収蔵品展035
紙の上の競宴 2010.10.23[土]―12.26[日] 柿崎兆《錆色の河》木版,紙 14.5 x 21.0 cm, 1994 photo: SAITO Arata
柿崎兆《錆色の河》
木版,紙
14.5 x 21.0 cm, 1994
photo: SAITO Arata

紙の上のミクロコスモス

版の形式

版画は、凸版、凹版、平版、及び孔版に分けられます。凸版とは、線や色面として表したい部分を残し、白地となる部分を彫って取り去る技法で、主に木版画がこれに該当します。凹版は、削った部分にインクを詰めて刷ります。主に銅版画がこれに分類されます。平版とは、彫ったり刻んだりすることなく、化学処理を施して、インクがのる部分と弾く部分を作り、刷り上げるものです。また、孔版は、シルクスクリーンやステンシルなど、版上の孔からインクを押し出して刷る技法です。それぞれの形式は版の材質や制作過程、使用する道具などによって更に様々な種類に分かれます。

木版画

木版画は主に板目木版と木口木版に大別されます。いわゆる木版画とは、一本の木を縦に切り出した版木を用いる板目木版のことを指します。他方、木口木版は、樹木を横に輪切りにした版木を使用します。板面が詰まっているため、稠密な線を彫り出せるのです。たとえば、柄澤齋による木口木版の小品には、その細やかな造形表現ゆえに小宇宙ともいうべき豊饒な世界が広がっています。 木版画の特徴は、なによりも版である木の温もりが感じられる点にあるでしょう。

銅版画

銅版画は直刻法と腐蝕法に大別されます。どちらの場合もプレス機で版に圧をかけ刷り上げるため、版のへり跡が紙の上に残ります。これをプレートマークといい、他の版画技法と見分けるひとつの特徴です。
直刻法は、銅版を直接彫り刻む方法で、ビュランという先端を細かく研いだ刃物で彫る技法をエングレーヴィング、鋼鉄の針やナイフで刻みつけるものをドライポイントと言います。エングレーヴィングは、彫る過程で生じるまくれを除去するために、鋭く繊細な線が生まれます。一方、ドライポイントでは刻線の際にできるまくれを除去しないため、線は滲み柔らかな表現となります。
エッチングやアクアチントは腐蝕法に分類されます。エッチングは版の上に防蝕膜を引き、その上からニードルで引っ掻いて描きます。その後、版を腐蝕液に浸け、引っ掻いた描画部分を腐蝕させることで刻印を作ります。線の強弱が筆圧や腐蝕液に浸す時間によって変更可能であるため、自由度の高い技法です。
アクアチントは、防腐膜として松脂の粉末を版の上に焼きつけて定着させます。これに腐蝕液を塗ると、松脂が粒子状のため細かな点が無数に残ります。この腐蝕の度合いによって、陰影や濃淡を調節できます。アクアチントは面的な表現であるため、単独で用いられることは少なく、その他の技法と併用されることが多い技法です。なお、腐蝕銅版画の一種としてフォトエッチング、フォトグラビュールが挙げられます。

石版画

石版画(リトグラフ)は、水と油の反発作用を利用する技法です。まず石やアルミ版などに脂肪性のクレヨンやインクで描きます。その上に弱酸性溶液を塗布すると、化学反応によって描かれた部分は親油性を持ち、描かれていない部分は、親水性を保持します。そこに油性のインクをのせると親油性を持つ部分にのみインクは付着し、その他の部分は、保持した水分のためにインクが弾かれて付着しません。こうしてクレヨンやインクで描いた部分にだけインクがのるのです。石版画は、木版画や銅版画と違って、摩耗しにくいため大量生産に向いていること、また鉛筆デッサンに近い感覚で描けることが特色と言えるでしょう。

孔版

榎倉康二《干渉(飛散)No.3》シルクスクリーン,インク,廃油,紙 96.5 x 153.5 cm, 1992 photo: HAYAKAWA Koichi
榎倉康二《干渉(飛散)No.3》
シルクスクリーン,インク,廃油,紙
96.5 x 153.5 cm, 1992
photo: HAYAKAWA Koichi
孔版は他の版画と違い、版である絹などの布(スクリーン)をインクが通過して紙などの支持体に刷り上げるため、版と刷り上がったものの図像が反転しないのが特徴です。スクリーンの目が細かければ細かいほど、微妙な色調の変化をつけられます。そのため非常に滑らかな諧調の色面を生み出すことができます。

かつては実用技術であった版画技術は、紙の上に実にバラエティに富んだ芸術的創意と個性を見せてくれます。それは、寺田コレクションの厚みをも感じさせてくれる小さなコスモスの集積と言ってもよいでしょう。

ギャラリー展示風景 ギャラリー展示風景
ギャラリー展示風景 ギャラリー展示風景
展示風景

■インフォメーション

会場:ギャラリー3&4(東京オペラシティ アートギャラリー 4F)
期間:2011.1.15[土] ─ 3.27[日]
開館時間:11:00 ─ 19:00(金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)

休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、2月13日[日](全館休館日)
入場料:200円 (企画展「曽根裕展 Perfect Moment」のチケットでもご覧いただけます)

主催:公益財団法人東京オペラシティ文化財団
協賛:ジャパンリアルエステイト投資法人

お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756