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2015年度 武満徹作曲賞 ファイナリスト決定(審査員:カイヤ・サーリアホ)

Update:2014.12.19

1997年に始まったオーケストラ作品の作曲コンクール「武満徹作曲賞」は、毎年ただ1人の作曲家が審査にあたります。

17回目(2005年と2006年は休止)となる2015年度(2014年9月30日受付締切)は、165曲の応募作から、規定に合致した、44ヶ国151作品が正式に受理されました。それらの受理作品を2015年度審査員のカイヤ・サーリアホが2014年10月中旬〜12月中旬にかけて譜面審査した結果、下記4名がファイナリストに選ばれました。

国籍別応募状況(PDF/256KB)

カイヤ・サーリアホ

© Priska Ketterer

2015年度審査員

カイヤ・サーリアホ(フィンランド)
Kaija Saariaho (Finland)


この4名の作品は2015年5月31日[日]の本選演奏会にて上演され、受賞作が決定されます。
なお、譜面審査に際しては、作曲者名等の情報は伏せ、作品タイトルのみ記載されたスコアを使用しました。

ファイナリスト(エントリー順)

トーマス・ヴァリー

© Nadja Meister

トーマス・ヴァリー(オーストリア) Thomas Wally

[作品名]
ループ・ファンタジー
loop-fantasy for orchestra

1981年7月26日、ウィーン生まれ。ウィーン国立音楽大学、ヘルシンキのシベリウス音楽院で作曲とヴァイオリンを学ぶ。2008年国際music+culture作曲コンクール(アメリカ)第3位、2009年ヘルムート・ゾーメン作曲コンクール(ウィーン国立音楽大学)優勝。2009年と2012年に作曲のためのオーストリア政府奨学金を得る。2010年オーストリア教育芸術文化省から優秀アーティスト賞を、2012年作曲の分野で「ウィーン市振興賞」を受賞。作品はヨーロッパ各地、テヘラン、香港、ブエノスアイレス、ニューヨークで演奏されている。2012年から、ウィーン国立音楽大学で和声・対位法を教えている。

ファビア・サントコフスキー

ファビア・サントコフスキー(スペイン) Fabià Santcovsky

[作品名]
存在の絵
cuadro de presencia for orchestra

1989年4月4日、バルセロナ生まれ。10代の頃、クラシックギターやエレキギターを通して音楽に接し、それらの楽器を用いて作曲も試みるようになった。バルセロナ自治大学で物理学を専攻後、2009年カタルーニャ高等音楽院に作曲専攻で入学し、ガブリエル・ブランチッチ、マウリシオ・ソテロ、マネル・ロデイロ、マルコ・ストロッパ、ラモン・ラスカノ各氏から指導を受ける。現在、ベルリン芸術大学の修士課程においてダニエル・オットー氏に師事。
https://soundcloud.com/fabia-santcovsky/

セバスチャン・ヒッリ

セバスチャン・ヒッリ(フィンランド) Sebastian Hilli

[作品名]
リーチングス
Reachings for orchestra

1990年5月20日、ヘルシンキ生まれ。シベリウス音楽院で作曲をラウリ・キルピオ氏に師事し、卒業後交換留学生として1年間ウィーン国立音楽大学でミカエル・ジャレル氏に師事。現在、シベリウス音楽院の修士課程でヴェリ=マッティ・プーマラ氏に師事。作品はオスロ、ウィーン、ニューヨーク、コペンハーゲン、エスビア、ドレスデン、フライブルク、ヘルシンキなど様々な音楽祭で紹介され、アヴァンティ!室内管、ザグロス、キュリオス・チェンバー・アンサンブル、エスビア・アンサンブル、Cikada、アンサンブル・ミザン、アンサンブル・ルシェルシュなどの演奏団体によって演奏されている。
http://www.sebastianhilli.com/

イーイト・コラット

イーイト・コラット(トルコ) Yiğit Kolat

[作品名]
[difeʁãs]  *différance/差延
[difeʁãs] for orchestra

1984年1月9日、アンカラ生まれ。「誠実で洞察力を持ったアーティスト」(ピーター・シェパード=スケアヴェズ)と評される彼は、2012年第7回アンリ・デュティユー国際作曲コンクール(第2位)、2013年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ファイナリスト)などで受賞及び入選している。また作品はSolistes de L'Orchestre de Tours、Nieuw Ensenble、タレア・アンサンブル、シアトル交響楽団、トルコ国立大統領交響楽団、パスカル・ガロワ、ドナティエンヌ・ミシェル=ダンサック、ピーター・シェパード=スケアヴェズなどによって演奏されている。現在、ワシントン大学の博士課程でジョエルー=フランソワ・デュラン氏に師事。
http://www.yigitkolat.com/

「2015年度武満徹作曲賞 譜面審査を終えて」 審査員:カイヤ・サーリアホ

オーケストラ用のスコアを151曲精査する作業は、労力を要しましたが、同時にとても刺激的な作業でもありました。また、いくつかの新しい記譜法や作曲法が、今では世界的に認知されて新しい世代の作品に取り入れられている状況にとても興味がそそられました。若い作曲家の皆さんが、積極的に個性と新しい音楽表現を模索する姿に触れ、うれしく思いました。

応募作品全体において一般的にみられたのは、慣習的ではない楽器奏法への興味であり、図を用いた記譜、そして偶然性の音楽の可能性に対する関心でした。もう一つ、よく見られたのは、ステージ上、あるいはホールの中、そして時には聴衆の周り、といった具合にオーケストラの楽器をいくつかのグループに分けて配置する手法でした。
また、大変多くの作曲家が物語的な表現に興味を示す傾向にあり、インスピレーションの源を物語、伝説、あるいは類似した何か象徴的なものから得ていました。その結果として生まれた作品は、作曲家によって書かれた標題や注釈に大なり小なり沿った作品となっているのは明らかでした。

全ての作品を読んだのちに、さらに読み込むべく2つのグループを選り分けて、それぞれ手元に残しました。まずはこの中から最終選考に残る作品があるだろう、と確信したうえで残した9作品で、どれも説得力のあるものばかりでした。結果として最終的に残った4作品の内の3作品はこのグループに入っていました。
残りの27曲の楽譜の中からさらに可能性のある作品を選び出し、精査し、先に選んだ作品と並べて選考するに値する候補がいくつか挙がりました。

今回、作品を取捨選択していく過程において、ほとんどの作品に多くの才能、希望、そして努力が感じられました。そしてそのような作品を除いていくことは決して容易ではありませんでした。今回選ばれなかった作品も、今後演奏の機会を得、集中力を持って聴いてくれる聴衆がそれを分かち合う機会が来ることを願ってやみません。なぜならどの作品も実際的な技術レベルは様々ではありますが、とても興味深い作品ばかりだったからです。

東京オペラシティ文化財団が掲げた基本理念「祈り・希望・平和」は、漠然とですが、常に私の頭の中にありました。このような理念は私自身の信条を再確認させてくれただけでなく、作曲家の音楽と生命に対する偽りのない誠実な気持ちに裏打ちされた作品を見出す助けとなりました。

以下の4作品が最終的に私の机の上に残りました。そしてその理由を簡単ではありますが、次に説明させていただきます。これらの作品は全て、題名のアルファベット順で並べてあります。

■ 存在の絵(cuadro de presencia for orchestra)
興味の尽きない試みが展開されていきます。微分音と慣習的でない楽器奏法について入念に考察したうえでのディテールは、他の多くの微分音の発想を用いた作品と比べて、とてもリアリティーのある演奏を導き出しています。楽器の使い方は創意に満ち、オーケストラの楽器群の組み合わせを変えることで音楽の持つ生き生きとした勢いが保たれているのです。また、作品の中で丁寧に静寂を取り入れる作風も好ましく思いました。それは音楽を中断することなく、聴きとれない形で継続します。実際にコンサートでその音楽の流れがどのようになるのか、今から好奇心をそそられます。

■ [difeʁãs]([difeʁãs] for orchestra)
最初に見た時から、この作品の持つ詩的世界と通常の形式とは異なる解釈が大変印象に残りました。いずれも心打つものであり、説得力のあるものでした。この作品は音の旅であり、非常にゆっくりとしたテンポの指示は、実際に計ることのできる音楽の時間からの逃避です。まさに独創性に満ち、静かで確固とした激しさをも持った作品です。私は急進的でありながら、同時に論理に基づいた形式的帰結を評価します。そしてこの精密ともいうべき譜面の陰には、いくつもの感覚に働きかける宇宙が隠れているように感じられます。実際にそれを体験するのが楽しみです。

■ ループ・ファンタジー(loop-fantasy for orchestra)
譜面を読んだとき、まず音楽の持つエネルギーに魅せられました。留まることなく進み続けるような、みずみずしくて熱意のある思いが作品に溢れており、その目指すところは明解です。音楽家の限界を試すと言っても良い、“ポコ・ピウ・モッソ(可能ならば)”といった速度指示に見られる速いテンポが伝統的で高度な楽器の奏法を求める作風と一緒になって、存在感のある、湧き立つような肉体のエネルギーを生み出しています。

■ リーチングス(Reachings for orchestra)
ぶれることなく、形式をしっかりと認識し、それに則った計画のもとに作曲されていることに興味を抱きました。終始一貫して高い集中力の中で音楽は進行していきます。音楽には前に進もうと急き立てるような感覚がありますが、しっかりとコントロール下に置かれているため、バランスが良く保たれて、音楽はごく自然に呼吸しています。
オーケストレーションは一貫して効果的で、その明瞭さは、譜面を読むのが楽しくなるほどでした。

東京オペラシティ文化財団の皆様のご協力に感謝申し上げるとともに、審査員としての私の状況に対するご配慮に心から感謝申しあげます。 ファイナリストの皆様と東京でお目にかかり、その音楽を聴くのを楽しみに致しております。

2014年12月7日 パリにて
カイヤ・サーリアホ
(訳:久野理恵子)

◎本選演奏会情報

2015年5月31日[日]15:00 コンサートホール
コンポージアム2015
「2015年度武満徹作曲賞本選演奏会」

審査員:カイヤ・サーリアホ
指揮:渡邊一正
東京フィルハーモニー交響楽団


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