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小林が現在のような作品を発表しはじめたのは2004年のことでした。それ以前、2000年頃には、モザイク状の画面がデジタル処理を即座に連想させる、カラフルな花の絵を描いていました。やがて、仔ブタやキューピー人形のイメージが画面に登場し、2002年、03年には、明るいピンクやパステル調のポップな色彩が大きな特徴となっていきました。部分的に厚く塗られた、磁器を思わせるようなアクリル絵具のマティエールもこの頃からで、写真ではよくわからないかも知れませんが、間近に作品をみたときにはもっとも印象に残るものです。2003年の作品では屋外や室内などの具体的な空間設定が作品の魅力のひとつでしたが、翌2004年に白い抽象的な背景のなかを、淡いブルーのみで描かれたテディベア、サル、アヒル、ブタなどのぬいぐるみの動物たちが跳躍、浮遊する、現在の作風へと一気に移行しました。 |
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| 《デッド・ヒート》 アクリル絵具, キャンバス, パネル 150.0×300.0cm(2点組) 2005 photo:末正真礼生 |
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いまや小林が描き出す世界の住人として、すっかり定着した感がある生き物のぬいぐるみたち。彼らが繰り広げる不思議なイメージの世界は、2つの相反する感覚へとみる者を誘います。セピアブルーに似た色彩の効果は、少年期の孤独感や喪失感、あるいは永遠に失われた時間への感傷を醸し出しますが、その一方で、背景の白に溶け込むような、浮遊するイメージの曖昧な輪郭は、悠久の時間の流れ、至福の幼年期、果てしない夢や希望などを想起させます。無垢なるものがもつ二律背反。重なり合い、絡まり合うぬいぐるみたちは、争っているかのようでもあり、また、無邪気に戯れ合っているかのようでもあります。大きく広がる余白の白が、彼らの無垢性を一層強調しています。
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| 《雷雲》 アクリル絵具, キャンバス 97.2×194.2cm 2005 photo:末正真礼生 |
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小林の絵画の特徴は、こうした内容のほかに、明確な形式をもって描かれていることです。それは、デジタル映像時代における絵画のひとつのありようを示すものといえるかも知れません。作家は、自ら撮った写真をコンピュータに取り込み、グラフィック処理をほどこして出来上がったイメージを、アクリル絵具によってキャンバスに移し変えていきます。ポラロイド写真のようなボケた、モザイク処理された花のイメージの旧作とは違い、新作ではオリジナルの写真の存在は想像することが難しくなっています。小林の絵画は一瞬の静止した時間を捉えたものですが、そこには必ず次の動作、展開が凝縮されています。小林の近作では、絵画と写真ではなく、絵画と映像の関係が探求されているといえるでしょう。 |
| 《雷雲》 部分 2005 photo:末正真礼生 |
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何を、どのように描くか ─ いうまでもなく、これは絵画にとっての伝統的な命題だったはずです。小林浩はこれに真正面から取り組んでいる画家といえるでしょう。今回発表された新作では、虚空の背景から一変し、画面に室内を思わせる一定の空間が設定されているのがわかります。住人であるぬいぐるみたちはこの空間のなかで、宙を跳び、舞うことをやめ、しっかりと両足をつけてどこかに向かって歩み出そうとしているようです。ここに広がるのは、少年にとって冒険すべき未知の世界であると同時に、画家にとって絵画というものが秘める無限の可能性を意味するのかも知れません。たとえ、その足元に底知れぬ奈落が隠されているにしても、あるいはその先は現代絵画の袋小路だとしても、どこかに必ず「青い鳥」がいることを信じて、彼らは歩みつづけるに違いありません。 |
| コリドールでの展示風景 2005 photo:末正真礼生 |
| 小林 浩 KOBAYASHI Hiroshi | |||||||||
| 1967 | 福島県生まれ | ||||||||
| 1991 | 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業 | ||||||||
| 1995 | ニューヨーク市立大学ブルックリン・カレッジ美術学部修士課程修了 | ||||||||
| 2002-03 | 文化庁派遣芸術家在外研修員としてインド、アメリカ、カナダに滞在 | ||||||||
| 2004-05 | 野村国際文化財団芸術文化助成により3ヶ月間オランダに滞在 現在、千葉県在住 |
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| 個展 | |||||||||
| 2000 | ギャラリーなつか, 東京 ('01, '02, '03, '04, '05) | ||||||||
| 2002 | ギャラリー・アート倉庫, 東京 トーキョーワンダーウォール都庁, 東京都庁舎 |
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| 2003 | ギャラリーイセヨシ, 東京 ('05) | ||||||||
| 2005 | 「Blue/Blue」, シゲコ・ボーク mu プロジェクト, ワシントンD.C. | ||||||||
| グループ展 | |||||||||
| 2003 | 「VOCA展2003」, 上野の森美術館, 東京(カタログ) 「Revolving Door: ISCP<->Asia」, チェンバーズ・ファインアート, ニューヨーク 「Japan: Rising」, パームビーチ現代美術館, フロリダ(カタログ) 「破壊しに─」, ガレリア・キマイラ, 東京 |
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| 2004 | 「シェル美術賞展2004」, ヒルサイドフォーラム, 東京(カタログ) | ||||||||
| 2005 | 「New Spirits 福島」, 福島県立美術館(カタログ) | ||||||||
| 参考文献 | |||||||||
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■インフォメーション
会場:東京オペラシティ アートギャラリー 4Fコリドール
期間:2006.1.14[土]─ 3.26[日]
開館時間:11:00 ─ 19:00(金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日 :月曜日(ただし2月20日[月]は開館)、全館休館日 2月12日[日]
入場料 :企画展「アートと話す/アートを話す」の入場料に含まれます。
主催:(財)東京オペラシティ文化財団
協賛:日本生命保険相互会社
協力:山大鉄商株式会社、相互物産株式会社
お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756











