◎収蔵品展005
スピリチュアル・ガーデン
スピリチュアル・ガーデン

2000.10.22[日]― 12.28[木]


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収蔵品展005となる「スピリチュアル・ガーデン」では、寺田コレクションのなかからキリスト教的な信仰やそのテーマへの関心にもとづく作品、超自然的・心象的な世界を描いたものなど、いずれも目に見えない個々の精神世界に通 じる作品群を選んで、全体を構成しています。現在の美術表現において、宗教的な信仰心や「聖」なるものを直接的に表現することは、もちろん中世以前とは比較になりませんが、目に見えない世界への想像力、無意識との交感など、心の奥底にある世界を視覚化するという意味において芸術と宗教は、相互に通 じ合う関係にあるといえるでしょう。

代表作《長崎26殉教者記念像》で知られる舟越保武は、マグダラのマリア、聖セシリア、聖クララなどの聖人像、島原の乱におけるキリシタン殉教地の原城跡(長崎県)をテーマにした《原の城》などを制作しています。生前、舟越とも親交のあった難波田龍起は、キリスト教の信仰こそ持ってはいなかったものの、心象世界を描くことで 抽象絵画の可能性を深めた作家です。ことに高く評価されている晩年の《生の記録》と題されるシリーズ等では、その心象世界を通 過して魂だけがすでに黄泉の国へ到達しているかのような錯覚さえ感じさせます。

また、自らの信仰心を作品に表現したジョルジュ・ルオーは、近代芸術に宗教的要素を自然に融合し、シャガール等とならんで多くの支持を得ている作家。荒木高子は、聖書への深い関心をとおして人間と物質の関係を問い続け、「聖書」をモチーフにした寡黙にして力強く奥深い作品を制作。丸みを帯びた素朴な風貌の人物像を制作する中野滋、その行く末への想像が膨らむ川上力三の階段のある立体、金属と木材を組み合わせ不思議な物語的雰囲気を醸し出す保田井智之の立像、あるいは、現実と非現実の狭間を自由に往来し浮遊する人物を描いた加藤清美の油彩 、神秘的な宇宙を思わせる心象風景を描いてきた奥山民江の近作、太陽のシリーズなど、いずれも作者の内面 にある精神世界がそれぞれ独自の表現でもって具現化され、極めて荘厳で静謐な空気を運ぶ作品群となっています。

みなさんのなかにある魂の庭、"スピリチュアル・ガーデン"と現実世界を往来できる想像力を持ち、他者とのコミュニケーションを図るための余白を心象世界のキャンバスに残しておくことが、来たるべき共生の時代に明るい日差しと新鮮な空気を送り込むための鍵となることを、世紀のおわりにあたるこの機会に覚えておきたいものです。

出品作家:荒木高子、奥山民枝、加藤清美、川上力三、ケーテ・コルヴィッツ、ギュスターヴ・ドレ、中野滋、難波田龍起、難波田史男、長谷川潔、深井隆、舟越保武、保田井智之、ジョン・マーチン、望月通 陽、吉岡正人、吉田芳夫、ジョルジュ・ルオー(五十音順)

難波田龍起《西方浄土2》
難波田龍起《西方浄土2》
油彩、キャンバス/80.3×100.0cm
1976

舟越保武《セシリア》
舟越保武《セシリア》
ブロンズ/50.5×48.0×29.0cm
1980

荒木高子《点字の聖書》
荒木高子《点字の聖書》

18.5×44.0×39.0cm
1985
深井隆《逃れゆく思念─光風 II》
深井隆《逃れゆく思念─光風 II》
木、金箔
142.0×83.0×53.0cm
1994
加藤清美《出現 II》
加藤清美《出現 II》
油彩・キャンバス
40.0×31.5cm
1981

インフォメーション
期間:2000.10.22[日]― 12.28[木]
開館時間:12:00 ― 20:00(金・土は21:00まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日

入場料:一般\300(\200)、大学・高校生 \200(\150)、中学・小学生 \100(\50)
( )内は15名以上の団体料金、その他割引制度あり
企画展「リュック・タイマンス展」のチケットでもご覧いただけます。

主催:(財)東京オペラシティ文化財団
協賛:日本生命/NTT都市開発/小田急電鉄

お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756