インタビュー 大谷研二(合唱指揮者)が語るスウェーデン放送合唱団の魅力

最高峰の実力と人気を誇るスウェーデン放送合唱団が、首席指揮者ペーター・ダイクストラとともに、9月に来日。シュニトケの代表作の一つ《無伴奏合唱のための協奏曲》をメインとするプログラムを披露します。スウェーデンに留学経験のある合唱指揮者、大谷研二氏に、その魅力を語っていただきました。

  • ■大谷さんは1983年からストックホルムに留学されています。スウェーデン放送合唱団をお聴きになる機会はありましたか。
  • もちろんです。それ狙いで留学の地を選びましたから。当時日本でも、エリック・エリクソン指揮でスウェーデン放送合唱団のレコードが出ていて、それまで日本人が体験したことのないような素晴らしい響きと技術で話題になっていたんです。リゲティやペンデレツキなどの現代ものが特に評判で、当時の最先端の合唱、という印象をもっていました。
    当時エリクソンはスウェーデン放送合唱団とストックホルム室内合唱団を指揮していて、大学は引退されていて、週一回授業がある程度。僕は、ストックホルムの音大の聴講生として授業に出席し、毎晩のように放送局に行っては合唱団のリハを聴かせてもらうという、とても贅沢な1年間を過ごすことができました。
  • ■スウェーデンはもともと合唱が盛んなのでしょうか。合唱音楽には北欧のレパートリーも多くありますね。
  • スウェーデンを含め北欧、バルト三国は合唱が盛んです。大国に挟まれ、その支配下にあったフィンランドとバルト三国は、大国の権力に対するプロテストが常にあって、民族性を鼓舞する点で合唱が有効な手段だったと言われています。《フィンランディア》がその例ですね。
    スウェーデンはニルソン、ビョルリンク、ゲッタ、オッターなど名歌手を輩出してきたことでも有名です。合唱団も素晴らしい。なぜだろうと、エリクソンに質問したことがあるんです。そうしたら彼が言うには、スウェーデン語が声楽に向いているのではないかと。行ってみてよくわかったのですが、スウェーデン語というのは、リラックスしてスムーズな発音なんですね。例えばスウェーデン語では「イエス」をドイツ語と同じ「ヤー」というのですが、息を吐いて発音する「ヤー」もありながら、吸いながら「ヤッ」と言ったりもする。息の出入りがしょっちゅうある言語なんです。それとよく聴いていると、話す声と歌う声が共通している。これは日本語ではあり得ないことなので、ハンディが大きいなあと思いました。気取りのない国民性、バランス感覚のよい気質も合唱に合っているように思います。
    レパートリーについて言えば、スウェーデンの作曲家の多くが合唱団と結びついていることが大きいと思います。合唱団出身だったり、合唱指揮者だったりして、どのように書けばいい音がするのか、よくわかっているんです。今回のプログラムにあるサンドストレムも合唱団出身ですね。《新しい天と新しい地》は大変難易度の高い曲ですが、シンフォニックで量感があり、とてもかっこいい響きがします。
  • ■日本の合唱団のレベルアップはめざましく、これらの難曲もこなされていると聞きます。
  • 技術的にはかなりのレベルまで行っていますし、難曲に挑戦したいという意識も高いです。いまや武満さんの《風の馬》を中学生、高校生が歌ったりしますからね。僕の指揮しているアマチュア合唱団は、サンドストレムの曲はほとんど演奏しています。今回のプログラムでいうとペンデレツキの《アニュス・デイ》は、この作曲家特有のトーンクラスターだけでなく、メロディもきれいな曲で、アマチュア合唱団には人気です。
    今回のプログラムのメインとなるシュニトケの《無伴奏合唱のための協奏曲》は、技法を尽くした難曲であるばかりか、演奏時間40分におよび、かつ人数が必要な大曲です。150人で歌うこともあるのですが、スウェーデン放送合唱団は32人ですからね。パートがたくさん分かれている曲をその人数で歌うというのは、個々の技量がすごいからできることです。この合唱団のパワーとサウンドを、効果的に披露するプログラムと言えると思います。東京オペラシティ コンサートホールの空間は、アカペラの合唱に向いていますから、とても楽しみですね。
    日本の合唱団のレベルがアップしたということは、合唱音楽に対する意識が高まり、耳が変わってきた、ということでもあると思います。今回の公演がその意識をさらに高めてくれることを期待しています。

大谷 研二

合唱指揮者。83年ヨーロッパに留学、スウェーデン、ドイツ、イギリスなどで学び、89年に帰国。日本を代表する合唱指揮者の一人として活躍中。現在、NHK東京児童合唱団常任指揮者、東京混声合唱団正指揮者、活水女子大学音楽学部学術研究所教授。NHK-FM『ビバ!合唱』のDJを務めている。

東京オペラシティArts友の会会報誌「tree」Vol.122(2017年6月号)より

■公演情報

スウェーデン放送合唱団

2017年9月14日[木]19:00
会場:コンサートホール

[出演]

ペーター・ダイクストラ[首席指揮者]
スウェーデン放送合唱団

[曲目]

ペルト:勝利の後(1996/98)
S-D.サンドストレム:新しい天と新しい地(1980)
ペンデレツキ:ベネディクトゥス(1993)/アニュス・デイ(1981)
ヴィカンデル:すずらんの王様
シュニトケ:無伴奏合唱のための協奏曲(1984〜85)

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[料金](全席指定・税込)

S:¥5,000 A:¥4,000 B:¥3,000

[チケット情報]

東京オペラシティチケットセンター
03-5353-9999(電話 10:00〜18:00/店頭 11:00〜19:00/月曜定休)

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コンサート情報

スウェーデン放送合唱団


2017年
9月14日[木]19:00
コンサートホール

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東京オペラシティ コンサートホール/リサイタルホール


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