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寺田コレクションは、寺田小太郎氏という一収集家による個人コレクションですが、3000点を超すそれは、東京オペラシティビルの建設にあたり、先祖代々の家名を初台の地に残すことを一つの目的として買い集められたものです。つまり、コレクションの前提に美術館での展示が念頭におかれていたことになります。もっとも、実際のコレクションには大作も少なくないものの、一般的には美術館が収集の対象としないような、比較的小ぶりな作品がかなり多く含まれています。また、その作風も、強烈な個性や崇高さを放つものよりも、全体としては、落ち着いた、親しみやすい穏やかな印象のものが大半を占めています。 美術の歴史に登場した穏健、温厚な作風をあらわす言葉として、「ナイーヴ・アート(naïve art)」や「アンティミスト(intimiste)」がすぐに思い浮かびます。前者は、素朴派とも呼ばれ、正規の絵画教育を受けていない、素人(アマチュア)画家を指す言葉です。技術的には稚拙ながらも対象を忠実に再現することを目指し、前衛性や革新性への意欲はほとんど希薄ですが、素朴派の代表的な画家アンリ・ルソーのように、結果的に幻想性を示すこともあります。後者は、ピエール・ボナール、エドゥアール・ヴュイヤールら、好んで室内の情景を描き、そこにぬくもりのある親密な情感を表現した画家たちを指し示す言葉です。彼らは、家族や親しい友人、ごく日常的な生活の情景の一こまを、温かみあふれる色彩と光によって描き出し、親密感(アンティミテ)に満ちた作品を制作しました。印象や雰囲気には確かに近似するものがありますが、今回紹介する作家たちはいずれも正規の教育を受けた美術家で、また、作品もとくに室内の情景のみを表現しているわけではありません。作品から醸し出される、素朴さ、親密さ、繊細さが混然一体となったような不思議な気配。この「やさしさの気配」は、一体どこからもたらされるのでしょうか。

河原朝生《室内 I:夏の終わり》
油彩,キャンバス
81.0 x 100.0cm, 1998

山根 隆《オアシスを行く旅人》
油彩,キャンバス
45.5 x 53.0cm, 1982
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展示風景 |
■インフォメーション
会場:ギャラリー3&4(東京オペラシティ アートギャラリー 4F)
期間:2012.10.3[水] ─ 12.24[月・祝]
開館時間:11:00 ─ 19:00(金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
収蔵品展入場料:200円(企画展「篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE by KISHIN」のチケットでもご覧いただけます)
主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団
協賛:ジャパンリアルエステイト投資法人、NTT都市開発株式会社
協力:相互物産株式会社
お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756