収蔵品展017 屏風というかたちで 期間2005年4月8日-6月26日

小泉淳作 涛声 男鹿半島入道岬
  小泉淳作《涛声 男鹿半島入道岬》 顔料、紙(六曲一隻)170.0 x 373.0cm
1997

寺田小太郎氏が蒐集した東京オペラシティコレクションには、現存作家の屏風形式の作品が少なくありません。伝統的な日本絵画では、遠近法にもとづく西洋絵画とは異なり、ときに視点が自由に移動し、あるいは複数の視点が同時に介在します。屏風絵は、折り曲げて見せることで、豊かな空間性の広がりを表出するものです。屏風という伝統的なかたちと現代の作家たちによる表現との思いがけない親和をご覧いただきます。
小泉淳作の《涛声 男鹿半島入道岬》は、日本海を一望できる有名な景勝地を描いた作品です。画面の高い位置に水平線がおかれ、画面の大半はその奇岩怪石の連なりで占められています。画面手前の岩は俯瞰的に描かれていますが、遠くの岩は水平視によって、また右手の岩はやや仰瞰視によって描かれているのがわかります。屏風を折り曲げれば遠近法的な視点はさらに乱れ、それと対照的に、奇岩の迫力はより強く感じられるでしょう。

西野陽一 竜宮 I 西野陽一《竜宮 I》 顔料、金箔、紙(四曲一双のうち右隻)
180.0 x 340.0cm
1996

磯見輝夫 日の暦
磯見輝夫《日の暦》木版画、和紙(ニ曲一隻)
80.0 x 145.0cm
1981

山口啓介 RNA World:5つの空 5つの海
山口啓介《RNA World:5つの空 5つの海》
エッチング、 紙(五曲一隻)180.0 x 347.5cm
1991
西野陽一の《竜宮 I》《竜宮 II》は、題名だけを見ると浦島伝説に取材とした作品を想起させるかも知れません。しかし、実際に各四曲一双、計16扇の大画面に展開するのは、色鮮やかな珊瑚が群生するなか、魚、ウミガメ、クラゲ、タコなどのさまざまな生物が遊泳する深海の様子です。本来竜宮とは深海にあって竜神が住むという宮殿の意味ですが、この作品には、夢のような美しさと恐ろしさとが同居する別世界としての海に寄せる、画家の強い憧憬がにじみ出ているといえるでしょう。

今回の出品作品のなかには日本画家ばかりでなく、小作青史や磯見輝夫の版画家たちの作品が含まれています。あるいは、望月通陽の《水(昆虫記より)》のような型染技法による工芸的作品や、郭仁植の《Work 86-KK》や井田照一の《共鳴画:気化と落下の位置-墨と泥》のような抽象作品が屏風形式によく馴染むのは、イメージの平面性と深く関わるものでしょう。

また、山口啓介の屏風作品は、他の美術館にはないめずらしいものといえます。彼の作品にはもともと遠近感や立体感があるものの、それはどこか統一性を欠いています。山口は、何枚もの銅版画を組み合わせて大画面の作品を制作しますが、版が違うそれぞれの部分は当然のことながら、腐食による濃淡が微妙に異なり、それが全体としてのイメージに奇妙な違和感をもたらしているのです。この巧妙に仕組まれた部分と全体との不均整こそ、彼の作品が屏風という形式と意外なまでに調和する理由ではないでしょうか。

■インフォメーション

会  場:ギャラリー3&4(東京オペラシティ アートギャラリー 4F)
期  間:2005.4.8[金]─ 6.26[日]
開館時間:12:00 ─ 20:00(金・土は12:00 ─ 21:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休 館 日 :月曜日(ただし 5月2日[月]は開館)
入 場 料 :企画展「谷口吉生のミュージアム」の入場料に含まれます。
主  催:(財)東京オペラシティ文化財団
お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756