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:小西真奈 KONISHI Mana |
2004.10.16[土]─ 12.26[日]
たとえば、ふだんからよく見慣れた、お世辞にもきれいといえないような部屋が、スナップ写真の背景で見違えるほどこぎれいに写っていた経験は誰にもあるでしょう。住宅雑誌、グルメ雑誌、旅行代理店のパンフレットに掲載されている新築マンション、料理、ホテルや観光地の写真などにも、同じことが言えます。小西真奈が描く風景も、写真をもとに制作されてはいるものの、その画面からは、どこかで見たことがあるような既視感と実際にはありえない非現実性という、相矛盾する二つの雰囲気が漂ってきます。あるいは、日常平凡なはずの風景が、にわかに白昼夢のような不穏さを帯びて見えてきます。
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《ピクニック》 Picnic
油彩、キャンバス
2004
162.0×162.0cm
photo: HAYAKAWA Koichi
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こうした印象をもたらすのは、その独特な色彩感覚、画中人物の存在、パースペクティヴのゆれなどが大きく関与しています。色彩に関していえば、彼女の作品は、観光地などでしばしば目にする、色褪せたポストカードや過美で品のない名所風景画の類に似ています。その強度と明晰さにおいて現実から乖離した色彩が、画面をじつにピクチャレスクなものにしているのです。画面に描き込まれた思わせぶりな人物の姿態は、奇妙な幻想性を付与するのに貢献しています。また、制作過程で加えられる近景、中景、遠景のパースペクティヴの微妙なゆれや誇張、あるいは人物、植物、道などのモティーフ間相互のプロポーションの微細な差異や不均衡は、描かれた風景に一種の崇高さを与えているともいえます。
小西が制作に際して使用する写真は、彼女自身がその場所で撮影したものもありますが、たとえば、フリーマーケットなどで売られている、撮影者のわからない外国風景なども含まれます。「この世のものとは思えない」ような光景や風景を描きたいという作家の意図は、こうした撮影者も、撮影場所も不詳のために、現実味が欠落した写真に対する彼女の興味と符合するものです。それらの写真をそのまま描くのではなく、先に述べたような、さまざまな改竄や修正を加えることで彼女の作品は成り立っているのです。
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《冬の水》 Winter
Water
油彩、キャンバス
2004
130.0×162.0cm
photo: HAYAKAWA Koichi
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考えてみれば、近代絵画の歴史は、写真術との出合いと決別から出発したものでした。写真術がもつ、非情なまでに忠実な再現性に対する羨望と諦観が、画家を超現実や抽象という広大で実り豊かな別世界へ導いたといってもよいでしょう。この近代絵画に胚胎する写真への嫉妬がもっとも端的に表われたのが、1960年代後半から70年代前半にかけて一世を風靡したフォト・リアリズムの動向でしょう。チャック・クロース、リチャード・エステスらの画家たちにとって何よりも重要だったのは、現実の迫真的描写ではなく、現実の写真的描写、すなわち現実を写真映像として提示することでした。
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《バドミントン》 Badminton
油彩、キャンバス
2004
130.0×162.0cm
photo: HAYAKAWA Koichi
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小西真奈の作品も、写真的な映像表現への親近性という点からすれば、フォト・リアリズムの系譜に位置づけることができるでしょう。でも、それだけでは彼女の作品が放つ不思議な魅力を語り尽くすことはできません。そこに描かれた光景は、絵画というものが本来そうであるように、いわゆる「絵空事」の世界なのです。一見平凡きわまりない風景ですが、そこにはひとつの物語に定着する以前の豊饒な逸話の断片、明確な意識に収斂する以前の茫洋とした無意識の沃土が広がっています。実際の風景よりも蜃気楼の方が往々にして美しいというのに似ています。矮小な通俗性と紙一重ともいえる地平で、小西真奈は、自己のテクニックと描こうとする光景とのあわいで絶妙なバランスを保ちながら、「描く」ということの根源を真摯に探求しているのです。
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| 1968 |
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東京都生まれ |
| 1993 |
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コーコラン・スクール・オブ・アート卒業,
ワシントンDC |
| 1994 |
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メリーランド・インスティテュート・インターナショナル・グラジュエイト・フェローシップを受ける |
| 1996 |
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メリーランド・インスティテュート・カレッジ・オブ・アート,
ホフバーガー・スクール・オブ・ペインティング修了, ボルチモア, メリーランド州(卒業絵画制作賞受賞) |
| 1996 |
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エセル・ロレイン・バーンスタイン記念賞
絵画部門優秀賞受賞, コーコラン・スクール・オブ・アート, ワシントンDC(2000年にも受賞) |
| 2002 |
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S&R ワシントン賞受賞 |
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現在、東京都在住 |
| 個展 |
| 1999 |
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「ポラロイド ─ スモール・オイル・ポートレイツ」,
モッツ・マーケット・アーツ, ワシントンDC |
| 2002 |
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「The Other World」,
土日画廊・Art M, 東京 |
| 2003 |
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「美しい場所」, Space Kobo&Tomo,
東京 |
| 主なグループ展 |
| 1993 |
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「ウォーク・ザ・ゴッデス・ウォーク」,
DCAC, ワシントンDC |
| 1994 |
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「肖像画 ─ 7人の作家による油彩と素描」,
ジョージタウン大学, ワシントンDC |
| 1995 |
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「スパービア ─ 新進作家ビエンナーレ」,
WPA, ワシントンDC |
| 2001 |
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「BOXアート・ストリート」,
SK画廊, 東京(他都内5箇所) |
| 2003 |
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「トーキョーワンダーウォール公募2003」,
東京都現代美術館, 東京 |
場所:東京オペラシティ アートギャラリー 4Fコリドール
期間:2004.10.16[土]─ 12.26[日]
開館時間:12:00 ─ 20:00(金・土は12:00 ─ 21:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日
入場料:企画展:「ヴォルフガング・ティルマンス|Freischwimmer」/「野又穫:カンヴァスに立つ建築」の入場料に含まれます。
主催:(財)東京オペラシティ文化財団
お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel.03-5353-0756
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