イントロダクション
introduction


1955年東京に生まれ、東京芸術大学でデザインを修めた野又穫は、「空想建築」と称される空想上の建造物を描いた絵画によって、独特な世界を築き上げてきました。
野又が描く自然のなかで静かに建つ無人の建造物は、我々に既視感を抱かせながらも、現実には存在しないものです。非現実であるにも関わらず、凛とした手ごたえのあるその画面は、建築のみならず、工業的なもののメカニカルな形体に対する野又の興味と想像力にも基づいています。

1986年佐賀町エキジビット・スペースでの個展を封切りに、現在に至るまで東京を中心に幾つかのシリーズの個展が開催されていますが、美術館での個展は1995年以来開催されておらず、野又の作品を一堂に会して見る機会が待望されています。
一見したところの精緻な写実描写に終始せず、独自のアプローチで建築の気概に満ちた力強さを伝えようとする野又の絵画空間は、現実の時間と場所を超越しています。その完結した世界は、現在の美術のいかなる傾向にも当てはまらない、絵画と建築が融合した野又の孤高の世界ともいえるでしょう。

本展は、当館のコレクション作品を中心に、最新作を含む計51点の出品作品によって、《Still - 静かな庭園》(1986)から《視線の変遷 - Points of View》(2004)に至るこれまでの全シリーズをご覧いただける絶好の機会です。また、空中に作品が浮遊するインスタレーションによって、いつもとは一味違った空間をお楽しみいただけます。




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