共生にむけてのフーガ
エゴフーガル:イスタンブールビエンナーレ東京

2001.10.6[土]─12.24[月・祝]



 



この展覧会は、2001年秋にトルコ、イスタンブール市において開催される第7回イスタンブールビエンナーレ(9月21日─11月17日)に出品される作品の中から、映像作品を中心に、特に注目される話題の作品を厳選して東京オペラシティアートギャラリーでイスタンブール展とほぼ同時期に同じ作品を展示するという、いわばビエンナーレのエッセンスを凝縮させたサテライト展です。

イスタンブールはアジアとヨーロッパの境界に位置する大都市です。そこで2年に一度行われる現代美術の国際展であるイスタンブールビエンナーレは、これまで「東西の出会い」や「融合」といったテーマを掲げ過去6回にわたって開催されてきました。第7回目となる今回のビエンナーレは、初のアジア出身のキューレーター、長谷川祐子氏がアーティスティック・ディレクターに就任し、同氏のディレクションのもと、20世紀を総括し、21世紀を展望するアジアからの視点が提示されることになります。

→イスタンブール・ビエンナーレの公式サイト



エゴフーガル EGOFUGALとは
展覧会のテーマとして掲げられている「エゴフーガル:EGOFUGAL」。このちょっと聞き慣れない言葉は「エゴ」(個我)と、そこから遠ざかるという意味のラテン語「フーガル」を結びつけた言葉で、今回のビエンナーレ展のテーマとして新たに生み出されたものです。
自我を重んじ「個人の自由を追求してきた」20世紀は、私たちに物質主義や、金銭崇拝、競争、民族紛争といったさまざまな課題を残しました。こうした問題をともに乗り越える態度として、21世紀は「いかに自我から自由になるか」が一つの問いかけとなってきます。しかし、近代的個人主義を経てきた私たちにとって、自我は否定できない重要な個人の核です。そこで「自我を重んじつつもいかに自我から自由になりうるか」という考え方が、あらたな希望のよりどころとして浮かび上がってきます。エゴフーガルとは、こうしたあらたな可能性を展望する言葉です。
そこには20世紀を動かす要因となっていたMan(男性、個人主義)、Money(金権主義)、Materialism(物質主義)が表す3つの"M"から、"Co-existance" (共生)、"Collective intelligence" (集合知性、知的コラボレーション)、"Collective consciousness"(集合意識)が表す3つの"C"へと移行していく方向性が含まれています。


クリス・カニンガム
《All is Full of Love》
1999
Courtesy One Little Indian



展覧会を構成する3つの要素
「新たなコラボレーション」、「新たな神話・寓話の創出」、「眠り」という3つの要素によって提示されます。 観客は会場を構成するこれらのストーリーを追いながら、その中に配置されたヴィデオや写真、あるいはインスタレーションなどの作品と出会い、それらを読みとり、そして体全体の感覚で知覚しながら展覧会を体験していくことになります。

1. 新たなコラボレーション

ユジャン・バフチャル(スロベニア)
マヤ・バイェヴィッチ(ボスニア=ヘルツェゴビナ)
フィリップ・パレーノ(フランス)
フセイン・チャラヤン(イギリス)
アピチャポン・ウェラセタクル(タイ)
曽根裕(日本)


フセイン・チャラヤン
東京オペラシティでの展示風景
photo by GOTO Mitsuru



本展の最も主要な部分を占める「新たなコラボレーション」の部分では、知的なコラボレーション、従来にはなかった密接な感性の共有といった、コラボレーションの新しい形態が示されます。盲目の写真家ユジャン・バフチャルが見せる、モデル、友人、アシスタントとのコラボレーションによる写真は、視力を失った作家が、モデルの声とアシスタントの補助を頼りにモデルの身体に照明をあてながらシャッターを切っていったものです。彼はその後できあがった写真を友人の説明を聞きながら選んでいきます。こうした制作の課程そのものが親密な信頼感にもとづいたコラボレーションであり、私たちに提示される写真は、「光の手」による触覚が作家の目の代わりに対象を確認していくといった新鮮なヴィジョンに満ちています。


ユジャン・バフチャル
《Vue tactile》
Courtesy the Artist


アピチャポン・ウェラセタクル
《幽霊の出る家》
photo by GOTO Mitsuru



都市を背景に、難民の女性たちとの共同パフォーマンスで美しい映像を生み出すマヤ・バイェヴィッチ。お蔵入りしていたアニメの少女キャラクター「アン・リー」に新たな生命を吹き込んで映像作品として蘇らせるフィリップ・パレーノ。カリフォルニアUCLAの学生19人と一緒に、スキー、スケートボード、サーフボードといったスポーツ系の「乗り物」を作り、たった一日のうちにこれらの乗り物を駆使して山から海へと移動しつつカリフォルニア・ライフを満喫するヴィデオ作品≪最も美しい一日≫を見せる曽根裕などもコラボレーションによる新たな世界を見せてくれます。


マヤ・バイェビッチ
《men at Work》
1999
Courtesy the Artist and City of Kanazawa


フィリップ・パレーノ
《Anywhere Out the World 》
2000
Courtesy the Artist and Air de Paris



2
. 新たな神話・寓話の創出

マグナス・ヴァリン(スウェーデン)
ユジャン・バフチャル(スロベニア)
ジェーン&ルイーズ・ウィルソン(イギリス)
デビッド・ヌーナン(オーストラリア)
クリス・カニングハム(イギリス)
オマー・アリ・カズマ(トルコ)
小谷元彦(日本)


オマー・アリ・カズマ
《ワッツ・アップ》
2000
Courtesy the artist



第2番目の要素は新たな神話・寓話の創出です。これは多くの物語やイメージが語り尽くされてしまったあと、いわゆる通常の五感とは異質の、特異な感覚を持ち合わせた人間によって語られる新たな物語を示します。 自身が身体的な障碍を持ち、それゆえの視点がなければ作り出すことができない状況を、独特のヴィジョンとスピード、色彩をもったCGアニメーションで表現するマグナス・ヴァリン。また盲目の写真家ユジャン・バフチャルもこの要素の中でとらえることができるでしょう。


マグナス・ヴァリン
《Limbo》
1999
Courtesy the Artist



見るものの身体が幽体離脱していくかのような独特の映像空間によって、旧ソヴィエトの無人の宇宙飛行士訓練基地の中を見せていくジェーン&ルイーズ・ウィルソンの≪スター・シティ≫、あるいは宇宙空間での人間の孤立と宇宙との一体感を新鮮な視点でみせるデビッド・ヌーナン、エイフェックス・ツインやビョークなどのビデオ・クリップを手がけ、MTV界の寵児から現代美術界に突然転身して話題となり、最新の特殊効果映像とサウンドを駆使して身体の異化のイメージをグロテスクかつ鮮烈に描くクリス・カニンガム。そして同じくグロテスクなイメージにユーモアを加味して残酷に見せる小谷元彦。これらの作品は、宇宙人あるいはミュータント(突然変異体)によって物語られるロマンティックな寓話と見ることもできます。


ジェーン&ルイーズ・ウィルソン
《Star City》
2000
Courtesy the Artist and Lisson Gallery


デヴィッド・ヌーナン
《99
2000
Courtesy the Artist


クリス・カニンガム
《Come to Duddy》
2000
Courtesy Anthony d'Offay Gallery



3
. 眠り

フランシス・アリス(ベルギー)

第3番目の要素は「眠り」です。それは、私たちがインターネットを通して世界中の情報を追っている一方で対照的に存在する、意識下において静かに共有されている深い海のような世界を示します。フランシス・アリスのスライド・プロジェクション作品≪眠るものたち≫は、メキシコシティの路上で眠る人々や動物の姿を捉えたイメージから構成されるもので、私たちを自我から離れたもう一つの共生の次元、つまり無意識の中で共有される眠りの世界へと私たちを誘います。


フランシス・アリス
《Sleepers》
2000
Courtesy the Artist and the Artist



関連イベント
◎アーティスト・トーク
参加アーティストによるアーティストトークを会場内で行います。

日時:10月6日[土]13:00
場所:東京オペラシティアートギャラリー
出演予定アーティスト:オマー・アリ・カズマ、デヴィッド・ヌーナン、小谷元彦


◎レクチャー
第7回イスタンブール・ビエンナーレ展のアーティスティック・ディレクター長谷川裕子氏によるレクチャーを開催します。メインコンセプトとして掲げられている「エゴフーガル」とは何か?参加アーティストのセレクションをはじめ、大規模な国際イベントの総指揮者としてダイナミックに世界と「渡り合っていく」同氏のパワフルな活動について語っていただきます。

日時:10月20日[土]14:00
場所:東京オペラシティ7F会議室




インフォメーション
期間:2001.10.6[土]─ 12.24[月・祝]
開館時間:12:00 ─ 20:00(金・土は21:00まで、最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)

入場料:一般\1000(\800)、大高生\800(\600)、中小生\600(\400)
※収蔵品展009「紙のうえの仕事─寺田コレクションより」project N 08「今澤 正」の入場料を含みます。
※( )内は15名以上の団体料金、その他割引制度あり
※週末は中小生無料。
※割引の併用はできません。

主催:(財)東京オペラシティ文化財団/イスタンブール文化芸術基金
協賛:日本生命/NTT都市開発/小田急電鉄
協力:松下電器/Panasonic
後援:トルコ共和国大使館
特別協力:


お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel.03-5353-0756