プロジェクトN

project N 80
守山友一朗 MORIYAMA Yuichiro

2020.10.10[土] ─ 12.20[日]

《Crystals on a table》
《Crystals on a table》
油彩, キャンバス
112.0 × 144.5 cm
2020
photo: Kei Okano
ありふれた日常の輝き ── 守山友一朗の絵画

守山友一朗が描く絵はあまり油彩画らしくない。確かに油絵具をもちいているのだが、マットな質感は油彩画よりも、むしろ水彩画や日本画を思わせる。それはむろん、彼の独特な表現技法によるところが大きい。ごく薄く溶いた絵具をもちいて制作することで、彼の作品には油絵らしい光沢がほとんどみられないのだが、それだけではない。守山は異なる色彩のタッチを重ねることなく、作品を完成させる。爽やかな風にそよぐ新緑の枝葉にしても、南仏のまばゆい陽光にきらめく水面にしても、地面を覆い隠すほどに群生する草花にしても、ほとんど絵具が塗り重ねられていないことに気づく。一見何気ないその画面を仔細に眺めれば、たいていの場合、白く塗られたようにみえる箇所は、下地のホワイトが何ら色を加えられることなく、文字どおり無垢のまま露になっていることがわかる。絵具をほとんど塗り重ねずに複雑なイメージを表現する手法は禁欲的(ストイック)といってよいだろうが、この手法で、守山は100号大の作品をいとも容易く制作する。しかも、下地を施すのみで、下描きもほとんど描かないことを知れば、その制作は、禁欲的であると同時に、曲芸的(アクロバティック)といっても過言ではないかも知れない。

《Emerald》

《Emerald》
油彩, キャンバス
130.3 × 162.0 cm
2020
photo: Kei Okano

こうした独特な制作方法のほかにも、いくつか指摘しておくべき特徴がある。ひとつは構図だ。守山の作品は、屋外の風景を描くものと室内の情景を描くものに大別できるが、そのいずれの作品でも、やや上方から見下ろした構図が多い。ごくありふれた俯瞰構図といえばそれまでだが、自身が目にした光景をその場でスケッチしたかのような ─ というより、カメラで撮影したといった方が近いのだろう ─ ごく自然な視点は、作品全体の平明な印象ともあいまって、描かれたイメージをみる者にとっても親密で、どこか懐かしさすら感じさせることに寄与している。俯瞰構図は、守山の作品にいわば等身大の親しみやすさを与えているといえるだろう。
もうひとつは、明るく透明感のある色彩表現である。すでに述べたように、画面上でほとんど絵具を塗り重ねないというルールを自らに課すことで、画家は明澄な色彩を実現している。この禁欲的な制作方法はまた、視覚的にも特別な効果をもたらしている。通常は絵具の重なりが、個々のモティーフの前後の位置関係や遠近感にそのまま結びつき、画面に奥行きや空間性を感知させる。だが、そうした層(レイヤー)を欠き、色彩のうえではすべてが等距離に置かれた守山の作品では、奥行きや空間性の表出は、画面に描かれた個々のモティーフを知覚する鑑賞者の認識や想像に委ねられているといってよい。そういう点では、点描主義の画家たちが、パレットのうえで絵具を混ぜ合せることを避け、キャンバスにじかに置いて、鑑賞者の網膜上での混合を企図したことと相通じるものがある。

《Prologue》

《Prologue》
油彩, キャンバス
oil on canvas
194.0 × 112.0 cm 2019
photo: Kei Okano

下描きのない画面のそこかしこに、守山は薄く溶いた絵具の色を少しずつ、丁寧に加えてゆき、こうして徐々にイメージが立ち現れてくる。はじめ茫洋としたイメージが次第に明瞭なものへと変化していくさまは、さながら暗室で現像液に浸けた印画紙にゆっくりとイメージが浮かび上がる過程を想起させる。実際、守山が描くのは、彼が訪れた先々で目にした光景だ。かつてみたその光景を、記憶をたどり、当時の新鮮な感動を呼び起こしながら、守山は画面に定着させている。
このように考えてみると、守山友一朗の制作の根底にあるものは、彼が世界に向き合う際の姿勢に違いない。守山は、14年にわたり滞在したフランスでの日常生活や、休暇で訪れたヨーロッパ各地で目にした光景を、研ぎ澄まされた鋭い感受性によって捉え、表現する。 人々が水遊びをするニースの海辺、初夏の木漏れ日、一輪挿しのバラ、宮殿の小部屋、端正で調和のとれた室内 ─ 守山の描き出すイメージは、けっして劇的なものでも、また、奇想天外なものでもない。すべては、彼が捉えた日常にさりげなく潜む美であり、守山はそれをキャンバスに表現する。不思議な温もりを湛える守山の作品が共感を呼ぶのは、それがたんなる再現描写にとどまらず、その折々に彼の心の琴線を揺り動かした新鮮な感動が、色褪せることなく画面に深く刻み込まれているからだろう。




ギャラリー展示風景 ギャラリー展示風景
ギャラリー展示風景 ギャラリー展示風景
展示風景

守山友一朗
1984 熊本県生まれ
2010 パリ国立高等美術学校卒業(アトリエ アルベロラ)
2012 パリ国立高等美術学校修了(アトリエ アルベロラ、DNSAP)
東京都在住
   
主な個展
2015 「Les Mémoires sur la Table」, グリーン・フラワーズ・アート・ギャラリー, ブローニュ=ビヤンクール, フランス
2015 タンナー工場跡カルチャー・スペース市立ギャラリー, フェリエール=シュル=リール, フランス
2015 クレテイユ市アート・ギャラリー, クレテイユ, フランス
2016 「Try to remember」, グリーン・フラワーズ・アート・ギャラリー, ブローニュ=ビヤンクール, フランス
2018 「Brise」, ギャルリー・ヨシイ・パリ, フランス
2019 「Etoiles et Brise―星とそよ風」, SCÈNE, 東京
   
主なグループ展
2014 「『Novembre à Vitry』絵画賞展」, ジャン・コレ市立ギャラリー, ヴィトリー=シュル=セーヌ, フランス
2015 「COLLECTIVE PAPIER」, グリーン・フラワーズ・アート・ギャラリー, ブローニュ=ビヤンクール, フランス
2015 「幼年期」, グリーン・フラワーズ・アート・ギャラリー, ブローニュ=ビヤンクール, フランス
2016 「CRAC2016 第15回シャンピニィ・コンテンポラリーアート・ビエンナーレ」, ジャン・モルレ・ホール, シャンピニィ, フランス
「Nos premiers 10 ans」, グリーン・フラワーズ・アート・ギャラリー, ブローニュ=ビヤンクール, フランス
2017 「Carte blanche aux galleries d’art 2017」, エスパース・ランドウスキー, ブローニュ=ビヤンクール, フランス
2017 「Suspension」, ギャルリー・ヴィルジニィ・ルヴェ, パリ, フランス
   


■インフォメーション

会場:東京オペラシティ アートギャラリー 4Fコリドール
期間:2020.10.10[土] ─ 12.20[日]
開館時間:11:00 ─ 19:00(入場は18:30まで)


休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
入場料:企画展「生誕100年 石元泰博写真展 伝統と近代」の入場料に含まれます。
(ご来館は日時指定の予約制となっております。詳細はこちらをご覧ください。)

主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団

お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

開館日時

  • 2020年10月31日[土]
    本日の開館時間 11:00 - 19:00
  • 2020年11月1日[日]
    本日の開館時間 11:00 - 19:00
  • 2020年11月2日[月]
    本日は休館日です
  • 2020年11月3日[火]
    本日の開館時間 11:00 - 19:00
  • 2020年11月4日[水]
    本日の開館時間 11:00 - 19:00
  • 2020年11月5日[木]
    本日の開館時間 11:00 - 19:00
  • 2020年11月6日[金]
    本日の開館時間 11:00 - 19:00

1週間分の予定を表示