武満徹作曲賞

審査員紹介

1999年度審査員 ルチアーノ・ベリオ (イタリア) Luciano Berio (Italy)
© 大窪道治

1999年度 審査結果・受賞者紹介

コンポージアム1999(本選演奏会を含む東京オペラシティの同時代音楽企画)

プロフィール

1925年、イタリア、オネリアの数世代にわたる音楽家の家系に生まれる。祖父と父に音楽教育を受け、12歳で作曲を始める。セリー技法から出発し、電子音楽のパイオニアとして活躍するかたわら、妻であったキャシー・バーベリアンの協力を得て、言葉や声による新しい表現を開拓し、《作品番号第獣番》(1951)、《室内楽》(1953)、《フォークソングズ》(1964)など声のための傑作を生み出す。代表作は他に《シンフォニア》(1968-69)、《セクエンツァ》シリーズ、《シュマン》シリーズや、ミュージカル・シアター《真実の物語》(1981、ミラノ・スカラ座)、同《聞き耳をたてる王》(1984、ザルツブルク音楽祭)など。また、1945年以来、指揮者としても活躍している。イタリア賞(3回)、1996年高松宮殿下記念世界文化賞など受賞多数。
2003年没。

メッセージ

ファイナリストの5作品に多様性がみられるのは大変喜ばしいことです。それぞれ音楽的、技術的にレヴェルが高く、独自のメッセージを持っています。私自身、審査をしながら、多くのことを学びました。
5人中、4人の日本人が含まれていたことはまったくの偶然です。私は、今の時代、地理的な距離(ジオグラフィック・ディスタンス)が必ずしも文化的な距離(カルチュラル・ディスタンス)と一致しなくなっていると感じているのですが、これはまさにそのことを示すものではないでしょうか。日本とイタリアは、いまや、文化的にとても近しく、お互いの違いを認識した上で評価し合う関係になっているのではないかと思います。
今回の審査にも通じることですが、異なる文化と出会った時、オリジン(起源) ─ 私の場合は「イタリア」です ─ というものが極めて重要な意味を持ってきます。最近私は、アフリカ音楽に関心を持っているのですが、それを理解し自分の中に取り入れる際に、イタリアというバックグラウンドは不可欠なものです。それはまた、トランスクリプション(変換)、トランスレイション(翻訳)の問題を含んでいます。つまり異文化に対面した時、自分の文化へのトランスレイトがなされ、トランスクライブされたかたちで表現される。そこで初めて二つの文化間に対話が生まれ、新たな創造につながっていくわけです。
「武満徹作曲賞」の本選会で、それぞれ異なったオリジンを持つ若い作曲家たちに会えるのを楽しみにしています。このコンサートを、彼らが、お互いの音楽を体験し出会える場にしてほしい。東京オペラシティ コンサートホールという美しい空間が、彼らの作品が持つ多様なパースペクティブを響かせることを期待しています。

「武満徹作曲賞」譜面審査後の記者会見、インタビュー(1998年5月)より

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