◎宮島達男展

megadeath: shout!

2000.3.3[金]2000.5.14[日]

宮島達男展


宮島達男
宮島達男(1957年東京生まれ)は、国際美術展ヴェネチア・ビエンナーレの若手作家部門アペルト'88で注目を浴びて以来、わが国を代表する現代美術家のひとりとして、国内外で精力的な活動を続けています。1999年のヴェネチア・ビエンナーレには日本代表として参加し、その評価を確実なものにしました。
宮島の作品は、「それは変わりつづける」、「それはあらゆるものと関係を結ぶ」、「それは永遠に続く」という3つのコンセプトに基づいたデジタルカウンター(L.E.D.)に代表され、それぞれの数字が異なる速度で明滅し、0(ゼロ)を示さないことによって、時間や人間のライフサイクルの連続性、永遠性、関係性を示唆します。
1995年以降は、80年代前半に行っていたパフォーマンスが再開され、近年はL.E.D.作品とパフォーマンスが双方に観客の参加が促されるなど、過去10数年一貫しているそのコンセプトは、作家自身のリアリティを伴った、より確かなものへと昇華しつつあります。



都内の美術館では初めての個展
美術館での個展として、東京で初めてとなる本展では、先のヴェネチア・ビエンナーレに出品された新作《MEGA DETH(メガデス)》が凱旋展示されるほか、パフォーマンス・ヴィデオ作品の新作《Counter Voice in Milk(カウンター・ヴォイス・イン・ミルク)》、コンピューター・グラフィックスを使った《Floating Time(時の浮遊)》など、宮島達男の最近作をご紹介します。



《MEGA DEATH》
L.E.D.、IC、電線、人感知センサー
500×3400×1.8cm(installation)
1999/Photo by UENO Norihiro


◎ヴェネチア・ビエンナーレ出品:L.E.D.による最大級の作品《MEGA DEATH》
1999年の第48回ヴェネチア・ビエンナーレに出品されたL.E.D.の大作《MEGADEATH》。2,400個のガジェット(発光ダイオードによるデジタルカウンターのユニット)が、幅34メートル、高さ6メートルの壁面を埋め尽くします。20世紀の総括というテーマで制作された《MEGA DEATH》は、「人為的な大量死」を意味します。宮島達男が一貫してテーマとしている「自然と人為」の対比において20世紀を振り返ってみるとき、生まれて死ぬという生命の自然なサイクル:Natural Life Cycle を突如として遮断してしまう大量虐殺や戦争など、今世紀は、人間が人間によって大量に死に至らされた世紀であるという意味でのMEGA DEATHなのです。
青い光を放つ2,400個のL.E.D.が、それぞれの生をまっとうせずに消えてしまう瞬間。視覚的な美しさとは対照的にその奥底からは、まだ生きることのできた生命の沈痛な叫びが聞こえてくるようでもあります。

《MEGA DEATH》は、その青い光の美しさと瞬時にして起こる暗闇の恐怖を、全身で体感するのに充分なだけの広大なスペースに設置され、見る人に深い感銘を呼ぶことでしょう。





《Counter Voice in Milk》
《Counter Voice in Milk》
パフォーマンス・ヴィデオ、プロジェクター、モニター
1999/Photo by UENO Norihiro

◎パフォーマンス・ヴィデオ作品の最新作《Counter Voice in Milk》
宮島達男は、L.E.D.作品と並行してパフォーマンスも展開していますが、宮島のアーティストとしての活動の根源が、実は1980年代前半の路上でのパフォーマンスにあることは意外に知られていません。当時のパフォーマンスは、作家の内面にある言葉で説明できないような怒りや葛藤のようなものを、新宿や渋谷の雑踏のなかで「アーッ!」という叫び声とともに外在化し、周囲の反応を含めたその瞬間を記録するというものでした。
社会における他者との関係性を探るそのパフォーマンスは、1984年以降、機械部品やL.E.D.を使った表現に取って代わりましたが、「自分自身のリアリティをもう一度感じたくなった」という作家の思いから、1995年に再開されました。パフォーマンスにも、L.E.D.作品と同様のコンセプトが通底しています。
《Counter Voice in Milk》は、1995年に制作された《Counter Voice in the Water》の流れをくむ新作で、パフォーマーは洗面器に入った牛乳を目の前にして、9から1までをそれぞれの時間のなかで叫びながらカウントダウンし、0(ゼロ)の時点で洗面器のなかに顔を突っ込むことで、"死"あるいは"空(くう)"を体験します。哺乳類が生を受けて育つのに欠かせないミルクから顔をあげ、その顔面をミルクが流れ落ち、そしてまた死に至るという単純な行為の繰り返しは、まさに生命の流転の象徴であり、その行為がそれぞれのパフォーマーのなかにある独自のサイクルで繰り返されることや、カウントダウンするパフォーマーの叫び声や険しい表情もまた、個々人にとってのライフサイクルや生きることの難しさ、死への恐怖などを思わせます。
さらに、《Counter Voice in the Water》では作家自身がパフォーマンスを行っていたのに対し、《Counter Voice in Milk》では、不特定な他者がカウントダウンをしていることも、パフォーマンス再開の契機であり、近年の宮島作品において重要度を増している、リアリティを伴った他者との関係性を強調するものであると言えるでしょう。




Floating Time
《Floating Time V1-100》(時の浮遊)
コンピューター・グラフィックス・ソフト、コンピューター、プロジェクター、紗幕
450×320×450cm(installation)
1999/Photo by UENO Norihiro


◎数字の明滅、最新ヴァージョン《Floating Time》
1999年にフジテレrギャラリーの個展「時の浮遊」で発表された新作《Floating Time》は、コンピューター・グラフィックス(CG)を使った新しい表現で、天井からプロジェクターによって照射される大きさも色も多様な数字が、明滅しながら床面を自由に動き回るものです。L.E.D.作品では、床や壁面などに設置されたガジェット自体が動かずに明滅を繰り返すのに対し、1993年に発表された《Running Time》では、電動の小さな自動車のうえにガジェットを乗せることによって、床面を数字が動き回り、空間のなかでの数字の運動に自由度の増した作品が生まれました。
《Floating Time》では、CGの導入によってガジェットの運動に一段と自由度と可能性が与えられ、床面だけでなく空間全体を時間が浮遊するイメージを表現できるようになっています。
本展では、スクリーンに囲まれた《Floating Time》のための空間に入ると、自分の手のひらなど身体のうえを数字が動きまわり、鑑賞者を浮遊する時間のなかに包み込みます。また、スクリーンの外側からは、人がその空間に入ることで浮遊する数字(時)を客観的に眺めることもできます。




Floating Time
《Count Down Drawing against the Wall》
プラスターボード、振動ドリル
280×1180cm
2000/Photo by UENO Norihiro

◎パフォーマンス性の高い新作ドローイング《Count Down Drawing against the Wall》 今回の新作となる壁面ドローイングは、約12メートルの壁面に直接制作されます。ドローイング(素描、デッサン)は、通常、作品の発想段階のスケッチとして、作家の思考のプロセスを知るうえで貴重な資料でもあり、また興味深いものですが、本展で発表されるドローイングは、むしろパフォーマンスとも呼べる独立した作品性の高いものになります。その衝撃を新鮮に感じとっていただくため、具体的な内容は是非とも会場でご覧いただきたいと思います。


展覧会タイトル[MEGA DEATH: shout! shout! count!]に込められたもの
これまでご紹介してきたとおり、今回の[MEGA DEATH: shout! shout! count!]では、異なる表現方法による宮島達男の最近作をご紹介します。多様な表現をご覧いただくことで、そのいずれにも通じている作家のコンセプト、「それは変化し続ける」、「それはあらゆるものと関係を結ぶ」、「それは永遠に続く」が、より説得性を増すことでしょう。特に宮島の代表的な作品でもあるL.E.D.によるインスタレーションでは、背景にあるとされる東洋的・仏教的な思想とともに、その表面的な美しさや静寂なイメージのみが印象に残りがちではありますが、その奥底にあるのは、東洋も西洋もないすべての人間の根源にある「何か」、生きることと死ぬことの繰り返しであるライフサイクルをより意味のあるものにする「何か」であり、それがあらゆる表現を通して模索されつづけているのです。
したがって、今回の展覧会タイトルや出品作は、今まで感じていたものとは異なる宮島達男のイメージに繋がるようではありますが、実際は、作家あるいは作品が、「変化し続け」ながら、作家以外のあらゆる他者と「関係を結びつつ」、根底にある流れは「永遠につづく」という、その普遍的なコンセプトへと回帰していくことに気づくのではないでしょうか。このことは、作家のこの重要なコンセプトが、作家の言うとおり、自身の体験や時間をとおした実感を伴い、より確実なものへと昇華しつつあることの現われであると言えないでしょうか。

西暦2000年を迎え、また21世紀を目前に控え、千年、百年という長い期間で時間の概念が見つめなおされる機会が多くなる今年、宮島達男の作品をとおして、見る人すべてのなかにある内的時間が再認識され、それぞれの人にとって、時間、ライフサイクル、生や死などを、ふと立ち止まって考える機会になることを願います。


関連企画
パフォーマンス・ワークショップ「カウンター・ヴォイス・イン・ミルク」

宮島達男立会いのもと、本展に出品されるパフォーマンス・ヴィデオ作品《Counter Voice in Milk》を、一般の方々にも体験していただくワークショップ。あらゆる人のなかにアート性を見い出す試みです。

日時:2000年3月13日[月]13:00 ─
場所:東京オペラシティアートギャラリー
参加:無料(事前申込み制)、定員30名(予定)
お申し込み・問合せ先:Tel.03-5353-0756


宮島達男 関連展覧会のご案内
《MEGA DEATH: shout! shout! count!》開催中、下記のとおり宮島達男の関連展覧会が開催されています。当館での展覧会と併せて是非この機会にご覧下さいますよう、ご案内申し上げます。

◎水戸芸術館現代美術ギャラリー
『時の蘇生』柿の木プロジェクト・イン・水戸 プロローグ2000
会期:2000.2.5[土]─ 3.22[水]
お問い合わせ:水戸芸術館現代美術センター Tel.029-227-8120
http://www.arttowermito.or.jp/art/gallery-j.html


◎ワタリウム美術館
「GAME OVER」展
宮島達男のドローイング展示と1982年の自作自演作品《NR.AR(Human Stone)》など初期パフォーマンスを一挙上映
会期:2.22[日]─ 3.12[日]


パフォーマンス《Counter Voice in the Air》:オーディション選考された4人が、空中にぶら下がりながらカウンティングをしていくパフォーマンス
会期:3.11[土]20:00 ─

お問い合わせ:ワタリウム美術館 Tel.03-3402-3001
http://www.watarium.co.jp/museumcontents.html


◎SCAI THE BATHHOUSE
宮島達男のL.E.D.による新作展《Monism/Dualism》
会期:3.2[木]─ 4.15[土]
お問い合わせ:白石コンテンポラリーアート Tel.03-3821-1144


インフォメーション
期間:2000.3.3[金]― 5.14[日]
開館時間:12:00 ― 20:00(金・土は21:00まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、年末年始、全館休館日

入場料:一般 ¥900(¥700)、大学・高校生 ¥700(¥550)、中学・小学生 ¥500(¥400)
( )内は15名以上の団体料金、その他割引制度あり
収蔵品展002「寺田コレクション秀作展 part2」、project N
02「荻野僚介展」の入場料を含みます。

主催:(財)東京オペラシティ文化財団/朝日新聞社
特別協賛:日本生命
協賛:NTT都市開発/小田急百貨店/第一生命

お問い合わせ:東京オペラシティアートギャラリー Tel. 03-5353-0756