展覧会
5.映画と音楽
武満徹が映像芸術に示した関心と愛着には並々ならぬものがある。1956年に中平康監督の「狂った果実」(石原慎太郎原作・脚本、石原裕次郎主演、日活)で初めて劇場映画の音楽を担当して以来、彼が音楽を手がけた映画は100本近くを数え、しかも、成瀬巳喜男、黒澤明、市川崑、小林正樹、今村昌平、勅使河原宏、篠田正浩、大島渚、恩地日出夫といった日本映画の黄金時代を築き上げた巨匠たちの作品がならぶ。武満徹にとって映画音楽は余技や副業というべきものでは決してなかった。そのことは、1年間で多いときには300本以上の映画をみたというエピソードが雄弁に物語っているだろう。武満は1961年以来毎日映画コンクール音楽部門賞をたびたび受賞しているが、海外でもその評価は高く、映画音楽の演奏会もしばしば開催されている。また、映画に関する著作として『夢の引用』(岩波書店、1984年)などもある。映画ばかりでなく、「源義経」(NHK大河ドラマ、1966年)、「未来への遺産」(NHK、1974年)、「夢千代日記」(NHK、1981年)、「波の盆」(NTV、1983年)など、テレビ、ラジオのドラマや番組にも武満はすぐれた音楽を提供し続けた。
武満徹
《『乱』》 楽譜
1985年
日本近代音楽館寄託
映画台本
『切腹』(小林正樹監督/1962年/東京国立近代美術館フィルムセンター蔵)
『砂の女』(勅使河原宏監督/1964年/財団法人草月会蔵)
『利休』(勅使河原宏監督/1989年/世田谷文学館蔵)
ほか
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