篠山紀信展 写真力

展覧会について

50年にわたって様々な手法・テーマで撮影された作品を厳選し、「GOD」(鬼籍に入られた人々)、「STAR」(すべての人々に知られる有名人)、「SPECTACLE」(私たちを異次元に連れ出す夢の世界)、「BODY」(裸の肉体、美とエロスと闘い)、「ACCIDENTS」(2011年3月11日、東日本大震災で被災された人々の肖像)の5つのセクションで紹介します。

ACCIDENTS:2011年3月11日、東日本大震災で被災された人々の肖像

東日本大震災という未曾有の大災害は、私たち日本人に根本的な意識の変革を迫ったといえるでしょう。いわゆる「ドキュメンタリー」とは距離をとってきた篠山ですが、写真家として今回の出来事を「無かったこと」にすることは出来なかったと語ります。震災発生50日後に被災地に入った篠山は、廃墟の風景を撮り、被災者たちのポートレートを撮影しました。現地において篠山は、人知を越える規模で自然があらたな自然を作り出したその「力」に畏怖と畏敬の念をおぼえ、震災の傷跡の光景にある種の神聖さすら感じたと率直に語っています。篠山は、事態をことさら悲劇として強調するのではなく、一切の演出も指示もなしに、ありのままを受け止める姿勢で、被災者たちの立ち姿をカメラに収めました。廃墟となった町を背景にカメラの前にたたずむ被災者たちは何を語り、何を伝えるのか。それは篠山自身、被写体自身の意図を越えたところにあるでしょう。それが写真の宿命であり、可能性である。篠山はこのことをつねに理解し、真摯に確かめながら、今も新たな活動を繰り広げているのです。


阿部末子(62) 阿部俊一(64) 亘理町 2011年


大友瑠斗(9) 大友乃愛(7) 名取市 2011年

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