コリン・カリー スティーヴ・ライヒの音楽を語る

現代作曲界のスーパースター、スティーヴ・ライヒの代表作の一つ《ドラミング》(1971)。圧倒的人気を誇るこの大作の東京オペラシティでの全曲ライヴに期待が高まっています。演奏は、まさに《ドラミング》を演奏するために結成された新世代の精鋭集団「コリン・カリー・グループ」。ライヒを驚嘆させたパフォーマンスの日本初上陸を前に、グループのリーダーであり、現代イギリスを代表する俊英パーカッショニスト、コリン・カリーにライヒの音楽と、公演への抱負を語っていただきました。

2012年6月20日 ロンドンにて
取材:小菅由紀  構成:編集部  取材協力:Intermusica

  • スティーヴ・ライヒ
    スティーヴ・ライヒ
    ©Wonge Bergmann
  • ■ライヒの音楽と出会ったのはいつですか?
  • コリン・カリー(以下CC):ティーンエイジャーの頃です。現代音楽はすでにいろいろ聴いていて、自然とライヒの音楽に行きついたのですが、一度聴いて、美しさと色彩、そして打楽器的な魅力を強く感じて、とても惹きつけられました。パーカッション・サウンドのシンプルな組み合わせで、あのように壮大な構造を作り上げる手法は、彼独自の音楽的な言語で、人の心を捉えて離さないものです。
    初めてライヒに会ったのは、1995年、BBCプロムスで《プロヴァーブ》が世界初演されたときです。ライヒに挨拶して握手してもらったのです。18歳くらいの時です。まさかライヒとその後共演することになるとは夢にも思っていませんでしたね。
  • ■その頃には、ソロ・パーカッショニストになりたいと思われていたのですか?
  • CC:大学では主にオーケストラのパーカッションの勉強をしていて、当初ソロは楽しい副業、といった感じでした。ソロ・パーカッショニストになったのは、いろいろな要素が重なり合った結果で、新しい音楽が好きだったこと、ソロ・パーカッショニストとしてやっていく機会に恵まれた世代だった、ということもあると思います。大学を卒業した後ソロの活動も始めて、すぐオーケストラよりソロのほうがメインになっていきました。
    以来、ライヒの作品はいくつか演奏していたのですが、鍵となったのは2006年のBBCプロムスで、ライヒの70歳の誕生日記念にレイト・ナイト・イベントをプロデュースしてほしいと依頼されたことです。そのとき私は即座に《ドラミング》をプログラムに入れよう、と思いました。《ドラミング》は、その難しさも他のアンサンブル作品と一線を画していて、特別なテクニックを持つ演奏者がそろわないと演奏不可能な作品なのですが、そのとき自分のまわりに、そのような優れた演奏者がそろっていると感じていたからです。イギリスで次々に台頭してきていた、私よりやや若い世代のすばらしいパーカッショニストたちに声をかけ、グループを結成しました。
    《ドラミング》の演奏が大成功に終わった後、せっかくこれだけのメンバーを集めることができたのだから、このグループで演奏を続けてみたいと思いました。演奏してみたい曲は他にもたくさんありましたから。

  • ©Debbie Scanlan
  • ■コリン・カリー・グループの誕生ですね。
  • CC:そうです。そして2年ほど前、ライヒに私たちの演奏を聴いてもらうことができる幸運を得ました。ライヒが私たちのロンドン公演に来てくれたのです。演奏が終わり、彼が挨拶のために舞台に向かって歩いてくるのを見ながら、「僕らの演奏をどう思っただろう」と気を揉んでいました。
    幸いなことにライヒはとても感激していました。そして、「思いがけない発見だ! 焦点がクリアで、推進力と精密さを併せ持ち、かつ秘めた激しさのある演奏にたいへん感銘を受けた。初演当時はこれだけレヴェルの高いパーカッショニストがそろっていなかったので、このような演奏は絶対に不可能だった」と言ってくれたのです。嬉しくて、思わず笑みがこぼれました。

コンサート情報

2012年12月4日[火]19:00
2012年12月5日[水]19:00
コンサートホール

コリン・カリー・グループ
ライヒ《ドラミング》ライヴ

公演詳細情報へ

コリン・カリー(パーカッション)とコリン・カリー・グループ
Colin Currie, percussion / The Colin Currie Group

コリン・カリー

©Marco Borggreve

圧倒的なパーカッショニズムとカリスマ性、作品への洞察で聴衆のみならず作曲家たちをも魅了するコリン・カリー(1976年エディンバラ生まれ)は、2000年のロイヤル・フィルハーモニック・ソサエティ・ヤングアーティスト賞受賞以来、イギリスを代表する打楽器奏者の一人として、2011/2012シーズンはロンドン・サウスバンクセンターのアーティスト・イン・レジデンスを務めるなど、目覚ましい活躍を続けている。ソリストとしてコンセルトヘボウ管、フィラデルフィア管、ロサンゼルス・フィル、ロンドン響、フィルハーモニア管などとの共演はもとより、リサイタルや室内楽でも活躍しており、カーター、ライヒ、ラウタヴァーラ、アホ、マクミラン、アンドリーセン、ナイマンらが彼のために作品を書いている。CDはヒグドンの打楽器協奏曲(LPO)、ソロアルバム「Borrowed Time」(onyx)などがあり、いずれも高い評価を得ている。
「コリン・カリー・グループ」は、2006年BBCプロムスからライヒの70歳を祝うイベントの企画を任されたカリーが、《ドラミング》を演奏すべく、卓越した技術と同曲への情熱を持つパーカッショニストを集めて結成したチーム。彼らの精悍かつ緻密なパフォーマンスには、ライヒ自身も最大級の称賛と全幅の信頼を寄せており、新時代の《ドラミング》演奏グループとして世界各地からの出演依頼が相次いでいる。


ページトップ

東京オペラシティ コンサートホール/リサイタルホール


閉じる