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2005年の幕開けは、山下洋輔のフリージャズをお楽しみください。13人のジャズ・ミュージシャンたちが繰り広げるのは、みなさんよくご存じの「忠臣蔵」。新年の忠臣蔵という変則技も山下氏ならでは。はたしてそのココロは?

(取材:2004年9月30日)

─ 毎年恒例となっている山下さんのニューイヤー。山下さんにとってここ数年は「一年の計はオペラシティにあり」でしょうか……?

山下 そうですね。これをやり終えて、ようやく正月が来る、という感じです。
ここで委嘱していただいて作った曲が、次につながっていくのも嬉しいことです。2000年のピアノ・コンチェルト第1番即興演奏家の為の《Encounter》も、2002年の《スーパー・チェンバー・シンフォニー第1番》も、あのなかの音楽的素材や動機がそのあとずっと生かされていっていますから。コンチェルトは、今年11月に佐渡さんの指揮でイタリアで公演があるというすごい運命をたどっています。


─ ジャズ・オペレッタ『フリン伝習録』につづく今回の『ジャズマン忠臣蔵』ですが、この作品の萌芽は20年まえにあったそうですね。

山下 ええ、芝居仕立てで「予告編」だけ上演しました(1984年12月26日、新宿コマ劇場)が、今回は台詞なし、装置なしのコンサートピースとして演奏します。
僕が長年やってきているフリーフォームのジャズは、何の決め事もなしに音を出して成り立たせようという音楽なんですね。「ああいえば、こういう」というやり取りを手がかりにプレイすることが多くて、どうしても演奏の仕方が「会話」になる。そういう経験を積み重ねているうちに、あるとき、楽器で言葉をかわしてみようというアイデアを思いついたわけです。それ自体は誰でも考えていたことだと思うんですが、「楽器で忠臣蔵をやる」ことを実現してしまおうと思ったのは、やはりまわりに筒井康隆さんやタモリやユニークな人たちがたくさんいて、「なにかおもしろいことをやろう」という空気が充満していたからでしょう。

なぜ「忠臣蔵」だったかというと、やはり日本人なら絶対わかる素材だからです。「松の廊下」を舞台にして、2人のプレイヤーが楽器を猛烈に吹き出したら、なにをしているのかは誰でもすぐわかりますよね。非常にわかりやすいということが重要でした。「忠臣蔵」については、詳しい人にきくと「山崎街道」がおもしろいとか、いろいろこだわりがあるようですが、僕自身は平均的な日本人としての知識しかありませんから、今回はごく普通に「松の廊下」「切腹」「一力茶屋」「討ち入り」の4つを取り出して、4楽章構成のビックバンドとピアノの作品、というかたちで演奏します。構成は筒井康隆さんにご協力いただいて、テロップを使って、ステージでなにをやっているか文字でも伝えたいと思っています。


─ 配役は決められているのですか?

山下 今回は芝居ではありませんし、音楽的に不自由になるので、たとえば誰かを吉良上野介にするといった固定的なやり方はしません。そもそも47人入り乱れてオペラシティのステージに討ち入りなんかできませんしね(笑)。芝居ふうにやった20年前は、僕は大石内蔵助でした。《Take the A Train》なんか弾きながら、切腹している人のところに駆けつけたんです。


─ 参加されるミュージシャンのご紹介をお願いします。

山下 この企画のなかで、一人一人生きて光ってくれるだろう、という人たちです。ドラムスの堀越彰は、日本の楽器を使って、東洋的なものを追求しているグループを持っている人で、彼にそういう日本的な要素を加味してもらいたいという期待があります。吉野弘志は、おもしろいことに理解ある人ですし、弓を使っての音楽的な幅には欠かせません。サックスの梅津和時、片山広明は、楽器で会話するということについては熟練の名コンビ。この2人を前に出しておけばなんでもやってくれる、という確信があります。対照的に、川嶋哲郎、池田篤は、正統派のサウンドをバリバリに吹いてほしい。ブラス・セクションは、ビックバンドとしてのサウンドを支えてもらうことを第一目的に、トロンボーン兼アレンジャーの松本治に最高の人選をお願いしました。木幡光邦、青木タイセイ、そしてご存知エリック宮城の驚異のハイトーンもお楽しみです。そして「一力茶屋」を盛り上げてくれる女性陣。金子飛鳥とは何度も共演していますし、このシリーズ初登場のYUKARIEは、あっと驚く格好で、あっと驚くことをやってくれる人。これだけのメンバーがそろいましたから、一人一人の個性を最大限引き出して、物語のなかで輝きを放つように、やっていくつもりです。みなこの企画をおもしろがってくれていますし、どんなことにも対応してくれると思います。


─ 初めてジャズ・ミュージシャンだけが出演するニューイヤー。期待が高まります。どうなるのか想像つかないところも含めて……。

山下 言葉ではとても説明しきれないので、とにかくおいでになって楽しんでいただきたい。「えっ、年明けに忠臣蔵なの?」とつめかけてくれると嬉しいですね。少しだけ種明かししてしまうと、ビックバンドと言っても、譜面台を置いて座りっぱなし・・・にはならないと思います。(笑)


東京オペラシティArts友の会 会報誌「tree」Vol.47(2004年12月号)より




2005.1.16[日]山下洋輔のニューイヤー・ジャズ・コンサート2005



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