◎生の交響詩 難波田龍起展 日本的抽象の創造と展開

nanbata tatsuoki

1999.12.3[金] 2000.2.20[日]


日本的な詩情を湛えた抽象表現の一つの到達点ともいわれる難波田龍起(1905-97)。この展覧会は、彼の初期から晩年にいたる代表作品(油彩約90点、水彩約80点、版画約50点)を一堂に集めて展示し、画家・難波田龍起の活動の全貌を回顧するものです。

東京オペラシティアートギャラリーには、難波田龍起の最大のコレクションとして知られる「寺田コレクション」が収蔵品として収められています。本展覧会では、この「寺田コレクション」に含まれる約300点以上を数える難波田龍起作品の中から、油彩約30点、水彩・版画等約100点を厳選して展覧会の軸とし、そのほか各地の美術館に収蔵される彼の代表作を集めて展覧会を構成いたします。

難波田龍起は、70年以上におよぶ画家としての活動を通し、一貫して真摯な姿勢をつらぬき、生涯、自身の内面との対話の中から、日本的詩情あふれる抽象表現の可能性を追求しつづけました。彼の作品から広がる晴朗、澄明な抽象の世界は、一人の人間がその「生」をかけて取り組むことによってのみ得られる、魂の結晶とも呼ぶべき輝きに満ちています。そしてその輝きは、画面上に表現される色調(トーン)と形象(フォーム)に対する彼の徹底した厳しさによって支えられています。



難波田龍起 略歴 NAMBATA Tatsuoki

(c)Toru MIsawa

1905 旭川に生まれる 翌年には家族と東京に移り住む
1924 このころから高村光太郎のアトリエを訪れるようになる
1926 早稲田大学政経学部入学
1929 第4回国画会展 入選
1930 難波田龍起個人展覧会開催(本郷)
1935 [フォルム]を結成
1937 自由美術家協会の結成に参加(1959年退会)
1950 以降 日本アンデパンダン展、美術団体連合展、朝日選抜秀作美術展、毎日現代美術展、日本国際美術展、日本秀作美術展などに多数出品
1961 北象会(北海道出身の抽象画家8人による)結成
1973 「戦後日本美術の展開―抽象表現の多様化」展(東京国立近代美術館)
1974 次男・史男、瀬戸内海で死去 享年32歳
「難波田龍起自選展」(フジテレビギャラリー)
1977 「難波田龍起近作展」(フジテレビギャラリー)
1982 「形象の詩人 難波田龍起展」(北海道立近代美術館、北海道立旭川美術館)
1987 「今日の作家 難波田龍起展」(東京国立近代美術館)
1988 第29回毎日芸術賞(1987年度)受賞
1989 「石窟の時間 ─ 難波田龍起個展」(銀座アートセンターほか)
1994 「難波田龍起展 1954年以降 ― 抽象の展開・生命の響き」(世田谷美術館)
1995 北海道新聞文化賞受賞
1996 文化功労者として顕彰を受ける
1997 11月 世田谷区内の病院で死去(享年92歳)


難波田龍起:人と絵画
龍起が絵画を始めるきっかけは詩人・彫刻家の高村光太郎との出会いでした。光太郎のアトリエのすぐ近くに住んでいた高校生の龍起は、自作の詩を携えて光太郎のアトリエに通ううちに、彼の生き方や芸術観に非常に強い影響を受け、絵画の道を志すようになりました。

龍起は高村光太郎や、一時、川島理一郎に師事しながらも、ほぼ独学で絵画を学び、70年以上に及ぶ画業の間、最後まで独立の精神を貫きました。自由でありながら一方で厳しいまでに色や形を追い求めた龍起は、西洋にはない独自の抽象絵画を確立したのです。




《Votive Relief》
油彩・キャンバス/72.7×90.9cm
1935
 

《私のパレット》
油彩・キャンバス/37.5×45.0cm
1953
 

《狂詩曲》
油彩・キャンバス/130.3×162.1cm
1962




難波田龍起の絵画には音楽を感じるといわれます。幾重にも重なる旋律のように、微妙に変化する色調はフーガやカノンといった音楽にたとえられることもあります。彼の絵画からは、時にはジャズのようなリズムと共に、刻々と変わる色彩の躍動感があふれてきます。高村光太郎は龍起の絵について、彼の色調には「触覚」が感じられると表現しました。手のひらにその存在感がつかめるような実感ある色彩。ポリフォニックに多くの色を使いながら立ち現れてくる美しさ。それによって龍起は独自の生命感あふれる画風を確立しています。晩年、死の床で描かれたシリーズ「病床日誌」などは、紙に何色ものサインペンを重ねた力強い作品です。サインペンの発色を用い、重ねられた色はハッとするほど現代的なニュアンスをたたえています。

難波田龍起の絵画のメッセージは、見る人の感受性を刺激し、今そこにいる自分の感覚を再認識させてくれることでしょう。





《青の詩》
油彩・キャンバス/130.3×162.1cm
1962
 

《五月の陰影》
油彩・キャンバス/100.0×80.0cm
1974
 

《暁》
油彩・キャンバス/130.0×162.1cm
1991



現代美術の展示スペースとしてオープンした東京オペラシティアートギャラリー。そこで開催されるこの展覧会では、龍起の絵画の現代美術的な側面を引き出すような展示をします。装飾を一切排し、白を基調とした展示室は、6メートルの天井高をもつ自然光がふんだんに入る明るい空間です。こうした空間を使って展示する難波田龍起の抽象絵画の中に、新しい絵画と自分の距離を見つけてください。


作品写真

《生の記録3》/油彩・キャンバス/162.1×390.9cm/1994


抽象美術は 人間の空想力や 想像力を取り戻すものである。
そして、目に見える現実のみに執着する人間の心を
もっと広い世界 目に見えない世界へ解放するのである。
―難波田龍起―



関連講演会
Vol.1 小林俊介 氏(山形大学教育学部助教授)
「難波田龍起-『抵抗』の画家-」

日時:1999.12.11[土] 14:00 ―16:00

Vol.2 谷新 氏(宇都宮美術館館長)「難波田龍起と日本の近代美術」

日時:2000.1.8[土] 14:00 ―16:00

会場:近江楽堂(東京オペラシティ3F)
定員:先着100名(電話で事前にお申込ください。定員に満たない場合は、当日会場でも受付いたします。)
お申し込み:東京オペラシティアートギャラリー Tel.03-5353-0756


インフォメーション
期間:1999.12.3[金] 2000.2.20[日]
開館時間:12:00 ― 20:00(金・土は21:00まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、年末年始、全館休館日(2/13)

入場料:一般 ¥1,000(¥800)、大学・高校生 ¥800(¥600)、中学・小学生 ¥500(¥400)
( )内は15名以上の団体料金、その他割引制度あり
project N
01「南川史門展」の入場料を含みます。

主催:(財)東京オペラシティ文化財団/読売新聞社
協賛:日本生命/NTT都市開発/小田急百貨店
協力:山大鉄商
後援:文化庁

お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel.03-5353-0756