エッセイ:フィリップ・ジャルスキー&アンサンブル・アルタセルセ 聴衆を熱狂させるバロック・オペラの永遠の貴公子

井内美香(いのうち・みか/オペラ・キュレーター)

雲の切れ間から地上に光がさしている状態を『天使のはしご』と呼ぶそうだ。カウンターテナー歌手フィリップ・ジャルスキーの声を聴くと、まさにその光景が見えてくる気がする。

ヨーロッパではもはやクラシック音楽の主流と言ってもいい程の、バロック・オペラの流行を牽引しているのは女王チェチーリア・バルトリとジャルスキーの二人だ。純度の高い、たまらない美しさを持った天使のような声。その声が、ある時は甘く、ある時は激しく、そしてある時はたくらみを孕んでささやきかける。それは天使の声なのか?それとも悪魔の声?

ロシアの血を引いてフランスに生まれたジャルスキーは、ヴァイオリンとピアノを学んだ後、18歳で声楽に転向した。卓越したテクニックと、天賦の〈音楽に身を委ねる〉才能により、若くしてすぐに頭角を現した彼は、ちょうど大きなブームが来ていたバロック・オペラのスター歌手になった。ジャルスキーがフランスのTV番組で歌ったヴィヴァルディ作曲『ジュスティーノ』からのアリアVedrò con mio dilettoは、YouTubeで500万回近く視聴されている。

近年もジャルスキーの快進撃は続いている。チェチーリア・バルトリと共演したヘンデル作曲『ジュリオ・チェーザレ』、パトリシア・プティボンやバルトリと共演しているヘンデル『アルチーナ』、グルックの『オルフェオとエウリディーチェ』、どのオペラでも聴衆は彼の歌に、彼の演技に熱狂する。

気品とユーモア。ジャルスキーの二つの大きな個性だ。彼の立ち居振る舞いは常に高貴な雰囲気に満ちている一方で、作品によっては思い切ったコミカルな演技も辞さない。そして2002年に彼が設立したアルタセルセのメンバーたちとの抜群のアンサンブルは、観客の心をつかんで離さないのだ。カウンターテナーが5人競演し、バロック・オペラ・ブームの火付け役にもなったヴィンチ作曲『アルタセルセ』の、彼が歌った慈悲深い若き王の名前を冠したグループとの、めくるめくステージが待っている。

■公演情報

フィリップ・ジャルスキー
&アンサンブル・アルタセルセ

2020年3月13日[金]19:00
会場:コンサートホール

[出演]

フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)
アンサンブル・アルタセルセ

[曲目]

ヴィヴァルディ:

  • ●歌劇『オリンピーアデ』序曲
  • ●カンタータ《やめてくれ、もうやめてくれ》
  • ●歌劇『オリンピーアデ』より リチダのアリア「眠っている間に」
  • ●歌劇『オリンピーアデ』より レチタティーヴォ「この剣で…」とリチダのアリア「私は呻き、同時に震える」

ヘンデル:

  • ●歌劇『ジュリオ・チェーザレ』より セストのアリア「傷ついた蛇はけっして休まぬ」
  • ●コンチェルト・グロッソ op.6より
  • ●セレナータ『パルナッソス山の祭礼』より
    オルフェーオのレチタティーヴォ「愛する人を失った後に」とアリア「私は愛しい人を失くしました」
  • ●歌劇『ラダミスト』より ラダミストのアリア「私の妻の愛しい亡霊よ」
  • ●歌劇『ラダミスト』より
    ラダミストのレチタティーヴォ「さあ来い、無慈悲な亡霊よ」とアリア「臆病者め、ぼくを生かしておこうと」

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[料金](全席指定・税込)

S:¥9,000 A:¥7,000 B:¥5,000

[チケット情報]

東京オペラシティチケットセンター
03-5353-9999(電話 10:00〜18:00/店頭 11:00〜19:00/月曜定休)

コンサート情報

フィリップ・ジャルスキー
&アンサンブル・アルタセルセ


2020年3月13日[金]19:00
会場:コンサートホール

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東京オペラシティ コンサートホール/リサイタルホール


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