大作《生の記録3》、《生の記録4》を中心に、前半が1974年以降の寒色の作品、後半が1990年代の暖色の作品というように、ほぼシンメトリーに構成され、さらに対岸の壁には、海に憧憬を抱きつつ、生と死の狭間で揺れ動いていた難波田史男による海、湖、河をモチーフとした作品が続きます。時に激しく、時に繊細にリズムを刻む彼のドローイングには目と心が奪われます。
また、息子・史男という身近な者を失った経験をはるかに超越し、普遍的かつ日本固有の抽象絵画を獲得するに至った難波田龍起の軌跡は、日本的抽象の彼方を見据え、画家として生きることを全うし得た力強さの痕跡でもあります。その「生」の強さは、《生の形象》の、目に焼き付くような衝撃的な赤にも見出せます。
Work
難波田史男《湖上》
水彩、インク、紙/20.8×32.0cm
1973
難波田史男の海辺のイメージに続いて落田洋子の船のイメージが並び、矢吹申彦の扉の向こう側にいる少女に招かれてギャラリー4へと導かれると、いよいよ彼方へ向かう世界が多様に展開されます。
Work
Work
象徴的なモチーフとして反復される階段、梯子、塔、橋は、川上力三、コイズミアヤの立体作品、武田史子の版画、野又穫の絵画に顕著に見られます。また、時空を超えて現実と非現実の狭間へ至る「彼方」は、加藤清美、長谷川健司、河原朝生、玉虫良次など、現実に立脚しながら空想や夢といった個人の内なる世界へも繋がりをみせます。そのなかで、酒巻洋一の船に乗った鳥の立体、川原田徹の《かぼちゃ浄土》の版画シリーズ、そして山口啓介が90年代初頭に集中的に手がけていた浮上せんとする巨大船のエッチングはノアの箱舟を彷彿とさせ、既に此岸にはないユートピア思想を読み取ることができるでしょう。さらに、ギャラリー4の最後には、保田井智之の木とブロンズによる船型の立体が海原に漂うように現れます。
Work
野又穫《望楼へ 15》
アクリル絵具、キャンバス/116.5×61.0cm
1994
Work
川上力三《風の塔》
陶/51.0×25.0×21.0cm
1992
これらの作品から想像される時空を超えた広大な海原では、現実の世界はごく一場面に過ぎず、我々はいつか回帰するであろうどこか彼方を内に抱き、航行しているところなのかもしれません。


出品作家
藤原百合谷、長谷川建司、橋本潔、保田井智之、加藤清美、川口起美雄、川原田徹、川上力三、河原朝生、コイズミアヤ、中嶋明、難波田史男、難波田龍起、ニルス・ウド、野又穫、落田洋子、小野田維、酒巻洋一、武田史子、玉虫良次、塚本聡、矢吹申彦、山口啓介(五十音順)



インフォメーション
場所:東京オペラシティ アートギャラリー 4F
期間:2002.5.25[土]― 8.15[木]
開館時間:12:00 ─ 20:00(金・土は21:00まで、最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日、
全館休館日(8月4日[日])

入場料:一般\300(\200)、大学・高校生 \200(\150)、中学・小学生 \100(\50)
夏休みスペシャル企画!:小・中・高校生は7/20(土・祝)~8/15(木)の期間、入場料50%OFF
※ ( )内は15名以上の団体料金、その他割引制度あり
※SOLOS:企画展「リクリット・ティラバーニャ」展/「レイモンド・ペティボン」展のチケットでもご覧いただけます。

主催:(財)東京オペラシティ文化財団
協賛:日本生命/ NTT都市開発/小田急電鉄

お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756