プロジェクトN

project N 69
三瓶玲奈 MIKAME Reina

2017.10.14[土]―12.24[日]

《Park》油彩, キャンバス 53.0×65.2 cm 2017 photo:TAKAHASHI Kenji
《Park》
油彩, キャンバス
53.0×65.2 cm
2017
photo:TAKAHASHI Kenji
光を描く ── 三瓶玲奈の絵画について

《Park》と題された三瓶玲奈の作品は、スピード感のあるストロークで描かれた赤いループ状の形態がひときわ印象に強く残ります。見慣れた英語の題名とループ状の形態から、たいていの人は公園の滑り台を描いたものと想像するかも知れません。ところが、実際に描かれているのは有栖川宮記念公園で、赤い形象は滑り台ではなく、広尾駅側の入口すぐにある池だといいます。作家によれば、この絵は池を見下ろす位置からみたもので、赤いストロークは瞬間的にみえた池の輪郭、青色のタッチはその周囲の樹木や木漏れ日だそうです。赤く囲まれた池の水面の部分には、確かに、木々や木漏れ日が映り込むさまが表現されています。極度に簡略化され、きわめて抽象化されたイメージを通じて、光の効果や反射そのものの表現を目指している点で、この作品には三瓶の最近の関心がよく現われているといえるでしょう。



《光の距離》
油彩, キャンバス
41.0 × 31.8 cm
2017
photo:TAKAHASHI Kenji

今春大学院を修了したばかりの三瓶は、これまで一貫して光の表現を意識して制作を行ってきました。室内の花瓶や水差し、あるいは身近な風景をモティーフとしつつ、イメージの抽象化を推し進めていく過程で、対象の本質を見極めようとする真摯な眼差しが、光の効果や反射に対する鋭敏な感覚を研ぎ澄ませていったのではないでしょうか。

光の表現への探求は、モビールにはじまり、シャンデリア、ドラムセット、窓枠を経て、夕陽、池の水面へとつづくモティーフの選択に端的にあらわれています。昨年頃から作風は抽象度を増し、特定のモティーフに依存することなく、日常のつかの間に目にする光の効果や反射を表現することに作家の意識は集中しているようです。その極北ともいえるのが、《光の距離》と題された今回の新作でしょう。作家の手許にある晶洞石を描いたこの作品は、一見したところ、さまざまな色彩のタッチを重ねた純粋な抽象絵画のようにしか見えません。さまざまな色彩を帯びて見える晶洞石から反射光以外を捨象して、見えるがままに描いています。モティーフを超越した次元で、色(イコール光)そのものを描くことが追求されているのです。



《Untitled》
油彩, 板
35.0 × 26.5 cm
2017
photo:TAKAHASHI Kenji

見えるがままに光の効果を描き出す三瓶ですが、制作の初期段階では相当量のスケッチを行っています。スケッチといっても、外出先でふと目に留まった気になるモティーフがあれば、メモ用紙や何かの裏紙など、持ち合わせの紙に描き、また、持ち合わせの紙がないときにはスマートフォンのアプリを使って描くこともあるといいます。こうして繰り返しスケッチという地道な行為を重ねることで、描写すべき対象を手先の感覚に覚えさせ、キャンバスに向かうときにはスケッチを一切見ることなく制作します。このようにスケッチは三瓶にとって、視覚像の身体化ともいえる作業で、この身体化された記憶の強度こそが彼女の作品の強度になっています。

光の表現の深化とともに、近年の作品では動きの表現も重要な要素となっています。動きの描写は当然、時間という概念の表出に結びつくでしょう。沈みゆく夕陽、池の水面に映り込む木々の揺らめきなど、その傾向はより顕著に看て取れます。三瓶の作品に特徴的な画面の余白を考慮すれば、時間という言葉よりも、「間」という言葉の響きの方がより相応しいかも知れません。たんなる時間の経過だけでなく、三瓶の制作には彼女の知覚を通じて身体化された物理的、心理的な距離感も表出されています。静物と風景、具象と抽象の間を自在に往還しつつ、そこに光や動きの一瞬の表情を捉えようとする三瓶玲奈の作品が、不思議な生命感のようなものを湛えているのもそうした理由からに違いありません。



ギャラリー展示風景 ギャラリー展示風景
ギャラリー展示風景 ギャラリー展示風景
展示風景

三瓶玲奈 MIKAME Reina
1992 愛知県生まれ
2015 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業
2017 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了
東京都在住
   
主な個展
2012 「トーキョーワンダーウォール都庁」, 東京都庁第一本庁舎3階南側空中歩廊
2013 「TWS-Emerging 203」, トーキョーワンダーサイト本郷, 東京
「恋に落ちる」, アートハウスあいち
2016 「投影」, Yutaka Kikutake Gallery, 東京
2017 「三瓶玲奈展」, 六本木ヒルズクラブ, 東京
   
主なグループ展
2012 「トーキョーワンダーウォール公募2012入選作品展」, 東京都現代美術館
2014 「齋藤永次郎・三瓶玲奈」, 深川番所, 東京
2015 「アートアワードトーキョー丸の内2015」, 丸ビル1階マルキューブ, 東京
2016 「大矢真梨子, Nerhol, 三瓶玲奈」, Yutaka Kikutake Gallery, 東京
2017 「磯谷博史, 三瓶玲奈, 向山喜章, 田幡浩一」, Yutaka Kikutake Gallery, 東京


■インフォメーション

会場:東京オペラシティ アートギャラリー 4Fコリドール
期間:2017.10.14[土]─ 12.24[日]
開館時間:11:00 ─ 19:00(金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで))


休館日:月曜日
入場料:企画展「単色のリズム:韓国の抽象」、収蔵品展060「懐顧 難波田龍起」の入場料に含まれます。

 

主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団

 

お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

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