◎私たちの潜在意識に隠されたもう1人のヒッチコック

2001.4.4[水]― 6.17[日]

Notorious_flyer  


展覧会の見どころ
アーティストと作品紹介
関連レクチャー・シリーズ
関連情報
・i モードをつかったギャラリー・ツアーガイドを実施!!!
・熊倉一雄氏の声による「閉館のアナウンス」
・「ハリー、見知らぬ友人」のチケットで割引入場
インフォメーション

ダグラス・ゴードン《フィーチャー・フィルム》プレミア上映


展覧会のみどころ
現代美術を通して蘇る、もう1人のヒッチコック

イギリスに生まれ、のちにハリウッドに進出してその名声を不動のものとしたサスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック(1899─1980)。自作の冒頭にとぼけた表情で登場する彼は、そのユニークな風貌とともに、誰もが知っている最もポピュラーな映画監督といってよいでしょう。「レベッカ」、「ダイヤルMを廻せ!」、「裏窓」、「めまい」、「北北西に進路を取れ」、「サイコ」そして「鳥」など、一度は見たことのある傑作ばかりです。
ヒッチコックと現代美術。一見、全く関係がないように思われるこの二つですが、実はヒッチコック自身、自作「白い恐怖」の美術をサルヴァドール・ダリに依頼するなど、初期の作品から前衛的な映像表現に積極的に関わってきました。またその一方、ヒッチコック映画にみられる、のぞき趣味、パラノイア、フェティシズムといった彼独特のテーマは、近年ビデオなどの映像の分野に著しく進出し始めている現代美術に大きな影響を与えています。

ヒッチコック生誕100周年を記念して1999年に、イギリスのオックスフォード近代美術館で開催され、その後世界中を巡回している本展は、ヒッチコック映画から影響を受けたビデオやフィルム、写真、インスタレーションなどの現代美術作品を集め、ヒッチコック映画の映像やシークエンスが現代美術というフィルターを通して新たな作品として蘇っていくプロセスをご覧いただくものです。
作品を提供しているアーティストは、ダグラス・ゴードン、ピエール・ユイグ、シンディー・シャーマン、スタン・ダグラス、アトム・エゴヤンなどをはじめ、現代美術や映画界の豪華メンバー14人。これだけのアーティストが顔を揃えるのも、展覧会のテーマがヒッチコックであればこそといえます。

この展覧会は、私たちの潜在意識の中に隠されたもう1人のヒッチコックの姿を、現代美術を通して展覧会場に浮かび上がらせる試みでもあるのです。


アーティストと作品紹介
◎ジョン・バルデッサリ John Baldessari
ジョン・バルデッサリ(1931─)は若い世代のアーティストに大きな影響力を持つアーティストの1人。今回展示される《に成る》と《見られたもの》は、それぞれ4枚のパネルを正方形に組み合わせて並べられる作品です。それぞれには、テキストの断片、日用品、ゴヤの絵画の断片、映画やビデオから採られたイメージなどのほか、ヒッチコック映画「北北西に進路をとれ」からのイメージが引用されています。彼の他のすべての作品と同様、鑑賞者は、「モンタージュ的連続」として見える異種のイメージの中に整合性を見出すようにし向けられます。


《テトラド・シリーズ:To Be A(に成る)》
デジタル・プリント、手書きレタリング、キャンバスにアクリル絵の具、キャンバス
1999
Courtesy of Marian Goodman Gallery, New York




◎ジュディス・バリー Judith Barry
ジュディス・バリー(1954─)はメディアの支配という観点から見た、今日の社会におけるセルフ・アイデンティティの問題に強い関心を持つアーティストです。ビデオ プロジェクションによる作品《カジュアル・ショッパー》は、カリフォルニアのショッピング・モールが舞台となっており、そのヒロインと、引用されるヒッチコック映画「マーニー」の登場人物とがオーバーラップします。ヒッチコックの作り出した人物が彼自身の内的葛藤の結果であるのに対し、バリーのそれは狂気に満ちた消費社会の産物なのです。


《カジュアル・ショッパー》
音声付きカラー・ヴィデオ・プロジェクション
28分バージョン
1980─81
Collection of the artist
Photo by Christopher Moore




◎シンディ・バーナード Cindy Bernard
シンディ・バーナード(1959─)は、ヒッチコックの映画「めまい」をベースにした作品《ロケーション・プロポーザル#2》を展示します。この作品で引用されている映画「めまい」の森のシーンは、登場人物が木の切り株の年輪について語る場面で、時間、記憶、測定といったこの物語の核心に言及する最も重量な部分です。バーナードはこの場面の特定のシーンをCGで再制作し、オリジナル映画の撮影自体を「測定」しようと試みています。


《ロケーション・プロポーザル no.2》
(シーン14)
スライド・インスタレーション、3台のスライド・プロジェクター、3つのスクリーン、ケーブル
1997─99
Courtesy of the artist and Lotta Hammer, London




◎ヴィクター・バーキン Victor Burgin
ヴィクター・バーキン(1941─)は、今日のイギリスで最も重要なアーティストの1人です。今回は、ヒッチコック映画にみられる女性の表現や「のぞき見趣味」といった要素を検証する写真による平面作品《ザ・ブリッジ》を展示します。「めまい」をベースに構想されたこの作品は、映画の中でヒッチコックが用いたオブジェやシンボル、妄想を引用しながら登場人物の抑圧された心理を分析し、ヒッチコック的なサスペンスの効果を生み出します。


《ブリッジ》
6点のモノクロ写真とテクストによるシリーズ
1984
Courtesy the artist and Galerie Liliane and Michael Durand - Dessert, Paris; Universal City Studios Inc.




◎スタン・ダグラス Stan Douglas
カナダで最も重要なアーティストの1人スタン・ダグラス(1960─)は、「マーニー」をベースにしたフィルム・インスタレーション《サブジェクト・トゥ・ア・フィルム:マーニー》を展示します。映画のヒロインがオフィスの金を盗み出す場面のセットを再現し、モノクロフィルムで撮影したこの作品では、セットの残像のような映像が、徹底的にニュートラル化された空間にうつろに映し出されます。


《サブジェクト・トゥ・ア・フィルム:マーニー》
16mm モノクロフィルム・ループ・インスタレーション、光学式サウンドトラック、6分
1989
Courtesy of the artist and David Zwirner, New York




◎アトム・エゴヤン Atom Egoyan
映画「スウィート・ヒアアフター」で97年カンヌ映画祭グランプリを獲得したカナダの映画監督、アトム・エゴヤン(1960─)。本展では、ヒッチコック的なテーマを扱った自作「フェリシアの旅」(1999)を編集したビデオインスタレーション作品《証拠》を出品します。このビデオは、映画の中で、連続殺人犯役のボブ・ホスキンスが、監視用カメラで彼の餌食となる若い女性たちを撮影しているもので、ホスキンスの回想シーンで使われています。


《証拠》
音声付きシングル・チャンネル・カラー・ヴィデオ 19分30秒
1999
Photo by Christophere Moore




◎ダグラス・ゴードン Douglas Gordon
現代美術界で最も重要な賞の一つと言われるターナー賞を1996年に受賞したダグラス・ゴードン(1966─)は、90年代の初頭よりユニークなコンセプチュアル・ベースの作品や鮮烈な映像を大型スクリーンに映し出すビデオ 作品を制作してきました。今回はターナー賞の対象となったビデオ作品《24時間サイコ》を展示。これはまさにタイトル通り、音を取り去ったヒッチコックの映画「サイコ」を巨大なスクリーンに24時間かけて上映するもの。一秒間に2コマの超スローモーションで大画面に映し出される映像は、スティル写真のようなクオリティを持ち始め、画面の中に潜むディティールが鮮烈に立ち現れてきます。


《24時間サイコ》
モノクロ・ヴィデオ・インスタレーション
シングル・リア・プロジェクション・スクリーン
1993
Courtesy the Lisson gallery, London





◎ピエール・ユイグ Pierre Huyghe
フランスの若手映像作家として最近その評価が著しく高まっているピエール・ユイグ(1962─)。本展には、ヒッチコックの映画「裏窓」を現代の俳優を使って1カットごとに忠実に再現した《リメイク》を出品。シナリオやフレーミングをそのまま踏襲し、セットや役者を現代のものに差し替えることで、映画にまつわる集合的な記憶の存在を浮き彫りにします。


《リメイク》
音声付き16mmカラーフィルムのヴィデオ・プロジェクション 100分
11組のカラー写真
1995
Courtesy of the arist and Marian Goodman Gallery, New York/Paris




◎クリスチャン・マークレー Christian Marclay
アートギャラリーの開館記念展「感覚の解放」での、CDを敷き詰めた作品も記憶に新しいクリスチャン・マークレー(1955─)。今回は、映画「めまい」を素材に、バーナード・ハーマン作曲の音楽や映画の中の効果音、人物の会話、そして沈黙などをサンプリングしたり、自ら音をつけたりしてランダムにコラージュしたサウンドによる作品です。いわば、この展覧会のサウンド・トラックとも言えるでしょう。


映画「めまい」1958 より
Courtesy of Universal Pictures




◎クリス・マルケル Chris Marker
クリス・マルケル(1921─)は「フランス映画の真のエッセイスト」とも呼ばれる映像作家です。今回は、自作「Sans Soleil」の中に出てくる、ヒッチコック映画「めまい」を扱った部分を短いシークエンスにまとめたビデオ作品を展示します。この作品は、「めまい」の舞台であるサンフランシスコに滞在しながら記憶を頼りに映画のロケ地を訪ねるうち、彼がその場所に慣れ親しんでいるのは実は映画がもたらしたことに他ならないという事実を解き明かしてくれるものです。


《「サン・ソレイユ」(1982)からの抜粋》
音声付き16mmカラーフィルムのヴィデオ作品 約3分
1982
Courtesy of Argos Films, Neuilly sur Seine




◎クリストフ・ジラルデ&マティアス・ミューラー Christoph Girardet & Matthias Muller
ドイツの重要な実験映像作家ジラルデ(1966─)とミューラー(1961─)。これまでも共同でフィルム作品を制作してきた二人が本展のために制作したビデオ作品《フェニックス・テープ》で登場です。これは、ヒッチコック映画にまつわる6つのテーマを設定し、映画から抽出された断片をつなぎ合わせてまとめた6本のビデオ作品で、随所に配置されたモニターによって会場全体をヒッチコック・トーンに染めます。


《フェニックス・テープ no.6
─屍体対話(3分40秒)
1999
Courtesy of the artists




◎デイビッド・リード David Reed
絵画を主に手がけるデイビッド・リード(1946─)は、アートにおけるテクノロジーの議論に積極的に関わってきた作家です。今回出品されている《スコッティのベッドルーム》は、映画「めまい」の主人公スコッティの寝室を再現した作品。実際の映画では、ベッドの上の絵はありきたりの抽象絵画ですが、会場に置かれたベッドの上部の絵はリード自身の絵です。さらに、傍らのモニタで映し出される映画の中にデジタル処理によって同じ絵画が「展示」されています。


《スコッティのベッドルーム》
クイーンサイズ・ベッド、寝具、照明ランプ、ロープ、絵画、テレビから成るインスタレーション
ヒッチコック映画「めまい」から抜粋された場面にデジタル処理で挿入された《絵画 no.270》
VHSヴィデオ・ループ、モニター
1994
Courtesy Max Protetch Gallery, New York




◎シンディ・シャーマン Cindy Sherman
シンディ・シャーマン(1954─)は、現在アメリカで最も良く知られているアーティストの1人です。映像や写真を使って、主に女性のアイデンティティの問題をあつかった作品を制作してきました。今回は、架空の登場人物に変装した自分を写真に写し込み、ヒッチコック映画とオーバーラップするテーマを扱った作品7点を展示します。

《無題 no.70》
カラー写真
1980
The Broad Art Foundation, Santa Monica,


関連レクチャー・シリーズ
展覧会開催にあたり、豪華な講師陣によるレクチャー・シリーズを開催!

4.7[土]14:00─16:00
「レクチャーbyダグラス・ゴードン」
講師:ダグラス・ゴードン(アーティスト)

4.14[土]14:00─16:00
「アルフレッド・ヒッチコック:その人生と映画」
講師:中条省平(映画評論家、学習院大学フランス文学科教授)

4.21[土]14:00─16:00
「ヒッチコックと現代美術」
講師:丹生谷貴志(神戸外国語大学 国際関係学科教授)

4.28[土]14:00─16:00
「ヒッチコック映画から影響を受けた映画」
講師:藤崎康(映画評論家、慶応義塾大学講師)


会場:東京オペラシティビル7F会議室
定員:120名
入場無料(予約制)

お問い合わせ・ご予約:東京オペラシティアートギャラリー  Tel.03-5353-0756
ag-press@toccf.com


関連情報
◎ i モードを使ったギャラリー・ツアー・ガイドを実施!!!

携帯電話を展覧会のナビゲーションツールとして利用する世界初の画期的なサービスです。

i モード対応携帯電話を使って展覧会のツアー・ガイドが利用できる世界初の画期的なサービスを実施します。会場内でNTTドコモの i モード公式サイト《Art TraX》(制作:美術出版社/キャラメル・ママ)内《art navi》にアクセスすると、実際の作品を前にしながらの作品解説はもちろん、作家のプロフィールを引き出したり、作品のツボや見所を押さえたクイズに答えたりと、楽しみながら自然と作品の知識が身に付く全く新しい形の展覧会ツアーが体験できます。

【アクセス方法】
《i-menu》→《メニューリスト》→《タウン情報/行政》→《Art TraX》→《art navi》

→美術出版社グループ ART LOCO
(メニューから「iモードサイト」へお進みください。)




◎熊倉一雄氏の声による「閉館のアナウンス」が毎日会場内に流れます。
あのおなじみのヒッチコックの声が東京オペラシティに帰ってくる!?

70年代に日本でTV放映された「ヒッチコック劇場」の番組の案内役として登場するヒッチコック。ブラックなユーモアを交え淡々と案内役を務めるヒッチコックのとぼけた表情と、あのほのぼのとした声をみなさま覚えていらしゃいますか?「ヒッチコック劇場」を見たことがない世代の人でも、数年前に自動車メーカーのコマーシャルで流れたヒッチコックの声として「ああ、そうそう」とうなずく人もきっと多いハズ。東京オペラシティアートギャラリーでは、本展の会期中毎日、なんと当館の閉館をお知らせするアナウンスがユーモアにあふれた熊倉一雄氏によるあの懐かしい声にのって会場内に流れます。みなさま、展覧会終了まで残って聞いていかなければ、これは絶対に損ですぞ。



◎「ハリー、見知らぬ友人」
サスペンスとコメディが華麗に融合!ヒッチコッキアンな新鋭ドミニク・モル監督作品。
日比谷シャンテで陽春ロードショー。
この映画の前売り券(使用後の半券も可)をご提示いただくと、本展が割引料金でご覧いただけます。

映画についてのお問い合わせ:Tel.03-3591-1511


インフォメーション
期間:2001.4.4[水]─ 6.17[日]
開館時間:12:00 ─ 20:00(金・土は21:00まで、最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
入場料:一般\1000(\800)、大高生\800(\600)、中小生\600(\500)
( )内は15名以上の団体料金、その他割引制度あり
収蔵品展007「形なき東洋─難波田龍起と韓国の抽象」project N 06「高橋信行」の入場料を含みます。
※4.6[金]ダグラス・ゴードン「フィーチャー・フィルム」のチケットでも入場いただけます。(使用後の半券も可)

主催:(財)東京オペラシティ文化財団/朝日新聞社
特別協賛:日本生命
協賛:小田急電鉄/第一生命/松下電器/アニエスベーサンライズ
協力:山大鉄商/相互物産/日本航空/美術出版社/キャラメル・ママ
助成:ブリティッシュ・カウンシル/大和日英基金
企画協力:アプトインターナショナル
国際巡回展組織:オックスフォード近代美術館
国内巡回:広島現代美術館 2001.7.29[日] ─ 9.2[日]

お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー  Tel.03-5353-0756
ag-press@toccf.com