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髙畠依子の絵画には、独特の気配があります。よく雰囲気(ムード)などと呼ばれるものに似ていますが、髙畠の絵画の場合、それは、雰囲気と呼ぶよりもむしろ、気配、居ずまい、あるいは佇まいという言葉で呼ぶ方が相応しいように思われます。居ずまいや佇まいなど、美術作品に対してふだんもちいないような言葉が似つかわしく感じられるのは、彼女の作品のコンセプトによるところが大きいでしょう。
《Winter wonder》
重層する糸状の絵具とともに、ひまわりなどの花柄が規則正しく配置された画面は、みる位置や角度によって微妙に異なる表情を示します。視線を錯乱させる点で、髙畠の作品はオプティカル・アートを想起させるでしょう。抽象性という点においても、また、しばしば装飾的である点においても、オプティカル・アートに酷似しているといえるかも知れません。とはいえ、髙畠の絵画における絵具の糸は、オプティカル・アートのように決して機械的、無機的なものではなく、遠目には直線のようにみえる線も、かすかに曲がりくねり、そこかしこでほつれや途切れをみせて、手仕事の痕跡をはっきりと示しています。
![]() 《水浴》 このような手仕事への憧憬にも似たアプローチは、髙畠が実際に服の生地サンプルを取り寄せたり、購入して、コレクションしていることとも深く関わっているでしょう。生地だけでなく、そのコレクションは、ボタン、レース、ボア、リボン、皮、ビーズ、壁紙にまで及んでいます。彼女のスクラップブックはこうした関心が端的に表われています。生地などの素材とともに、彼女自身が描いたドローイングや気になった雑誌のビジュアルイメージの切り抜きが一緒に収められ、素材とドローイング、ドローイングと切り抜きなど、左右のページのさまざまな組合せが喚起する豊かな視覚体験が、絵画の在り方をあらためて見直す大きな契機になったそうです。こうして、絵画、素材、切り抜きなどを組合せる(=コーディネートする)ことで、それらを包み込むようなみえないヴェールを知覚させ、鑑賞者の内面に作用するような作品体験を作家は目指しています。
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髙畠依子 TAKABATAKE Yoriko | |
1982 | 福岡県生まれ |
2008 | 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業 |
2012 | ロイヤル・アカデミー・スクール(ロンドン)交換留学 |
2013 | 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了 現在, 東京藝術大学大学院美術研究科博士課程美術専攻在籍 茨城県在住 |
主な個展 | |
2009 | 「I like it.」, ギャルリー東京ユマニテlab, 東京 |
主なグループ展 | |
2010 | 「DANDANS at No Man's Land」, 在日フランス大使館旧庁舎, 東京 |
2013 | 「大庭大介キュレーション“TRICK-DIMENSION”」, TOLOT / heuristic SHINONOME, 東京 |
2013 | 「アートアワードトーキョー丸の内2013」, 丸の内行幸地下ギャラリー, 東京 |
2013 | 「PARK ART SHOW」, 伊勢丹 新宿本店, 東京 |
2013 | 「KISS THE HEART #3」, 日本橋三越本店, 東京 |
2014 | 「絵画の輪郭」, シュウゴアーツ, 東京 |
会場:東京オペラシティ アートギャラリー 4Fコリドール
期間:2014.10.18[土] ─ 12.23[火・祝]
開館時間:11:00 ─ 19:00(金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日。ただし、12月22日[月]は開館)
入場料:企画展「ザハ・ハディド」、収蔵品展049「抽象の楽しみ」の入場料に含まれます。
主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)