須藤由希子のホームページ(http://www012.upp.so-net.ne.jp/mahalo/)があります。コメント、プロフィール、掲示板のほかに、過去に描かれた作品が30点ほど掲載されています。作家のホームページとしてはごくオーソドックスな構成ですが、とくに面白いのは「絵のメニュー」と題された彼女の絵の区分です。
1 イエ
この風変わりな「絵のメニュー」はまず何よりも、須藤が手がける作品のほとんどが風景画というジャンルに属し、その画中には家や植物がしばしば描かれるという単純な事実と切り離せないものでしょう。しかし、そればかりではなく、作品の制作方法とも密接に関わっているのです。須藤は家、塀、草花、樹木など、自宅や実家の近くで目にしたさまざまなモティーフを描きとめ、それらをいわばパーツとして組み合わせることで画面を構成します。家、植物、庭、鳥獣、人など、風景を構成するモティーフが列挙されているのはそのためです。それぞれを個別の視点で捉えることで、ひとつひとつはより克明に描かれますが、その代わりに、それらを組み合わせた画面では必然的に、パースペクティヴは微妙なゆらぎを見せることになります。6Bの鉛筆のみで描いていたときとは異なり、部分的に彩色が施された最近の作品では、空間把握の混乱はいくぶん軽減されたかの印象があります。とはいえ、ひとつの風景を形づくるモティーフ同士の関係性、それがもたらす一種独特な雰囲気が、彼女の作品のもっとも大きな魅力であることに変わりはありません。
一口に風景画といっても、須藤が描き出す風景は、未開の秘境や雄大な大自然ではありません。個人住宅や集合住宅が次々に建てられ、庭に木が植えられ、家庭菜園がつくられるようなのどかな住宅街の景観です。ホームページのコメントのなかで、彼女はそうした都市の住宅街にリアリティを感じると述べていますが(*註1)、まるで都市に潜むゲニウス・ロキの声を聞いているかのようです。ゲニウス・ロキとは、「ゲニウス(守護霊)」と「ロキ(場所の)」というラテン語からなる観念で、古代ローマ人が取り憑かれた、それぞれの場所に潜む地霊の力のようなものを指しますが、人間の活動によってたんなる物理的空間が特別な場所になるという現象学的考察を説明する際にももちいられる言葉です。平凡といえば平凡きわまりない人々の日々の営みが長年にわたって堆積されて、現代に再び蘇った地霊。そのかすかな声に敏感に耳を澄ましながら、何もない白亜の空間にたどたどしく線を引いていくことで、この画家は現代における牧歌的風景を創造しようとしているのかも知れません。
*註1 |
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| 須藤由希子 SUTO Yukiko | |
| 1978 | 神奈川県生まれ |
| 2001 | 多摩美術大学美術学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業 |
| 2002 | 「装画を描くコンペティション Vol.2」, 祖父江慎賞受賞 |
| 2004 | 「第22回ザ・チョイス大賞」, 2004年度優秀賞受賞 |
| 2005 | 「トーキョーワンダーウォール公募2005」, トーキョーワンダーウォール賞受賞 |
| 「GEISAI#8」, 藤本やすし賞受賞 | |
| 現在 東京都在住 | |
| 個展 | |
| 2004 | takefloor(現TAKEFLOOR 404&502), 東京 |
| 2005 | Cafe d'Art, 鹿児島 |
| 2006 | 「トーキョーワンダーウォール都庁2005」, 東京都庁第一本庁舎3F南 |
| 側空中歩廊, 東京 | |
| グループ展 | |
| 2002 | 「装画を描くコンペティションVol.2受賞者展」, ギャラリーハウスMAYA, 東京 |
| 2005 | 「トーキョーワンダーウォール公募2005」, 東京都現代美術館(カタログ) |
| 2006 | 「百花繚乱」, BOICE PLANNING, 神奈川 |
| 参考文献 | |
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会場:東京オペラシティ アートギャラリー 4Fコリドール
期間:2007.4.14[土]─ 7.1[日]
開館時間:11:00 ─ 19:00(金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし4.30[月]は開館)
入場料:企画展「藤森建築と路上観察 ─ 第10回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展帰国展」の入場料に含まれます
主催:財団法人東京オペラシティ文化財団
協賛:NTT都市開発株式会社
お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756











