◎収蔵品展015
難波田龍起 ─ 晩年の仕事 1988-1997

2003.8.5[火]― 10.15[水]




高村光太郎からの影響で絵画を志した難波田龍起(1905─1997)は、まさに日本の近代絵画史の流れとともに歩み続けた画家です。その70年以上にわたる画家としての活動の中で、難波田は、試行錯誤を繰り返しながら、「日本的」と言われる独自の抽象世界を切り開いてきました。特に、90歳を過ぎてもなお、大画面に果敢に取り組み続けた晩年の仕事の充実ぶりは、いまだ美術界の「奇跡」として語りつがれています。東京オペラシティアートギャラリーが収蔵する「寺田コレクション」は、難波田作品を集めたもっとも充実したコレクションとして知られていますが、コレクターの寺田小太郎と難波田龍起の出会いは、晩年の難波田のこうした仕事の充実ぶりに多大な影響を与えています。今回の収蔵品展では、寺田と難波田との本格的な出会いとなった1988年の「石窟の時間」シリーズから、難波田がこの世を去った1997年までの9年間を、油彩・水彩約100点によって振り返ります。
生の記録 3(左) 生の記録 3(中) 生の記録 3(右)
《生の記録 3》
油彩、キャンバス/162.1×390.9 cm
1994
難波田龍起は、まぎれもなくその人生の晩年において最も充実した時期を過ごした画家であるといえるでしょう。難波田は、本展にそのうちの2点が出品されている1点の長さが4メートルにおよぶ《生の記録》の4点シリーズ作品を89歳で完成させたのを始め、本人の90歳の卒寿記念展のために100号を越える《生の記録:断章A》《生の記録:断章B》《生の記録:断章C》の3点シリーズを制作したほか(本展にはその3点すべて出品)、それ以外に90年代に入って膨大な数の大小の作品の制作をこなすなど、通常の90歳前後の老人の仕事とは思えないほどの充実振りをみせました。
暁
《暁》
油彩・キャンバス/130.0×162.1cm
1991
それには、寺田コレクションのコレクターである寺田小太郎との偶然にして幸福な出会いが大きく寄与しているといえます。そもそも日本庭園の設計者として「日本的なるもの」について独自の思考を深めていた寺田は、難波田の作品に見られる、欧米的な合理主義とは一線を画す「禅」の思想に近いものを感じさせる部分に大きく惹かれたのだと言います。彼は、難波田作品との本格的な出会いとなった1989年の《石窟の時間》シリーズ(全55点)が発表された展覧会において、そのほぼ全ての作品をまとめて購入しました。本展では、この時購入された50点すべてが前期後期の2回に分けて展示されます(前期:8月5日から9月7日、後期:9月9日から10月15日)。 寺田は、この《石窟の時間》シリーズとの出会いを契機に、その後、難波田の作品をコレクションの中核に位置づけるべく集中的に蒐集を続けていきます。また、その時すでに83歳であった難波田は、この寺田との出会いの後に、幅4メートル近くに及ぶ全4点からなる畢生の大作《生の記録》シリーズの制作に取り組んでいくことになります。
無窮 A
《無窮 A》
油彩、キャンバス/181.8×227.3 cm
1990
無窮 B
《無窮 B》
油彩、キャンバス/181.8×227.3 cm
1990
ご家族の話によれば、難波田は、これら一連の《生の記録》を1ヶ月という信じられないスピードで「飄々と」仕上げていったということです。難波田が描いた《生の記録》は、まさに画家の「生」そのものの延長として広がる生命の記録にほかならならず、それはまた、なにものも画家と作品とを隔てることがない、いわば画家の「すべて」がありのままの形で照射された画面であったのでしょう。
展示風景
展示風景
難波田龍起の晩年において、生命の「老い」は通常とは全く別の意味を持っていたはずです。難波田は、その人生の最後に最高の作品を残すことができた幸福な画家であったのです。


インフォメーション
場所:ギャラリー3&4(東京オペラシティ アートギャラリー 4F)
期間:2003.8.5[火]─ 10.15[水]
●水彩作品《石窟の時間》シリーズのうち、20点が前期と後期で入れ替わります。
前期:8月4日-9月7日 後期:9月9日-10月15日

開館時間:12:00 ─ 20:00(金・土は12:00 ─ 21:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日。但し10月14日を除く。)

入場料:一般\300(\200)、大学・高校生 \200(\150)、中学・小学生 \100(\50)
project N 14「井上実」もご覧いただけます。
※( )内は15名以上の団体料金、夜間割引=閉館1時間前以降の入場は半額/その他割引制度あり。
※割引の併用はできません。

※企画展:ガール!ガール!ガール!展のチケットでもご覧いただけます。

主催:(財)東京オペラシティ文化財団

お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756