2002.5.25[土]─ 8.15[木]
S O L O/S






リクリット・ティラバーニャ(1961─)は、1990年にニューヨークの画廊でタイ風焼きそばを振るまった《パッタイ》に続き、1992年、1995年にはタイカレーをサービスするなどのパフォーマンスで一躍注目を浴び、以降、観客とのコミュニケーションを重視したリレーショナルなアートの第一人者として1990年代の新しいアートの概念を開拓してきた作家です。



《Untitled, 2002 (the raw and the cooked》
all photo (c) KIOKU Keizo
↑写真をclick するとタイ料理のサンプルがご覧いただけます。



アルゼンチン、ブエノスアイレス生まれのタイ人。外交官の父とともにタイ、エチオピア、カナダ、アメリカなどさまざまな環境で育ったティラバーニャにとって、異文化への適応は彼の現実と切り離すことのできない日常的な行為だったのでしょう。まさに90年代のアートシーンにおける重要なテーマ「グローバリゼーション」を地でいくようなプロフィール。海外にいれば外国人、タイに戻ってもタイでの生活経験が少ない外国人。いわゆるモバイル時代のノマド的生活を経て、「僕は、特定の場所とかものへの愛着心はゼロ」というティラバーニャ。逆に言えば、あらゆる場所に存在しうるコスモポリタンなわけです。



《Untitled (Bon voyage, Monsieur Ackermann)》
1995
Courtesy: Gallery Side 2



そのことを最も実感させてくれるのが、料理、食事、人との出会い、会話など、普通の人々のきわめて日常的な営みなのです。タイカレーに始まり、ギャラリーの事務所スペースを展示スペースへ移動したり、自分のアパートと同じ空間を再現したり、アマチュア・バンドのためのステージを用意したり、あるいは世代別の映画の好みを調査した結果を4面スクリーンで同時に見せたり・・・・。
アートのなかに日常をそのまま採り込み、見つめてみること。そんなシンプルでダイレクトな行為は日常に計り知れない深みを増してくれることでしょう。



《Untitled /1999 (Mobile Home)》
Courtesy: Gavin Brown's enterprise
Foundation "la Caixa", Barcelona, Spain



アートの日常化、あるいはアートと日常の関係もまた、1990年代以降のアートにおける重要なテーマです。「現代美術」という狭くてマイナーな領域からアーティスト達は飛び出し、アートの文脈とは無関係な人たちとの交流を通して社会における自らの位置づけを確認しようと試みます。現代美術におけるこのような国際的傾向を網羅しているかのようなティラバーニャが、世界中のアートスペースから引っ張りだこになるのも不思議ではありません。この10年間、多い時は1年に10以上もの展覧会をこなし、その度に開催地に赴いてきた彼は、目に見えるオブジェクトは残さないものの、料理のレシピのように地元の人たちに継承され、根づいていく彼自身の「アート」に対する思想を残してきました。彼は「世界にはもう中心というものがない。アートも、もうニューヨーク、パリ、ロンドンだけじゃない、世界中いたるところで同時にいろんなことが起こっている」とも語り、一義的な思考から人々を解放するために、作品のタイトルも《無題》が多いのです。



《Untitled 1999 (Mobile Home)》
Courtesy: Gavin Brown's enterprise
Foundation "la Caixa", Barcelona, Spain



本展は、リクリット・ティラバーニャにとって日本の美術館では初めての個展となります。展覧会タイトルの"Untitled, 2002 (the raw and the cooked)"には、意味を限定しないための「無題」に、「ナマモノと調理ずみのもの」という示唆的なフレーズが付いています。魚をお刺身で食べる文化が限られているように、同じ素材の異なる調理法も、それぞれの文化では日常なのです。

今回の新作インスタレーションでは実際に食べられるものは有りません。

メインとなるのは、レストランの店頭に並ぶ各国料理の食品サンプル、インスタント食品やスナック菓子、缶飲料などを18メートルのテーブルに並べた作品「Untitled,2002 (the raw and the cooked)」。多様な料理の国籍も、幅広い食品もすべて、私たちが「普通の日常」として受け入れている物です。しかしこの作品が、実際に食事を食べる体験を通してではなく視覚的な体験によっていることで、「普通」の「日常」への新鮮な眼差しを向けようとするティラバーニャのコンセプトがより明らかに浮かび上がってくるようにも思えます。
あわせて、日本特有の産業「食品サンプル」の製作過程を記録した映像が会場内に流されています。まさに、職人の手作りによる、プラスチック製のタイ風焼きそば「Pad Thai」が出来上がるまでを、テレビの料理番組風にご紹介します。
さらに、ティラバーニャのインターネット・マガジン「oVer Channel」に会場からアクセスできます。ここでは、本展と同時期に墨田リバーサイドギャラリーで開催された彼のもう一つのプロジェクト「すみだ川モード展~"Untitled.2002 (demo station no.3)"」で連日繰り広げられたイベントの様子をご覧いただけます。



《Untitled 2000 (Over Office)》
Courtesy: Gallery Side 2



関連情報
◎リクリット・ティラバーニャ講演会
日時:2002.5.26[日] 14:00 ─ 16:00
場所:東京オペラシティタワー7F 会議室
定員:120名(要予約)
お申し込み、お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel.03-5353-0756


◎リクリット・ティラバーニャ「すみだ川モード展~"Untitled, 2002 (demo station no.3)"」
アサヒビール株式会社が毎年行っている美術展シリーズ「アサヒビール・アート・コラボレーション」の第3弾にもリクリット・ティラバーニャが登場。テーマは「すみだ川モード」。
ティラバーニャが用意する日替りイベント用プラットホーム《デモ・ステーション》で、クッキングバトル、レクチャーなどが繰り広げられる。また、このイベントの模様はティラバーニャのインターネット・マガジン、oVER Channelでもライブで公開されます。

会期:2002.6.14[金]─ 7.14[日]
時間:10:00 ─ 19:00
会場:すみだリバーサイドホール・ギャラリー(墨田区役所庁舎1階)
入場料:無料
お問い合わせ:(財)アサヒビール芸術文化財団 Tel.03-5608-5202

→asahi art festival
(「すみだ川モード」コンテンツでは盛りだくさんのイベントが紹介されています。)
http://www.asahi-artfes.net/

→oVER Channel(左上の「チャンネル・セレクト」メニューから「oVER Channel」をお選びください。)
http://www.superchannel.org
ライブビデオをご覧になるにはReal Player(無料でダウンロード可)が必要です。
本展会場内でもこのサイトがご覧いただけます。


◎ ティラバーニャのタイ料理レシピ本(限定版)刊行
今回の展示のために新しく制作したタイ料理12点は、ティラバーニャ自身がセレクトした簡単で美味しい料理です。このタイ料理12点の作り方を納めた『リクリット・ティラバーニャ:タイ料理の本』が好評発売中です。

もちろん、掲載されているタイ・ディッシュの写真は、展示中のタイ料理サンプル。末尾には今回のインスタレーション写真も載っています。既に発行されている展覧会カタログとあわせ、ティラバーニャ作品を継承するレシピ本を是非お求めになり、タイ料理にチャレンジしてみませんか?視覚と味覚の両方で、アーティストのコンセプトを味わってみてください。

サイズ:B6版/ページ数:本文24ページ
カラー図版:13点(タイ料理サンプル12点+インスタレーション写真1点)
価格:800円(税込み)/限定:600冊

取り扱い:ギャラリー5 Tel.03-5353-0449



インフォメーション
期間:2002.5.25[土]─ 8.15[木]
開館時間:12:00 ─ 20:00(金・土は21:00まで、最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日、
全館休館日(8月4日[日])
入場料:一般\900(\700)、大高生\700(\550)、中小生\500(\400)
夏休みスペシャル企画!:小・中・高校生は7/20(土・祝)~8/15(木)の期間、入場料50%OFF
※SOLOS:リクリット・ティラバーニャ展+レイモンド・ペティボン展の料金です。
※収蔵品展011「彼方へ─寺田コレクションより」project N 10「英裕(はなぶさ・ゆう)」の入場料を含みます。
※( )内は15名以上の団体料金、その他割引制度あり
※週末は中小生無料。
※割引の併用はできません。

主催:(財)東京オペラシティ文化財団
協賛:日本生命/NTT都市開発/小田急電鉄/第一生命
協力:アサヒビール(株)
お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel.03-5353-0756