合唱メンバーが語る、
バッハ・コレギウム・ジャパンで聴く、ベートーヴェン《第九》の魅力。

2017年2月3日「バッハ・コレギウム・ジャパン ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》」公演より
©大窪道治

第九といえば、第4楽章で活躍する合唱が何よりも印象的です。毎年演奏会に行く方、合唱に参加した経験をお持ちの方、多くのファンを持つこの名曲ですが、では2019年1月の鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の第九は、毎年数多く演奏される第九とはどう違うのか、演奏者の立場から合唱メンバーに語っていただきました。

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    2017年2月に第九と同じベートーヴェン作曲のミサ・ソレムニスを演奏していただきました。

  • 松井亜希

    いつものバッハとは違う規模の大きさと音楽の圧倒的な力に呑み込まれた体験でした。BCJでいつも演奏している自分ですら、リハーサルが始まるまでどのような音楽が生まれるのか想像がつきませんでした。

  • 藤井雄介

    合唱は第九よりも辛いと聞いていた上に、各パート8人ずつという少なさでしたから不安はありました。しかし始まってみると、重厚さとBCJらしいコンパクトでキビキビした音楽とが相まって、あらたなベートーヴェン観が生まれた気がします。

  • 渡辺祐介

    私は幼い頃からベートーヴェンが大好きでしたが、実はミサ・ソレムニスだけはどうしても好きになれなくて(笑)。どんな大指揮者の名盤を聴いても、なかなかピンとこなかったのですが、8年ほど前にオランダでヘレヴェッへの実演を聴いたときに、「ああ!本来はこういう響きだったのね!」とやっとわかった気がしました。とても透明感のある、これまで聴いたことのないような演奏だったのです。それ以来、いつかは歌ってみたいと思っていたところ、BCJで演奏すると聞いて驚きました。それはそれはキツい曲でしたけど、楽しかったなあ!

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    演奏する上で、バッハとベートーヴェンとは異なりましたか?

  • 松井

    放出するエネルギーの種類が全然違いますね。バッハは、より芯というか、中心を熱く保ちつつ細かくコントロールしますが、ミサ・ソレムニスのときは、常に全開モードでp〜fffを演奏していました。

  • 渡辺

    違いというよりも、バッハでもベートーヴェンでも、古楽でも現代でも、そのレパートリーが本当にやりたいものなのか、ということが重要ではないでしょうか。私もヘレヴェッへのミサ・ソレムニスを聴いていなかったら、あれほど楽しめなかったと思うのです。まずはその曲が好きだ、というところから入りたいですね。そのうえで、ベートーヴェンは晩年になればなるほどエキセントリックになっていった人のようですから、そういうところはどうしても考えてしまいます。一方で、ミサ・ソレムニスでも第九でも、曲のエネルギーに対して、反応しすぎてはダメなのかも、と思う時はあります。ただでさえエキセントリックでエネルギッシュに書いてあるので。

  • 藤井

    たしかに! 曲にやられる。強心剤を強制投与されたような、直接心臓を握られているような感じになることがあります。

  • 松井

    一番投与されたようだったのはマエストロでしたけどね(笑)。

  • 藤井

    マエストロの熱さはいつものことですが、あの時は舞台から落ちないかいつも以上にヒヤヒヤしました。

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    今回は第九です。

  • 松井

    お客様には、まずはドイツ語の明瞭さ、美しさを聴いていただきたいですね。テキストの意味と力をお客様に届けることが私達合唱の役目ですから。

  • 渡辺

    晩年のベートーヴェンは、バッハを相当研究していて、第九も第1楽章から対位法的に書かれているところが多いですが、対位法となるとそれはもうBCJの得意分野ですから(笑)、きっと聴いたこともないくらい細部まできっちり聴こえる演奏になるのではないでしょうか! 合唱では、特にフーガの部分は音の洪水で、響きの渋滞がおこりやすいところですが、BCJのコンパクトなサイズの合唱でしたら、ここでこういうことが起こっていたのね!とたくさん気づいていただけると思います。
    それから、BCJでは、音程と発音についてずっと言われ続けていて(笑)─ なにしろ平均律で演奏することはほぼ皆無ですから ─ でもだからこそお互いの「声の意見」が合っているのです。

  • 松井

    音程の良さ、カンの良さは皆ありますね。そして、音質が大切です。音程や音質の一体感がBCJの合唱の一番の特長だと思います。

  • 藤井

    BCJが普段レパートリーにしているバッハの作品には、ルネサンス的なところも、バロック的、古典的、ロマン派的、全て内包されていると思うので、それをシミュレートしようとしているマエストロとBCJは、どの時代の作品でも、アイデアは豊富な気がします。
    バッハの作品よりもベートーヴェンは、それぞれのパーツ感、部品感とでもいいますか、それがより強いように思います。皆何かの一部分をやっていて、こちらからは全体が見えないのですが、マエストロとお客様が、その全てを見届けている。全貌が見えた時にどうなるのだろうというワクワク感があります。近くで見るとなんだかわからないけれど、遠くで見るとすごい絵だった、みたいな。私たち演奏者は、作品の、そして舞台上で唯一音を発しないマエストロの音楽の部品になるのです。

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    熱いマエストロと、冷静な奏者、というような?

  • 藤井

    それがですね、冷静でいなきゃとは思うのですが、つられてしまう。そう、映画の題名ではないですが、冷静と情熱のあいだに何かある。

  • 渡辺

    ふふふふふ…

  • 松井

    引きずり込まれますね(笑)。それがまたBCJで演奏することの楽しさだと思います。
    冷静と情熱のあいだに何が起こるかは、ライブで目撃できると思いますので、皆様、是非いらしてください。

■プロフィール

  • 松井亜希(ソプラノ)

    ソプラノ。2004年のメサイアプロジェクトからBCJに参加。最も記憶に残っているのは、公演3日前に代役を務めることになったオペラ『ポッペアの戴冠』(2008年)。趣味(楽しみ)は料理すること。
  • 藤井雄介(テノール)

    テノール。BCJ歴13年ぐらい。2006年、初めて参加したヨーロッパツアーにおいて、《ロ短調ミサ》の素晴らしさ、ならびにオリーブオイル&塩でパンを食す美味しさに感動し、現在に至る。
  • 渡辺祐介(バス)

    バス。BCJには2002年4月より参加。アンスバッハ音楽祭での《ロ短調ミサ》演奏後の、怒号のような歓声が忘れられない。趣味は毎日1キロの水泳と料理。

東京オペラシティArts友の会会報誌「tree」Vol.130(2018年10月号)より

■公演情報

バッハ・コレギウム・ジャパン
ベートーヴェン《第九》

2019年1月24日[木]19:00
会場:コンサートホール

[出演]

鈴木雅明(指揮)
アン=ヘレン・モーエン(ソプラノ)
マリアンネ・ベアーテ・キーラント(アルト)
アラン・クレイトン(テノール)
ニール・デイヴィス(バス)
バッハ・コレギウム・ジャパン(合唱&管弦楽)

[曲目]

・ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125《合唱付き》

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[料金](全席指定・税込)

S:¥11,000 A:¥9,000 B:¥7,000 C:¥5,000 (B、C席は予定枚数終了)

[チケット情報]

東京オペラシティチケットセンター
03-5353-9999(電話 10:00〜18:00/店頭 11:00〜19:00/月曜定休)

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コンサート情報

バッハ・コレギウム・ジャパン
ベートーヴェン《第九》


2019年1月24日[木]19:00
コンサートホール

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