2001.10.6[土]― 12.24[月・祝]
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今澤のキャンバスには、ベネツィア・テレピンが少量混ざった溶液で油絵具と顔料を溶いたものが、一層ずつ混ぜずに塗り重ねられています。カラーフィルムを何層にも重ねた状態を思い浮かべるとよいでしょう。彼の頭のなかには既に完成されたイメージがあって、その再現のために、一枚一枚、下にあるべき色が逆算して重ねられているのです。一つの画面は少なくとも7、8層で構成されているので、そこにはかなり複数の色が含まれていますが、鑑賞者が目にする最上層は2色だけです。今澤が言うには、「今のところまだ一度に2色以上はコントロールがきかないから」だそうですが、それらは隣り合うことで互いに主張しあう濃い色が選ばれ、さらにほぼ同じ明度になるように塗られることでフラットな明るさとなり、ハレーションを起こしたように画面は光を放ちます。色の重なりを下に下に潜ってゆきながら、光をたくわえているです。こうしてできあがった絵画を、鑑賞者は網膜を通して再び自分のなかに色と光の残像として浮かび上がらせます。じっくりと彼の作品の前に佇むと、画面がチカチカと眩しく違う色に見えてくるのはこのためです。それは瞬間瞬間で表情を変え、色と光のなかに潜ってゆく視覚の潜水(ダイビング)へと鑑賞者を誘います。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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過去の作品では、仕上がりの画面のイメージが見えないまま手探りで描いていたといいます。折り重なった色層のみで構成された作品を見るのは、作品の内部に視点を留め続けるということですが、その状態に目が慣れると、人は画面の深遠さに無感覚になるうえに、視線をどこにも逃がせない重圧感を無意識のうちに覚えることになります。描いている今澤自身も苦しさを感じるようになり、彼は重く沈んでゆく方向からの上昇を試みました。それが意識的に光を求めて発色の強いパステルを用いた作品を制作するきっかけとなり、さらに今回の新作で、画面上に視点を休めるための着地点を設けたことへと繋がっています。
今澤の開かれた絵画のなかから放たれる光に誘われるまま、ぜひそこに飛び込んでみて下さい。視覚の潜水(ダイビング)は、直接の経験がお薦めです。 |
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