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Interview


◎ミシェル・ベロフ特別インタビュー

メシアン《幼な子イエスにそそぐ20のまなざし》を語る

この曲は、私の心の中に住みついているのです― 愛しい人のように。

ミッシェル・ベロフ
ミシェル・ベロフ
2000年6月18日 リューベック(ドイツ)にて
写真:国塩哲紀(東京オペラシティ文化財団)


K(国塩):ベロフさんはデビュー以来、今までに何度も《20のまなざし》を演奏されてきていますし、録音も2度行っていますね。ですからこの作品との付き合いも非常に長いと思うのですが、ベロフさん自身のこれまでの生活なり生き方の中で、この曲に対する解釈が変わったということはありますか?

B(ベロフ):とても若い頃に出会った作品の場合、たとえばそれから何年かしていろいろな事を経験していく内に、やはり曲に対する解釈なり、気持ちなりが変わってくると思います。しかしメシアンの作品に関して、それが当てはまるかどうかは難しい所ですね。なぜなら彼の曲を演奏する際には、何らかの神秘的なものを自分の中に持ち合わせていなければならないからです。メシアンと同じ宗教を信仰しなくてはならないとか、そういったわけではありませんが、神秘主義に対して同じようなインスピレーションや想いを抱いていないといけない。もしそういった何かを自分の中で獲得していれば、作品自体がおのずと語りかけてくるものなのです。シューベルトのソナタみたいにはいかないのです。シューベルトのソナタを弾く時に、彼の意志を明確に理解しておく必要はありませんからね。しかしメシアンの場合、ある意味とても閉ざされた世界なのです。ですから彼の世界へのアクセスがあるならば(彼の世界に通じるところがあるならば)、いくら若くても多くをもたらすことが可能です。そしてもし彼の世界へ近づくことが出来ないのであれば、作品を弾かない方がいいでしょう。


― 私の人生と共に生きてきた作品

B:この作品は私の人生と共に生きて来たと言えるでしょう。そしてこれからもまた、長い年月を共に生き続けると思いますし、そうありたいと願っています。私のキャリアの出発点にメシアンがあったわけですし、ある意味それは記念碑的なものになっていますね。たとえ何年間かこの作品を弾いていなくても大丈夫なのです。なぜなら、すでにこの曲は私の中にあるから。天からのお告げのようなものですね。この作品を弾くようになった時私はとても若かったのですが、それから月日が経ち、今ではずいぶん歳をとってきて・・・本当に私の中に住みついているのです。例えば長年の付き合いのある愛しい人のように、ずっと会っていなくてもその人の事は常に心の中にあるのです。相手に対して常に同じ想いを抱いていられるのです。

K:お話を伺っていると、ベロフさんの《20のまなざし》がますます楽しみになってきました。この曲を聴きにきてくださる方たちにメッセージをいただけますか。

B:この作品を聴く事は、ある意味で「教え」であると思うのです。聴く前とその後では別人になっていると思うのです。音楽があまりにもすごいし、この作品の中で時間は存在しませんから。もちろん有名な作品なので有名な主題など聞きおぼえのある部分が出てくると思いますが、時間という存在はなくなってしまうべきなのです。この曲の世界に浸るといった印象を受けるはずです。ですから、そもそも観客の為には休憩なしで演奏を続けるべきなのでしょうね。ピアニストにとってそれはあまりにも疲労が伴いますが(笑)。ともかく演奏中は全てを忘れ去ってしまうでしょう。時間や、自分が誰なのか、といったことをね。別世界へ行ってしまうし、そもそもこの世界で持っているもの全てを置いて来てから演奏会へ来るべきだと思います。そうですね・・・瞑想に近いかもしれませんが、それよりももっと強いメッセージ性を放っているでしょう。聴衆は、ただ単に見て聴くと言う事を要求されるだけでなく、参加を余儀なくされるのです。その世界へ入り込まなければなりません。あらゆる知識や参考になる事象をすべて置いて来て、音楽に身を委ねるべきですね。

K:さて、前回私どものコンサートホールにいらした時、ラヴェルの協奏曲をサロネン氏と共に演奏してくださいました。ホールのことはおぼえていらっしゃると思うのですが、メシアンの作品にはぴったりの会場だと私は考えています。なぜならその残響や音響が合っていますし、建物のデザインも教会のような雰囲気を持っています。

B:そうですね、教会のようですし、パイプオルガンが空に向かって伸びているような感じですね。しかも大きすぎないから、奏者が観客とコミュニケーションを持つ事ができる空間になっています。すべて木で造られていて、音響も素晴らしいですね。天井も高く、演奏するのに最適です。デザインもシンプルで本当に美しいホールだったので驚きました。演奏家にとっても最高のホールだと思いますよ。とても気に入っています。

K:どうもありがとうございました。11月に東京オペラシティでお目にかかるのを楽しみにしています。

(取材協力:梶本音楽事務所)


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