projectN 15 :牧谷光恵 MAKITANI Mitsue

2003.11.1[土]─ 2004.1.25[日]



再生と永遠と
牧谷光恵の作品は、壁掛けのレリーフ状のもの、床置きの半立体、ドローイングに大別できる。なかでもレリーフ状の作品は独特な色彩が印象的だ。一見したところ色使いは派手だが、やや沈んだトーンの緑、黄、赤などの色彩は独特の趣きがある。どこか荘厳な雰囲気も漂うのだが、それは、作品のいわば地にあたる菊花、唐草、蕨などの植物文様や作品自体の正面性、あるいは作品のもっとも表層にあらわれる人物の顔の白いモティーフに起因する。
《サルメガネと菊唐草》
スチレンペーパー、紙、板 84.9 × 74.6 cm
2003
Photo: 内田芳孝


作品をみてすぐにわかるとおり、レリーフ作品や立体作品の制作はきわめて客観的でシステマティックなものだ。色紙を貼ったスチレンペーパーを何層にも重ね合わせて完成される作品は、等高線の起伏がある立体地形図を彷彿させる。実際、その制作は、まずコンピュータでイメージを構成するところから始まる。過去の彼女自身の写真はスキャンされたのち、背景の菊花などと同様に、複数のスチレンペーパーで表現できるよう、デジタル処理によって何層かに分節される。その後それぞれの配色が決められ、色紙を貼り合せたスチレンペーパーをそのサイズに合わせて手作業で切り出していく。
《帽子の山》
スチレンペーパー、紙、板
176.0 × 45.4 cm
2003
Photo: 内田芳孝
《マッシュルームの山》
スチレンペーパー、紙、板
176.5 × 45.7 cm
2003
Photo: 内田芳孝


人物のシルエットは、ごくまれに近親も含まれるものの、大半は牧谷自身のものである。作家は、アルバムのなかから過去の自分を見つけ出し、それをスチレンペーパーをもちいて形象化する。上下左右対称の文様パターンのうえに忽然とあらわれる、非対称的な人物の形象は、中世のイコンのように、作品に名状しがたい神秘的な刻印を刻んでいる。画面全体ではかなりの大きさをもつ反面、カラフルな配色のなかで唯一色をもたないその白いイメージは、見るものをぞくっとさせる不思議な鮮烈さをもって迫ってくる。
《新大陸発見 ─ 牧ヶキャニオン》
スタイロフォーム(インスタレーション作品)
main piece 102.0 × 130.0 cm(installation size variable)
2003
Photo: 早川宏一


ドローイング制作の際にも過去の写真が参照されるが、ここには奇妙な生命感が息づいている。スナップ写真をもとにしている以上、生の一瞬の表情を捉えているのは当然だとしても、その生き生きとしたリアリティは、写真のイメージを丹念に写し取っているためばかりではなく、心の奥底に秘められた遠い記憶や懐かしい思い出を呼び起こしつつ描くことによって得られるものだろう。その行為は、失われた過去をかすかな記憶をたよりにしつつ追体験していく過程であり、あるいは、褪色した写真のそこかしこに本来の色彩をひとつひとつ塗り重ねていくような行為に等しいだろう。



牧谷光恵 MAKITANI Mitsue
1973 千葉県生まれ
1996 カリフォルニア大学バークレー校美術学部卒業[バークレー]
2000 カリフォルニア・インスティテュート・オブ・ジ・アーツ美術修士課程修了[ロサンジェルス]

個展
2004 プロジェクト・ルーム[東京](予定)

主なグループ展
2000 「ザ・ニューワールド・オブ・スージー・ウォン」ギャラリー207[ロサンジェルス、カリフォルニア]
2002 「エモーショナル・サイト」食糧ビルディング[東京](カタログ)

参考文献
白坂ゆり「アーティスト・インタビュー 牧谷光恵」、『Town Art Gallery』(http://www.hi-ho.ne.jp/gallery/eye/)、vol.44 East 2002
白坂ゆり「Give Me A Definition」、『Dazed & Confused Japan』、カエルム(有)、10号、2003年、p.62
白坂ゆり「Art ものから形なき愛とユーモアへ」、『流行通信』、(株)インファス、vol.478、2003年、p.90
星野一樹「若手ギャラリスト12人のプロファイル」、『Luca』(日本版7月号臨時増刊)、(株)エスクァイアマガジン ジャパン、no.3、2003年、p.98 - p.69
Matsui, Midori. "NEWS Tokyo 1", Contemporary, no47/48 (special issue), 2003, p.26 - p.27

TV放映
『Creator Channel』(NHK-BS-1)、2002年12月13日放映
『真夜中の王国03』(NHK-BS-2)、2003年11月・12月放映(予定)


インフォメーション
場所:東京オペラシティ アートギャラリー 4Fコリドール
期間:2003.11.1[土]─ 2004.1.25[日]
開館時間:12:00 ─ 20:00(金・土は12:00 ─ 21:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日=11/4、11/25、1/13)、年末年始(12/29─1/5)

入場料:企画展:ジャン・ヌーベル展、収蔵品展016「建築の見える風景」の入場料に含まれます。

主催:(財)東京オペラシティ文化財団

お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel.03-5353-0756


project N15 牧谷光恵アーティスト・トーク開催!

来る11月23日[日]15:00から、会場のアートギャラリー4階コリドールで、牧谷光恵のアーティスト・トークがあります。皆さんと一緒に作品を見ながら、自作についてお話いただく30分ほどのカジュアルなイベントになります。
不思議な魅力の牧谷ワールドに足を踏み入れる絶好の機会です。皆さまのご参加をお待ちしております。

日時:2003年11月23日[日]15:00 ─
会場:東京オペラシティアートギャラリー 4Fコリドール
入場料:「ジャン・ヌーベル」展の料金に含まれます。

*参加ご希望の方は、当日15:00に4Fコリドールにお集まりください。